52 / 55
前だけを
しおりを挟む義母と妹が、リオの配下の人達に連れ去られた翌日、タウンハウスの使用人が8割程──これまた、消えていた。
ーえ?消えたって、怖くない?ー
その8割とは、料理人を含め、私に対して害を加えた使用人達だった。まぁ、後の2割も、私と接点がなかった使用人だけど。
兎に角、今のエルダインのタウンハウスは不気味な程に静かだ。義母妹も居なくなり、父は辺境地に帰るし、私はカルディーナ国へと行く為、これから先、このタウンハウスに今迄のように沢山の使用人が必要になる事はあまりないだろう。暫くの間は、残った使用人だけで回して行くそうだ。
ちなみに、カーソンも父と一緒に辺境地へと戻るそうだ。
それからの事はあっと言う間だった。
エルダイン領に帰って来た─と思えば、既に、私がカルディーナ王国へ行く支度が整っていた。
ーえ?そんなにも早く、私に出て行って欲しいって事?ー
引き攣った顔をしているだろう私の横に居るリオは、何故か苦笑していた。
今すぐにでも旅立つ事もできたけど、疲れを取る為と、受け入れ先の伯爵家の都合もあるだろうと、3日後にカルディーナに向けて出立する事になった。
その間、兄と少しだけ話をする事ができた。
「それじゃあ、お兄様はジュリアス殿下の側近にはならず、エルダインの領地運営のお手伝いをするんですね。」
「生徒会役員に選ばれて、ただ断れなかっただけで、もともと、側近なんてものには興味なかったからね。1年だけ我慢すれば良いと思ったから。」
相変わらずの無表情な兄だ。リオや父からは聞いているけど、本当に何を考えているのか分からない。
何でも?表情に出る父より、貴族には向いているのかもしれない。
兎に角、兄が私に何も言わない、隠すのなら、私も知らないふりを通すまでだ。それでも──
「お兄様。お兄様のお陰で邸から出られて、学園生活は比較的穏やかに過ごす事ができました。ありがとうございました。これからは……父と共に、頑張って下さい。」
それだけ言って、座っていた椅子から立ち上がり、兄と話しをしていたリビングルームから出ようと、ドアを開けた時─
「カルディーナに行っても……元気でな……」
と、後ろから声を掛けられて、私は顔だけ振り向いて「ありがとうございます。」とだけ言って、部屋を後にした。
「おかえり」
自室に戻って来ると、両手を広げたリオに迎えられた。
「ん?その手は何?」
ー格好良さをアピールしてるの?え?ナルシストなの?ー
何て思っているうちに、リオが私との距離を詰めて、そのままギュッと───抱きしめられた。
「ふぅ──っ!」
ーそんなギュッって力を入れられると、変な声が出るからね!?いや!それよりも!!ー
「リオ?そんなにも抱きつくの…やめてくれる!?」
「これ位は良いだろう?婚約者なんだし。」
「“婚約者”は、免罪符じゃないからね?兎に角、離してくれる?」
モゾモゾと動いてはみるけど、全く微動だにしないリオ。
「──フェリが甘えてくれない。」
リオは、むうっ─と、拗ねたような顔をしながら腕の力を緩める。2人の間に少しだけ間が空いたけど、未だに腰に手を回されて固定されたままだ。
「甘えてくれない─って……。私は、十分リオには甘やかされてると思うけど?」
「俺が甘やかすんじゃなくて、フェリから俺に甘えて欲しいって事。」
「えー……なによソレ……ふふっ」
「まぁ、これから時間はたっぷりあるから、フェリが俺に甘えてくれるように頑張るよ。」
何を頑張るの?とは訊けなかった。そう訊く前に、またリオにキスをされたから。触れるだけのキス。またすぐに離されて、至近距離で視線が合った。それから、またリオの顔が近付いて来て、私も目を閉じて受け入れると、今度は少しだけ長いキスをされたのだった。
そして3日後。予定通りに、私とリオはカーディナル王国へと出立する。
お別れは、アッサリしたものだった。他国と言っても、王都よりも近い国だしね。
兄は相変わらずの無表情だし、父は…涙が溜まっていたのは気のせいだろう。そして、カーソンは、私が好きだった焼き菓子等を詰めたバスケットを用意してくれていた。
お互い軽く挨拶を交した後、リオと私とココは、リオが手配していたチェスター辺境伯の馬車に乗り込んだ。
「窓を開けようか?」
ソロソロと動き出した馬車の中で、リオが声を掛けてくれる。
「──ううん。開けなくて良いわ。」
父と兄とカーソンが見送ってくれているだろう─と思うけど…
「──本当に、“今更”なのよね……。今更優しくされたって……すぐには許せないよね?本当に……今更よ………。」
「フェリ……。そうだな。許さなくて良いと思うよ。フェリが望むなら、俺がいつでも仕返ししてあげるから。」
そう言って、リオはその言葉とは反対に、優しい笑みを浮かべて私の肩を優しく抱き寄せてくれた。
今はまだ、振り返らない
今は、前だけを見て進んで行く
❋今朝、感想をいただきましたが、理由あって却下をした方へ(念の為、名前も伏せさせていただきます)❋
この場をお借りして、感想、ありがとうございました。
豆腐メンタルの私には、とてもありがたいものでした。
最後迄、煎餅のお供に、楽しんで読んでもらえるように、頑張ります。
本当に、ありがとうございました。
(。>ㅅ<)✩⡱
214
あなたにおすすめの小説
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。
【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~
猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」
王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。
王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。
しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。
迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。
かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。
故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり──
“冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。
皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。
冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」
一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。
追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、
ようやく正当に愛され、報われる物語。
※「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる