25 / 75
リンディ=ブルーム
しおりを挟む私の名前は─リンディ=ブルーム
稀な光の魔力持ちだ。
そのせいで、私は幼い頃の殆どをベッドの上で過ごしていた。光の魔力はとても強いもので、私の小さな身体は直ぐに悲鳴を上げるようにギリギリと痛みを伴っていた。高熱が出る事も当たり前だった。そんな私の側には、いつも優しいお母様とお父様が居てくれた。
体調の良い日も、ベッドからは起き上がる事はできても、部屋から出る事はできず、部屋で絵本を読んでいた。
そんな私には、双子の姉─エヴィと、母親違いの姉が居る。
義母姉─ジェマ。ジェマの事は、あまり……全く知らない。何故なら、同じ邸に住んで居ないから。会ったとしても、それがジェマだとは分からなかっただろう。
そして、双子の姉のエヴィ。双子だから、見た目は殆ど変わらなかった。ただ、珍しく熱を出して寝込んでいる─と聞いた頃に、その熱のせいで魔力を失ったらしく、私と同じ髪色のピンクブロンドが琥珀色に変わってしまったそうだ。
ーたった一度の熱で?ー
何て弱いのか。私なんて、毎日のように熱を出して寝込んでいたけど、容姿が変わる事も、魔力を失う事も無かった。容姿が変わったのも、エヴィが弱かったからなだけだ。
『魔力無しの令嬢なんて恥ずかしいわね』
と、お母様を悲しませているエヴィ。本当に、エヴィは光の魔力持ちの私の双子の姉なんだろうか?一体、エヴィは何の役に立っているの?居るか居ないか分からない暗い存在で、魔力が無い令嬢。きっと、マトモな婚約者なんてできないだろう。
ーまぁ、お金持ちとは、結婚できるかもね?ー
そんなエヴィとは違って、私の婚約者になる人は、王族かそれに準ずるような高位貴族の令息と決まっている。一番の有力候補は、同い年の第二王子─イズライン殿下。肩まであるストレートの黒髪に茶色の瞳。兄である王太子殿下を支える為に、既に国内におけるいくつかの事業に携わっているらしい。将来有望である。後は、いつ、その第二王子との婚約が発表されるのか─と、待ち続けているのにも関わらず、未だに私の婚約者は発表されていない。婚約者すら決まっていない。
ーどうして?ー
私は、稀な光の魔力持ちなのに。どうして、王族は私を欲しがらないの?それに、どうして魔力無しの出来損ないがAクラスで、第二王子や王太子殿下と接点を持っているの!?本来であれば、そこは私の場所なのに!
『リンディは、光の魔力の訓練で大変なんだから、Bクラスでも凄い事よ。エヴィは魔力無しなんだから、Aクラスになれて当たり前よ。それ位しか取り柄が無いでしょう?』
とお母様は言っていたけど──気に喰わない。出来損ないのエヴィが、あそこに居る事が、本当に気に喰わない。
それに、ジェマの婚約者が、公爵令息のブレイン様だと言う事も気に喰わない。私の婚約者が王子でない場合、一番に候補に上がるのが、ブレイン様じゃないの!?
『なら、ジェマから奪えば良いのよ』
お母様がニッコリと微笑む。
ブレイン様とジェマの婚約、はお互いの祖父が結んだもの。そこに、愛なんて一切存在しない──筈なのに。私がいくらブレイン様に声を掛けても、視線を送っても、一切私に靡かない。それでも、ブレイン様は私にはいつも笑顔で、エヴィには冷たい視線を向けているから、私に好意を持っているのは確かだ。ただ、婚約者であるジェマを気にしているだけ。
ー兎に角、ブレイン様が私のところに来やすくしてあげないとね?ー
そう思って、あのベリーパイをジェマに持って行って、ついでにと、エヴィにも持って行ってあげてみれば──
「あの出来損ないが!なんで!生徒会役員になってるの!?」
有り得ない!勉強しか取り柄の無い出来損ないのクセに!見た目だって普通のクセに!
あの下剤を入れたクッキーを食べさせても、1日で復活したエヴィ。本当に、昔から(あの高熱以外では)病気知らずの体力馬鹿。
病気知らず────
『──の望みだから。でも、覚えておいて?───次第だから』
そう言えば……私の体調が良くなってくる少し前、誰かに何かを言われた……ような……
「思い出せないと言う事は、大したことじゃ無いって事よね。それに、今はそれどころじゃないわ」
エヴィが生徒会役員なんて、きっと、ジェマと一緒に居たいからって、我儘を言って無理やり入ったに違いない。本当だったら、あの場所も、私の場所だったのよ!
「本当に気に喰わない!」
エヴィ、あんたの我儘っぷりを、学校─社交界に広めてあげるから!
取り敢えず、その前に───
ー明日はブレイン様との仲を、しっかり深めるわよ!ー
イライラする気持ちを、私に付いている子爵出の侍女に少しだけぶつけて、私はいつもよりも早目に眠りに就いた。
105
あなたにおすすめの小説
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。
バナナマヨネーズ
恋愛
山田華火は、妹と共に異世界に召喚されたが、妹の浅はかな企みの所為で追放されそうになる。
そんな華火を救ったのは、若くしてシグルド公爵となったウェインだった。
ウェインに保護された華火だったが、この世界の言葉を一切理解できないでいた。
言葉が分からない華火と、華火に一目で心を奪われたウェインのじりじりするほどゆっくりと進む関係性に、二人の周囲の人間はやきもきするばかり。
この物語は、理不尽に異世界に召喚された少女とその少女を保護した青年の呆れるくらいゆっくりと進む恋の物語である。
3/4 タイトルを変更しました。
旧タイトル「どうして異世界に召喚されたのかがわかりません。だけど、わたしを保護してくれたイケメンが超過保護っぽいことはわかります。」
3/10 翻訳版を公開しました。本編では異世界語で進んでいた会話を日本語表記にしています。なお、翻訳箇所がない話数には、タイトルに 〃 をつけてますので、本編既読の場合は飛ばしてもらって大丈夫です
※小説家になろう様にも掲載しています。
愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
幼い頃から天の声が聞こえるシラク公爵の娘であるミレーヌ。
この天の声にはいろいろと助けられていた。父親の命を救ってくれたのもこの天の声。
そして、進学に向けて騎士科か魔導科を選択しなければならなくなったとき、助言をしてくれたのも天の声。
ミレーヌはこの天の声に従い、騎士科を選ぶことにした。
なぜなら、魔導科を選ぶと、皇子の婚約者という立派な役割がもれなくついてきてしまうからだ。
※完結しました。新年早々、クスっとしていただけたら幸いです。軽くお読みください。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。
病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる