(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん

文字の大きさ
26 / 75

ブレイン=アンカーソン

「今日の午後は、ジェマ嬢とデートだったな?」

「はい。ジェマが、薔薇が好きだと聞いたから、王城の薔薇を見せてあげたくて」

王城には、いくつかの庭園があり、王妃陛下が管理している庭園は、王妃陛下の許可がなければ立ち入る事はできないが、一般公開されている庭園については、入城できる者はいつでも立ち入る事ができる。他にも、来賓を饗すガゼボなどが配置された庭園もある。

今日、私─ブレイン=アンカーソンの婚約者ジェマと見に行くのは、その一般公開されている庭園だ。ジェマは薔薇が一番好きな花だそうだ。この一般公開されている庭園の一角に、色とりどりの薔薇が咲いているが、ジェマは一度も来た事がないらしい。父親であるブルーム伯爵は王城勤めの文官だ。その娘であるジェマなら、いつでも登城し見る事も可能なのだが──

ジェマは、前ブルーム伯爵夫人の子で、双子のリンディ嬢とエヴィ嬢と弟のサイラスとは母親が違う。そのせいで、弟妹達とのが違うようだ。
あの母親─ブルーム伯爵夫人は、光の魔力持ちのリンディ主義者。いつも、私とジェマの間に割り込んで来る。そのせいで、私がジェマに会いにブルーム邸に訪れても、いつもそこにはリンディ嬢が居て、ジェマと2人でゆっくり話をする事もできないのだ。だから、今日は久し振りに2人でゆっくり庭園を見て回れると思っていたのだが─────






「ブレイン様!」
「…………」

ジェマを迎える為に、アシェルの執務室で挨拶をした後、城門の方へと向かっている時に、リンディ嬢に声を掛けられた。

ー何故、このタイミングでこの場所に居るんだ?ー

内心、舌打ちしてしまいそうになるのを我慢して、声がした方へと振り返る。

「リンディ嬢。こんにちは。何か私に用事でも?」

王城内で伯爵令嬢でしかないリンディ嬢が、大声で公爵家嫡男である私を、私の許可無く名前呼びをして呼び止める。何とも不作法なご令嬢だ。同じ双子のエヴィ嬢は我儘ではあるが、私を呼び止める事は無い。寧ろ、私からは距離をとっている。『“ブレイン”と呼んでもらっても良い』と、何度かそれとなく言った事もあるが、今でも相変わらずエヴィ嬢は私の事は未だに“アンカーソン様”呼びのままである。

少し寂しい……何て思ってはいない───筈だ。

「すみません。特に用がある訳ではないんですけど……お見掛けしたので、つい声を掛けてしまいました」

申し訳無さそうに目を潤ませて私を見上げて来るリンディ嬢。庇護欲を掻き立てる様なその仕草。

ー嫌悪感しかない。これが、本当に、あのエヴィ嬢と双子の妹なのか?ー

されど、ジェマの妹である事には変わりはないから、の対応をして来たが、それは間違いだったのかもしれない。エヴィ嬢とリンディ嬢、対応の仕方は、真逆だったかもしれない。

「特に用がないなら、私はこれで失礼する。今日は、これから、君の姉で私の婚約者のジェマと約束があるから」

「え?ジェ………お姉様?え?だって…お姉様は……」

と言い掛けて、リンディ嬢はハッとした後、口を噤んだ。

「ジェマが何か?」

「──いえっ……何も。その……失礼しました」

そう言って軽く頭を下げた後、リンディ嬢は城内の方へと走って行った。




今日のジェマも、安定に綺麗だ。
私よりも少し明るい金髪に、エメラルドグリーンの様な瞳はいつもキラキラと輝いている。その瞳が私を見つめてくる度に、ジェマに対しての愛しさが増していき──ある意味困る程だ。

ー薔薇の花に囲まれるジェマは、絵になるなぁー

なんて、幸せを噛み締めていると

「ブレイン様。少し……お話があるのですが………」

と、そこには、いつもの優しい笑顔ではなく、少し緊張したような顔をしたジェマが居た。






「ブレイン様は、本当に、エヴィの事を我儘だと思っているんですか?」

庭園内にあるベンチに、ジェマと横並びに座り、少し深呼吸をしてからジェマが話をし出した。
それは、ある程度アンカーソン家が調べて知っていた事と、知らなかった事もあった。

独りぼっちだったジェマを救ってくれたのがエヴィ嬢だった。エヴィ嬢独りぼっちだった。

「エヴィは、自分の為の我儘は言わないんです。あの子が何か我儘を言う時は、必ず何かがあるんです。だから──」

「確かに、最初の頃は我儘な子だな─と思っていたけど……今は違う」

落ち着けば、それはとても簡単だった。エヴィ嬢は、いつも姉のジェマを優先して動いている。そのエヴィ嬢を、あのアシェルが微笑ましそうな顔で見ているのだ。それに、どんな事があっても誤解されたくないと、どんなご令嬢にも花の一輪も贈った事がなかったアシェルが、エヴィ嬢に赤色のカーネーションを贈った──と言う事は、アシェルも本気だと言う事だろう。

全くアシェルに気のない、地位や権力に全く興味の無いエヴィ嬢には申し訳無いが、おとなしく…アシェルに囚われてもらいたい。アシェルが初めて、自分から望んだモノだから。

「ジェマも気付いているだろう?殿下がエヴィ嬢を捕らえようとしているのを」

ジェマは、少し困ったような顔をして頷いた。

「エヴィ嬢には悪いけど、もう、エヴィ嬢はアシェルからは逃げられないと思う。だから─と言うか、私位の小言を言われる事にも慣れていってもらわないと……ね?」

ジェマにとって可愛い妹なら、私だって甘やかしてあげたい─とも思うが、甘やかすだけなら、他の者がしている。なら、1人位チクリと言う者が居ても良いだろう。アシェルが、共に立ちたいと思っている相手なのだから。

ジェマはパチッと瞠目した後、やっぱり少し困った様な顔をして笑った。





ーそれより、問題は──リンディ嬢の方だけどー

とは、ジェマには言わない方が良いだろう。


感想 188

あなたにおすすめの小説

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版

まほりろ
恋愛
 国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。  食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。  しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。  アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。  その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。  ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。 ※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日 ※長編版と差し替えました。2025年7月2日 ※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。 ※表紙イラストは猫様からお借りしています。

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。 エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。 地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。 しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。 突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。 社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。 そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。 喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。 それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……? ⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎