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変化
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ライラの仕事は……早くて完璧だった。
姉の部屋で意識を失い、次に目を覚した時には、私は自室のベッドの中だった。そして──
「エヴィ様、今日はどんな髪型にしますか?」
私の髪を櫛で梳かしながらニコニコ笑っているのは、私の専属侍女になったライラだ。
「精霊が、侍女なんてやってて良いの?」
「ん?精霊本人がやりたくてやってるから、良いんじゃない?」
ライラは“エヴィ専属の侍女になって5年”と言う設定になっていた。しかも、本当に侍女の仕事を完璧にこなすから驚きである。
「今日の予定は特にありませんけど、どうしますか?ジェマ様の所に行きますか?」
「行きたいけど…今日はお母様が居るから……」
エメリーからの話だと、姉は熱も下がり、朝食も食べれたそうだ。
「ライラ、昨日見た、あの影はなんだったの?」
「アレは、呪いの類ではなく、悪意の塊にあてられた感じですね」
「……悪意…………」
ー姉に悪意を向ける人なんて…ー
自然と母の顔が浮かぶ。
姉は、前妻フリージア様の子で、婚約者が筆頭公爵家のブレイン=アンカーソン様。
“気に喰わなかった”のかもしれない。そうじゃなければ良いけど……。と思いながらも、折角闇の力を得たのだから、この力を使いながら様子をみようと、心に決めたのだった。
それからは特に問題が起こる事はなかった。
相変わらず、父と母の関心はリンディとサイラスに向けられ、私は姉とのお茶の時間を楽しんだ。
10歳を過ぎると、リンディも光の魔力についての訓練を本格的に始める為、王城の魔導士の元へと週4日通うようになり、母も付き添いの為に不在になる事が増えた。
15歳になると、貴族の子息令嬢達は、王都にある学校に通う事になっている為、リンディの光の魔力の扱いを、それ迄に安定させておきたい狙いもあるらしい。学校内で、光の魔力が暴走すれば大変だからだ。
「まぁ、闇の魔力持ちのエヴィ様が居るから大丈夫なんですけどね?」
と、ライラは笑っていたけど。私が闇の魔力持ちだと言う事は、まだ、誰にも知られていない。本当に、リンディも全く気付かないのだ。
「リンディか……」
そのリンディも、年を重ねる毎に纏う雰囲気が変わって来ている気がする。前は、自然?天然な明るさがあった。それが今では──
「やだ、エヴィったら、相変わらず暗いわね。もっと若い…明るいドレスでも買ってもらったら?あぁ、でも、その髪色には似合ってるわね」
私が着ているワンピースの色は、くすんだ感じの黄色だった。
ーこのワンピースを買って来たのは、リンディとお母様だけどねー
「魔力が無いって良いわね。私、訓練が大変だから嫌になっちゃうわ」
笑顔で私を貶めるリンディ。
「まぁ、ブレイン様、いらしてたんですね!それなのに、お姉様はお迎えもしなくて…ごめんなさい」
「あぁ、それは良いんですよ。今日は、急遽時間ができて来たので……」
“姉の失礼を許して下さいね?”みたいな顔をしながら、姉の婚約者に擦り寄るリンディ。
それを、笑顔で対応するブレイン=アンカーソン様。
私的には、この婚約者様の事が、イマイチよく分からない。いつも同じ様な笑顔だからだ。
ただ、姉は、この婚約者様に……少なからず好意を寄せているのは分かる。この婚約者様と会える日の姉は、朝から─前日の夜からソワソワしているからだ。その時の姉は、とても可愛らしい。兎に角、姉が好意を持っていて、婚約者様が姉を大切にしてくれると言うなら、私は見守っていくだけだ。
「ブレイン様、お迎えがてきず、すみません」
軽く息をきらせてやって来た姉。
ー別邸から急いで走って来たんだろうなー
そんな姉は、嬉しさを隠すように控え目な笑顔で婚約者様に挨拶をする。
ー照れ隠しだよね…お姉様らしいけどー
そんな3人の様子を遠目で見た後、私はそのまま2階の自室へと戻った。
***
チラリと、視線だけで去って行く彼女の後ろ姿を確認した。
ー今日も、話をするどころか、挨拶もできなかったなー
私─ブレイン=アンカーソン─の婚約者はジェマ=ブルーム。この婚約は、お互いの祖父の意向によるものだった。貴族同士ではよくある事だし、ジェマ本人はおとなしくて控え目な清楚な感じで、好ましいと思っている。
双子の妹─リンディ。彼女は光の魔力持ち。彼女はいい意味では明るくて天真爛漫。悪く言うと……誰にでも馴れ馴れしい。ジェマに会いに来ているのに、何故かリンディ嬢が必ず出て来る。おまけに、私の事は名前呼びだ。
そんな事もあって、稀な光の魔力持ちでありながら、王太子の婚約者に─と言う話は出なかった。今でも、第二王子か第三王子か─それとも……と、リンディ嬢の婚約者の相手は決まっていない。
そして、もう一人の双子の妹─エヴィ。彼女とは、ここに初めて挨拶に来た時に顔を合わせて以後は、ここを訪れても挨拶すらしていない。
彼女は、幼い頃の高熱のせいで、魔力を失ったと聞いた。
『侍女長に頼まれて診察しましたが、その時にはもう……。もう少し早くお願いしてくれていたら…と思いますね』
エヴィ嬢を診察した王城付きの医師が、少し怒りながら話していた。
兎に角、私の中で、エヴィ=ブルーム嬢は、イマイチよく分からない人物だ。
姉の部屋で意識を失い、次に目を覚した時には、私は自室のベッドの中だった。そして──
「エヴィ様、今日はどんな髪型にしますか?」
私の髪を櫛で梳かしながらニコニコ笑っているのは、私の専属侍女になったライラだ。
「精霊が、侍女なんてやってて良いの?」
「ん?精霊本人がやりたくてやってるから、良いんじゃない?」
ライラは“エヴィ専属の侍女になって5年”と言う設定になっていた。しかも、本当に侍女の仕事を完璧にこなすから驚きである。
「今日の予定は特にありませんけど、どうしますか?ジェマ様の所に行きますか?」
「行きたいけど…今日はお母様が居るから……」
エメリーからの話だと、姉は熱も下がり、朝食も食べれたそうだ。
「ライラ、昨日見た、あの影はなんだったの?」
「アレは、呪いの類ではなく、悪意の塊にあてられた感じですね」
「……悪意…………」
ー姉に悪意を向ける人なんて…ー
自然と母の顔が浮かぶ。
姉は、前妻フリージア様の子で、婚約者が筆頭公爵家のブレイン=アンカーソン様。
“気に喰わなかった”のかもしれない。そうじゃなければ良いけど……。と思いながらも、折角闇の力を得たのだから、この力を使いながら様子をみようと、心に決めたのだった。
それからは特に問題が起こる事はなかった。
相変わらず、父と母の関心はリンディとサイラスに向けられ、私は姉とのお茶の時間を楽しんだ。
10歳を過ぎると、リンディも光の魔力についての訓練を本格的に始める為、王城の魔導士の元へと週4日通うようになり、母も付き添いの為に不在になる事が増えた。
15歳になると、貴族の子息令嬢達は、王都にある学校に通う事になっている為、リンディの光の魔力の扱いを、それ迄に安定させておきたい狙いもあるらしい。学校内で、光の魔力が暴走すれば大変だからだ。
「まぁ、闇の魔力持ちのエヴィ様が居るから大丈夫なんですけどね?」
と、ライラは笑っていたけど。私が闇の魔力持ちだと言う事は、まだ、誰にも知られていない。本当に、リンディも全く気付かないのだ。
「リンディか……」
そのリンディも、年を重ねる毎に纏う雰囲気が変わって来ている気がする。前は、自然?天然な明るさがあった。それが今では──
「やだ、エヴィったら、相変わらず暗いわね。もっと若い…明るいドレスでも買ってもらったら?あぁ、でも、その髪色には似合ってるわね」
私が着ているワンピースの色は、くすんだ感じの黄色だった。
ーこのワンピースを買って来たのは、リンディとお母様だけどねー
「魔力が無いって良いわね。私、訓練が大変だから嫌になっちゃうわ」
笑顔で私を貶めるリンディ。
「まぁ、ブレイン様、いらしてたんですね!それなのに、お姉様はお迎えもしなくて…ごめんなさい」
「あぁ、それは良いんですよ。今日は、急遽時間ができて来たので……」
“姉の失礼を許して下さいね?”みたいな顔をしながら、姉の婚約者に擦り寄るリンディ。
それを、笑顔で対応するブレイン=アンカーソン様。
私的には、この婚約者様の事が、イマイチよく分からない。いつも同じ様な笑顔だからだ。
ただ、姉は、この婚約者様に……少なからず好意を寄せているのは分かる。この婚約者様と会える日の姉は、朝から─前日の夜からソワソワしているからだ。その時の姉は、とても可愛らしい。兎に角、姉が好意を持っていて、婚約者様が姉を大切にしてくれると言うなら、私は見守っていくだけだ。
「ブレイン様、お迎えがてきず、すみません」
軽く息をきらせてやって来た姉。
ー別邸から急いで走って来たんだろうなー
そんな姉は、嬉しさを隠すように控え目な笑顔で婚約者様に挨拶をする。
ー照れ隠しだよね…お姉様らしいけどー
そんな3人の様子を遠目で見た後、私はそのまま2階の自室へと戻った。
***
チラリと、視線だけで去って行く彼女の後ろ姿を確認した。
ー今日も、話をするどころか、挨拶もできなかったなー
私─ブレイン=アンカーソン─の婚約者はジェマ=ブルーム。この婚約は、お互いの祖父の意向によるものだった。貴族同士ではよくある事だし、ジェマ本人はおとなしくて控え目な清楚な感じで、好ましいと思っている。
双子の妹─リンディ。彼女は光の魔力持ち。彼女はいい意味では明るくて天真爛漫。悪く言うと……誰にでも馴れ馴れしい。ジェマに会いに来ているのに、何故かリンディ嬢が必ず出て来る。おまけに、私の事は名前呼びだ。
そんな事もあって、稀な光の魔力持ちでありながら、王太子の婚約者に─と言う話は出なかった。今でも、第二王子か第三王子か─それとも……と、リンディ嬢の婚約者の相手は決まっていない。
そして、もう一人の双子の妹─エヴィ。彼女とは、ここに初めて挨拶に来た時に顔を合わせて以後は、ここを訪れても挨拶すらしていない。
彼女は、幼い頃の高熱のせいで、魔力を失ったと聞いた。
『侍女長に頼まれて診察しましたが、その時にはもう……。もう少し早くお願いしてくれていたら…と思いますね』
エヴィ嬢を診察した王城付きの医師が、少し怒りながら話していた。
兎に角、私の中で、エヴィ=ブルーム嬢は、イマイチよく分からない人物だ。
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