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願い
リオの配下と言う人達が義母と妹を連れ去った後─
「エスタリオン殿、助かりました。ありがとうございます。」
心なしゲッソリした顔で、リオにお礼を言う父。
「お礼を言うならシリル殿に。全て調えていたのはシリル殿ですからね。」
ーえ?お兄様、凄過ぎない?ー
これで、誰からも何も教えてもらってないって…もう、父はいつでも引退できるんじゃないだろうか?
と言っても、父も領地運営についてはできる人だけど。
「兎に角、これでようやく落ち着きます。私が言うのもなんですけど……フェリシティの事、宜しくお願いしますね。」
と、父は優しく微笑んだ。
「綺麗な月だなぁ──」
色々あって疲れているのに、なかなか寝付けなくて、自室から出で廊下に通じているバルコニーにやって来た。
義母と妹が連れ去られた後の邸は、いつもよりも静かだ。
今頃、義母と妹に擦り寄っていた使用人達は、戦々恐々だろうけど。きっと父は、使用人達も一掃するだろう。
可哀想─なんて思わない。自業自得だから。と言っても、私もカルディーナ国に行くから、エルダインがどうなろうとも、もう関係の無い事だけど。
「フェリ、見付けた。」
「ん?」
後ろから声がしたかと思ったら、そのまま背中から優しく抱きしめられた。
「え!?ちょっ──リオ!?」
「“離れて”、“離して”は受け付けないからな。今迄、ずっと触れられる距離にいて、ずっと我慢してたんだ。正式に婚約者になったんだから、これ位……良いだろう?」
「──ゔっ………」
ーそんな甘い言葉を、耳元で囁かないで欲しい!ー
「頑張った俺へのご褒美だと思って?」
「ひぁ──っ!?」
リオの唇?が、私の耳に軽く触れて、思わず変な声が出てしまった。リオは、そんな私をしっかり抱きしめたままクスクスと笑っている。
「──リオ。何だか……女の子の扱いに…慣れてない?」
ーひょっとして、情報を得るために……体を張って…とか!?ー
「フェリ、変な事を考えてないよな?10歳やそこらの年齢から、毎日必死に引き継ぎの為に倒れる迄頑張って来た俺が、女遊びしてると思うのか?それに、俺はずっとフェリが好きだったんだからな。フェリを護りたくて頑張ったんだからな?」
「えっ!?」
急に抱く力を緩めたかと思うと、そのまま腕の中でグルっと私の体を反転させて、今度は向き合うようにして抱きしめられた。
「え?ちょっ──」
「───俺は、フェリが好きだ。ずっと好きだったんだ。そのフェリが、今は俺の腕の中にいるんだ。本当に嬉しい。フェリ、俺を選んでくれてありがとう。」
リオは、フワリと微笑んで、お互いの額をくっつける。
「選んでくれて──なんて……。私の方こそ、いっぱい助けてくれてありがとう。正直…恋愛って、イマイチよく分からないんだけど、私はリオと一緒に居ると……自然と笑顔になれるし、心が温かくなるの。私は、リオから沢山の目には見えないモノをもらっているわ。本当に、ありがとう。」
顔が近過ぎて恥ずかしいけど、私の気持ちをしっかりと伝えたかったから、視線をしっかり合わせて、私もニッコリ微笑んだ。
「──可愛い過ぎるフェリが悪い……」
「え?」
リオが少し怒ったような顔をした後、私の頬に手を添えて、私の唇に軽く触れるだけのキスをした。
それは本当に一瞬で、目を開けたままの私には、目を軽く伏せたリオの顔は月明かりに照らされてよく見えていて…きっと、この時のリオの顔は、一生忘れる事はないだろうな──と思った。
*執務室にて*
『──ありがとう。』
最期の彼女は、笑っていた──
「────遠慮なく入ってもらって良いですよ?」
「あ、やっぱりバレてましたか?」
気配を消してドアの前に居たエスタリオンは、ドア越しに声を掛けられ、素直に執務室に入った。
「─本当に、何も言わなくても良いんですか?」
「ん?別に、何も言う事は無いよ?」
エルダイン辺境伯は、ヘラヘラと笑っている。
“腹芸ができない”、“嘘がつけない”
一体、どの口が言うのだ!?と、突っ込みたくなる。現エルダイン辺境伯─グレイソン殿は、確かに、武に関しては全く駄目だったそうだ。エルダイン前辺境伯が、俺の祖父と酒を飲みながら嘆いていた事を覚えている。だけど──
ソフィア様を狙っていた領主を、跡形無く始末したのは─目の前に居るグレイソン殿だ。俺と配下は、グレイソン殿の指示通りに動いただけだった。無能どころか、大層な爪を隠し持った鷹だなぁ─と思う。シリル殿は、薄々は気付いているだろうけど。
「そうしておけば、遠慮なくシリル殿が辺境伯を継ぎ、フェリは……後腐れなくカルディーナに帰る事ができると?」
「───何の事だろうね?」
やっぱりヘラヘラと笑うグレイソン殿は、何を思っているのか……サッパリ分からなかった。
*エスタリオンが去った後のグレイソン*
『そうしておけば、遠慮なくシリル殿が辺境伯を継ぎ、フェリは……後腐れなくカルディーナに帰る事ができると?』
シリルは、ヘタレな私とは違って立派な辺境伯になれるだろう。私やブリジットなんかに、遠慮する事はないのだから。
フェリシティ。ソフィアが最期迄一番気にしていた、たった1人の娘。
『フェリと一緒に、彼が眠る場所に帰りたかった。』
「ソフィア。君の憂いは、取り払ったよ。跡形無く──。フェリシティと共に、婚約者の元へ帰れるよ。」
自由の無かったソフィア。それでも、嘆く事もなくいつも笑顔だったソフィア。何もできなかった私に
『グレイソン様───ありがとう。』
と、最期に笑ってくれた。その笑顔が、とても綺麗だった。
ーどうか、ソフィアの分まで、フェリシティが幸せになりますようにー
「エスタリオン殿、助かりました。ありがとうございます。」
心なしゲッソリした顔で、リオにお礼を言う父。
「お礼を言うならシリル殿に。全て調えていたのはシリル殿ですからね。」
ーえ?お兄様、凄過ぎない?ー
これで、誰からも何も教えてもらってないって…もう、父はいつでも引退できるんじゃないだろうか?
と言っても、父も領地運営についてはできる人だけど。
「兎に角、これでようやく落ち着きます。私が言うのもなんですけど……フェリシティの事、宜しくお願いしますね。」
と、父は優しく微笑んだ。
「綺麗な月だなぁ──」
色々あって疲れているのに、なかなか寝付けなくて、自室から出で廊下に通じているバルコニーにやって来た。
義母と妹が連れ去られた後の邸は、いつもよりも静かだ。
今頃、義母と妹に擦り寄っていた使用人達は、戦々恐々だろうけど。きっと父は、使用人達も一掃するだろう。
可哀想─なんて思わない。自業自得だから。と言っても、私もカルディーナ国に行くから、エルダインがどうなろうとも、もう関係の無い事だけど。
「フェリ、見付けた。」
「ん?」
後ろから声がしたかと思ったら、そのまま背中から優しく抱きしめられた。
「え!?ちょっ──リオ!?」
「“離れて”、“離して”は受け付けないからな。今迄、ずっと触れられる距離にいて、ずっと我慢してたんだ。正式に婚約者になったんだから、これ位……良いだろう?」
「──ゔっ………」
ーそんな甘い言葉を、耳元で囁かないで欲しい!ー
「頑張った俺へのご褒美だと思って?」
「ひぁ──っ!?」
リオの唇?が、私の耳に軽く触れて、思わず変な声が出てしまった。リオは、そんな私をしっかり抱きしめたままクスクスと笑っている。
「──リオ。何だか……女の子の扱いに…慣れてない?」
ーひょっとして、情報を得るために……体を張って…とか!?ー
「フェリ、変な事を考えてないよな?10歳やそこらの年齢から、毎日必死に引き継ぎの為に倒れる迄頑張って来た俺が、女遊びしてると思うのか?それに、俺はずっとフェリが好きだったんだからな。フェリを護りたくて頑張ったんだからな?」
「えっ!?」
急に抱く力を緩めたかと思うと、そのまま腕の中でグルっと私の体を反転させて、今度は向き合うようにして抱きしめられた。
「え?ちょっ──」
「───俺は、フェリが好きだ。ずっと好きだったんだ。そのフェリが、今は俺の腕の中にいるんだ。本当に嬉しい。フェリ、俺を選んでくれてありがとう。」
リオは、フワリと微笑んで、お互いの額をくっつける。
「選んでくれて──なんて……。私の方こそ、いっぱい助けてくれてありがとう。正直…恋愛って、イマイチよく分からないんだけど、私はリオと一緒に居ると……自然と笑顔になれるし、心が温かくなるの。私は、リオから沢山の目には見えないモノをもらっているわ。本当に、ありがとう。」
顔が近過ぎて恥ずかしいけど、私の気持ちをしっかりと伝えたかったから、視線をしっかり合わせて、私もニッコリ微笑んだ。
「──可愛い過ぎるフェリが悪い……」
「え?」
リオが少し怒ったような顔をした後、私の頬に手を添えて、私の唇に軽く触れるだけのキスをした。
それは本当に一瞬で、目を開けたままの私には、目を軽く伏せたリオの顔は月明かりに照らされてよく見えていて…きっと、この時のリオの顔は、一生忘れる事はないだろうな──と思った。
*執務室にて*
『──ありがとう。』
最期の彼女は、笑っていた──
「────遠慮なく入ってもらって良いですよ?」
「あ、やっぱりバレてましたか?」
気配を消してドアの前に居たエスタリオンは、ドア越しに声を掛けられ、素直に執務室に入った。
「─本当に、何も言わなくても良いんですか?」
「ん?別に、何も言う事は無いよ?」
エルダイン辺境伯は、ヘラヘラと笑っている。
“腹芸ができない”、“嘘がつけない”
一体、どの口が言うのだ!?と、突っ込みたくなる。現エルダイン辺境伯─グレイソン殿は、確かに、武に関しては全く駄目だったそうだ。エルダイン前辺境伯が、俺の祖父と酒を飲みながら嘆いていた事を覚えている。だけど──
ソフィア様を狙っていた領主を、跡形無く始末したのは─目の前に居るグレイソン殿だ。俺と配下は、グレイソン殿の指示通りに動いただけだった。無能どころか、大層な爪を隠し持った鷹だなぁ─と思う。シリル殿は、薄々は気付いているだろうけど。
「そうしておけば、遠慮なくシリル殿が辺境伯を継ぎ、フェリは……後腐れなくカルディーナに帰る事ができると?」
「───何の事だろうね?」
やっぱりヘラヘラと笑うグレイソン殿は、何を思っているのか……サッパリ分からなかった。
*エスタリオンが去った後のグレイソン*
『そうしておけば、遠慮なくシリル殿が辺境伯を継ぎ、フェリは……後腐れなくカルディーナに帰る事ができると?』
シリルは、ヘタレな私とは違って立派な辺境伯になれるだろう。私やブリジットなんかに、遠慮する事はないのだから。
フェリシティ。ソフィアが最期迄一番気にしていた、たった1人の娘。
『フェリと一緒に、彼が眠る場所に帰りたかった。』
「ソフィア。君の憂いは、取り払ったよ。跡形無く──。フェリシティと共に、婚約者の元へ帰れるよ。」
自由の無かったソフィア。それでも、嘆く事もなくいつも笑顔だったソフィア。何もできなかった私に
『グレイソン様───ありがとう。』
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ーどうか、ソフィアの分まで、フェリシティが幸せになりますようにー
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