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リンディ=ブルーム
しおりを挟む私の名前は─リンディ=ブルーム
稀な光の魔力持ちだ。
そのせいで、私は幼い頃の殆どをベッドの上で過ごしていた。光の魔力はとても強いもので、私の小さな身体は直ぐに悲鳴を上げるようにギリギリと痛みを伴っていた。高熱が出る事も当たり前だった。そんな私の側には、いつも優しいお母様とお父様が居てくれた。
体調の良い日も、ベッドからは起き上がる事はできても、部屋から出る事はできず、部屋で絵本を読んでいた。
そんな私には、双子の姉─エヴィと、母親違いの姉が居る。
義母姉─ジェマ。ジェマの事は、あまり……全く知らない。何故なら、同じ邸に住んで居ないから。会ったとしても、それがジェマだとは分からなかっただろう。
そして、双子の姉のエヴィ。双子だから、見た目は殆ど変わらなかった。ただ、珍しく熱を出して寝込んでいる─と聞いた頃に、その熱のせいで魔力を失ったらしく、私と同じ髪色のピンクブロンドが琥珀色に変わってしまったそうだ。
ーたった一度の熱で?ー
何て弱いのか。私なんて、毎日のように熱を出して寝込んでいたけど、容姿が変わる事も、魔力を失う事も無かった。容姿が変わったのも、エヴィが弱かったからなだけだ。
『魔力無しの令嬢なんて恥ずかしいわね』
と、お母様を悲しませているエヴィ。本当に、エヴィは光の魔力持ちの私の双子の姉なんだろうか?一体、エヴィは何の役に立っているの?居るか居ないか分からない暗い存在で、魔力が無い令嬢。きっと、マトモな婚約者なんてできないだろう。
ーまぁ、お金持ちとは、結婚できるかもね?ー
そんなエヴィとは違って、私の婚約者になる人は、王族かそれに準ずるような高位貴族の令息と決まっている。一番の有力候補は、同い年の第二王子─イズライン殿下。肩まであるストレートの黒髪に茶色の瞳。兄である王太子殿下を支える為に、既に国内におけるいくつかの事業に携わっているらしい。将来有望である。後は、いつ、その第二王子との婚約が発表されるのか─と、待ち続けているのにも関わらず、未だに私の婚約者は発表されていない。婚約者すら決まっていない。
ーどうして?ー
私は、稀な光の魔力持ちなのに。どうして、王族は私を欲しがらないの?それに、どうして魔力無しの出来損ないがAクラスで、第二王子や王太子殿下と接点を持っているの!?本来であれば、そこは私の場所なのに!
『リンディは、光の魔力の訓練で大変なんだから、Bクラスでも凄い事よ。エヴィは魔力無しなんだから、Aクラスになれて当たり前よ。それ位しか取り柄が無いでしょう?』
とお母様は言っていたけど──気に喰わない。出来損ないのエヴィが、あそこに居る事が、本当に気に喰わない。
それに、ジェマの婚約者が、公爵令息のブレイン様だと言う事も気に喰わない。私の婚約者が王子でない場合、一番に候補に上がるのが、ブレイン様じゃないの!?
『なら、ジェマから奪えば良いのよ』
お母様がニッコリと微笑む。
ブレイン様とジェマの婚約、はお互いの祖父が結んだもの。そこに、愛なんて一切存在しない──筈なのに。私がいくらブレイン様に声を掛けても、視線を送っても、一切私に靡かない。それでも、ブレイン様は私にはいつも笑顔で、エヴィには冷たい視線を向けているから、私に好意を持っているのは確かだ。ただ、婚約者であるジェマを気にしているだけ。
ー兎に角、ブレイン様が私のところに来やすくしてあげないとね?ー
そう思って、あのベリーパイをジェマに持って行って、ついでにと、エヴィにも持って行ってあげてみれば──
「あの出来損ないが!なんで!生徒会役員になってるの!?」
有り得ない!勉強しか取り柄の無い出来損ないのクセに!見た目だって普通のクセに!
あの下剤を入れたクッキーを食べさせても、1日で復活したエヴィ。本当に、昔から(あの高熱以外では)病気知らずの体力馬鹿。
病気知らず────
『──の望みだから。でも、覚えておいて?───次第だから』
そう言えば……私の体調が良くなってくる少し前、誰かに何かを言われた……ような……
「思い出せないと言う事は、大したことじゃ無いって事よね。それに、今はそれどころじゃないわ」
エヴィが生徒会役員なんて、きっと、ジェマと一緒に居たいからって、我儘を言って無理やり入ったに違いない。本当だったら、あの場所も、私の場所だったのよ!
「本当に気に喰わない!」
エヴィ、あんたの我儘っぷりを、学校─社交界に広めてあげるから!
取り敢えず、その前に───
ー明日はブレイン様との仲を、しっかり深めるわよ!ー
イライラする気持ちを、私に付いている子爵出の侍女に少しだけぶつけて、私はいつもよりも早目に眠りに就いた。
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