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クズでお馬鹿さん
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「えっと……お姉様の方には何が?」
リンディが走り去った後、姉と2人でソファーに横並びに座り、紙袋の中身を確認すると、私の紙袋にはブルーム家の料理長が作った、1人分サイズのベリーたっぷりのベリーパイが入っていた。
ーひょっとして、私が嫌いって知っててやってる?って訊きたくなるなぁ。まぁ……“家族仲良し”アピールなんだろうけどー
生徒会室には、王族の王太子と第二王子を始め、高位貴族で王太子の側近達が居る。それを分かってて、リンディはこの時間迄渡しに来なかったんだろう。
でも、私が生徒会役員になったって知らなかったって……さっきのあの顔……これから、また何かやらかしそうだよね。
と、その前に────
「あぁ、私の方にもベリーパイが入っているわ」
ニコリと、姉は嬉しそに笑う。
姉は、本当に良くも悪くも人がいい。虐げられていたのに。虐げていた義母からの差し入れを、素直に喜んでいる。私には、更に嫌悪感が増すだけのモノにしか過ぎない。私の元に届くのは、いつもベリーパイ。ピンク色の服。ピンク色の髪留め。
一体、それらは誰への贈り物なの?
「エヴィ?」
姉に名前を呼ばれてハッとする。
「あ、ごめんなさい。やっぱりベリーパイなんですね……」
ー危ない危ないー
久し振りにリンディを目にして、昔の思考に囚われかけてしまった。ふっ─と軽く息を吐いてから、姉の手元にある紙袋を覗き込む。
ーうん。やっぱり、お姉様の方のパイから薄いグレー色のモノが溢れてるー
薄いグレー色と言う事は、毒ではない。よくあるパターンのモノで、“お腹が痛い”位のモノだ。半日から1日安静にしていれば自然に治るし、胃腸薬でも飲めばすぐに治る程度。
でも、何故、姉の方だけなのか。
「お姉様、明日って、何か予定があったりしますか?」
「明日の予定?明日は学校が休みでしょう?ブレイン様が王城内にある庭園を案内してくれると言うから、そこに行く予定なの」
王城内の庭園と言う事は、王城に居る王太子の側近であるアンカーソン様に、姉が会いに登城して、それから庭園でデートをする─と言う事だろう。
ーなるほどー
本当に呆れる。母とリンディは、姉にこれを食べさせて体調を崩させて、姉の代わりにリンディがアンカーソン様と庭園に─
クズだと思っていたけど、ここまで馬鹿だとは思っていなかった。
王族との婚約が決まらないどころか、話にも出ていないと、ルイーズもメリッサも言っていたし、アシェルハイド殿下もイズライン殿下も、リンディに対しては殆ど無視に近い。流石に、あの母でも、王族との婚約は無いと思ったのかもしれない。そこで、狙っているのが─王太子側近の高位貴族の令息達。近いところで言うと、ブレイン=アンカーソン様だ。
アンカーソン様は、リンディには優しい。おそらく、“ジェマに我儘を言わない妹”だから。逆に、“ジェマに我儘を言う妹”だから、私には厳しい。そんな、分かり易いアンカーソン様に近付こうなんて──もう、溜め息しか出ない。それに、アンカーソン様は姉であるジェマの婚約者だ。それも、姉の実の祖父である先代のローアン侯爵様と先代のアンカーソン公爵様が結んだ婚約だ。伯爵夫人でしかない母が解消や変更できるようなものではないし、光の魔力持ちだとしても無理だろう。ブレイン様本人と、光の魔力持ちの王太子殿下が“ノー”と言えば、絶対に。これ以上の事はせずに、この失敗でおとなしくしてくれたら良いけど。いや……あの母にあのリンディだ。素直には諦めない……かなぁ?でも、姉の幸せを奪おうとするなら、私だって遠慮はしないけどね。
ー兎に角、この二つのパイ……紙袋は帰る迄に私のと取り替えてお姉様に渡そうー
そう思いながら、姉と2人で生徒会の仕事に戻った。
*アシェルハイド視点*
何となくだが、ジェマ嬢が貰ったの物の方にだけ違和感がある。それに、やはりエヴィも、ジェマ嬢が貰った方の物を気にしている。何かがあるのは明らかだ。
光の魔力持ち─リンディ=ブルーム
彼女は、ちゃんと光の魔力についての勉強を受けたのだろうか?否。受けてはいるのだろうが、きちんと理解していないのだろう。だから、彼女の魔力は───
本人がきちんと理解して行動しない限りは、何も変わらないだろう。どうなるのか……楽しみだな。
「お疲れ様でした。あ、はい、お姉様」
今日の生徒会の作業が終わり、生徒会室から出る前に、エヴィが紙袋二つを手に取り、片方をジェマ嬢に手渡す。
「ありがとう、エヴィ」
それを素直に受け取るジェマ嬢。
ーやっぱりなー
思っていた通り、エヴィは、本来エヴィが貰った方の紙袋を、ジェマ嬢に手渡した。勿論、見た目は全く変わらない紙袋だ。ブレインもジェマ嬢も気付く事は無い。そして、ホッした顔のエヴィ。
ー本当に、ジェマが好きなんだなー
そんなエヴィが、また更に可愛く見えた。
リンディが走り去った後、姉と2人でソファーに横並びに座り、紙袋の中身を確認すると、私の紙袋にはブルーム家の料理長が作った、1人分サイズのベリーたっぷりのベリーパイが入っていた。
ーひょっとして、私が嫌いって知っててやってる?って訊きたくなるなぁ。まぁ……“家族仲良し”アピールなんだろうけどー
生徒会室には、王族の王太子と第二王子を始め、高位貴族で王太子の側近達が居る。それを分かってて、リンディはこの時間迄渡しに来なかったんだろう。
でも、私が生徒会役員になったって知らなかったって……さっきのあの顔……これから、また何かやらかしそうだよね。
と、その前に────
「あぁ、私の方にもベリーパイが入っているわ」
ニコリと、姉は嬉しそに笑う。
姉は、本当に良くも悪くも人がいい。虐げられていたのに。虐げていた義母からの差し入れを、素直に喜んでいる。私には、更に嫌悪感が増すだけのモノにしか過ぎない。私の元に届くのは、いつもベリーパイ。ピンク色の服。ピンク色の髪留め。
一体、それらは誰への贈り物なの?
「エヴィ?」
姉に名前を呼ばれてハッとする。
「あ、ごめんなさい。やっぱりベリーパイなんですね……」
ー危ない危ないー
久し振りにリンディを目にして、昔の思考に囚われかけてしまった。ふっ─と軽く息を吐いてから、姉の手元にある紙袋を覗き込む。
ーうん。やっぱり、お姉様の方のパイから薄いグレー色のモノが溢れてるー
薄いグレー色と言う事は、毒ではない。よくあるパターンのモノで、“お腹が痛い”位のモノだ。半日から1日安静にしていれば自然に治るし、胃腸薬でも飲めばすぐに治る程度。
でも、何故、姉の方だけなのか。
「お姉様、明日って、何か予定があったりしますか?」
「明日の予定?明日は学校が休みでしょう?ブレイン様が王城内にある庭園を案内してくれると言うから、そこに行く予定なの」
王城内の庭園と言う事は、王城に居る王太子の側近であるアンカーソン様に、姉が会いに登城して、それから庭園でデートをする─と言う事だろう。
ーなるほどー
本当に呆れる。母とリンディは、姉にこれを食べさせて体調を崩させて、姉の代わりにリンディがアンカーソン様と庭園に─
クズだと思っていたけど、ここまで馬鹿だとは思っていなかった。
王族との婚約が決まらないどころか、話にも出ていないと、ルイーズもメリッサも言っていたし、アシェルハイド殿下もイズライン殿下も、リンディに対しては殆ど無視に近い。流石に、あの母でも、王族との婚約は無いと思ったのかもしれない。そこで、狙っているのが─王太子側近の高位貴族の令息達。近いところで言うと、ブレイン=アンカーソン様だ。
アンカーソン様は、リンディには優しい。おそらく、“ジェマに我儘を言わない妹”だから。逆に、“ジェマに我儘を言う妹”だから、私には厳しい。そんな、分かり易いアンカーソン様に近付こうなんて──もう、溜め息しか出ない。それに、アンカーソン様は姉であるジェマの婚約者だ。それも、姉の実の祖父である先代のローアン侯爵様と先代のアンカーソン公爵様が結んだ婚約だ。伯爵夫人でしかない母が解消や変更できるようなものではないし、光の魔力持ちだとしても無理だろう。ブレイン様本人と、光の魔力持ちの王太子殿下が“ノー”と言えば、絶対に。これ以上の事はせずに、この失敗でおとなしくしてくれたら良いけど。いや……あの母にあのリンディだ。素直には諦めない……かなぁ?でも、姉の幸せを奪おうとするなら、私だって遠慮はしないけどね。
ー兎に角、この二つのパイ……紙袋は帰る迄に私のと取り替えてお姉様に渡そうー
そう思いながら、姉と2人で生徒会の仕事に戻った。
*アシェルハイド視点*
何となくだが、ジェマ嬢が貰ったの物の方にだけ違和感がある。それに、やはりエヴィも、ジェマ嬢が貰った方の物を気にしている。何かがあるのは明らかだ。
光の魔力持ち─リンディ=ブルーム
彼女は、ちゃんと光の魔力についての勉強を受けたのだろうか?否。受けてはいるのだろうが、きちんと理解していないのだろう。だから、彼女の魔力は───
本人がきちんと理解して行動しない限りは、何も変わらないだろう。どうなるのか……楽しみだな。
「お疲れ様でした。あ、はい、お姉様」
今日の生徒会の作業が終わり、生徒会室から出る前に、エヴィが紙袋二つを手に取り、片方をジェマ嬢に手渡す。
「ありがとう、エヴィ」
それを素直に受け取るジェマ嬢。
ーやっぱりなー
思っていた通り、エヴィは、本来エヴィが貰った方の紙袋を、ジェマ嬢に手渡した。勿論、見た目は全く変わらない紙袋だ。ブレインもジェマ嬢も気付く事は無い。そして、ホッした顔のエヴィ。
ー本当に、ジェマが好きなんだなー
そんなエヴィが、また更に可愛く見えた。
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