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第二章ー浄化の旅と帰還ー
魔獣②
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邸付きの薬師と魔導師が、できる限りの手を尽くすと、幾分かパルヴァン様の呼吸がマシになっていた。
「後は、様子を診ながら治療を続けますが…グレン様次第かと…」
ーもう、打てる手は無いー
と言う事だ。
「皆、少しの間、下がってもらえるか?」
シルヴィア様がそう言うと、部屋に居た薬師、魔導師、メイド達が部屋から出て行った。
「…それで?ハル殿、人払いはしたが…私にお願いとは?」
皆が部屋から出て行った事を確認すると、シルヴィア様はグレン様の手を握り締め、グレン様の顔を見ながら私に問い掛けてきた。
「パルヴァン様は、もう自力で飲む事が出来ないと思うので…このポーションを…その…シルヴィア様がグレン様に…」
「あぁ…口移しで飲ませろと…言うことか?」
私がコクコクと首肯すると、シルヴィア様は薄く笑いながら、私の手からポーションを取る。
そして、何の迷いも無く一気に自身の口に流し入れ、そのままパルヴァン様に口付けた。
パルヴァン様の反応も弱いのだろう。ゆっくりと、時間を掛けながら流し込んでいるようだ。
私はその邪魔にならないように、シルヴィア様とは反対側に回り込み、パルヴァン様の胸元にそっと手を乗せる。
息苦しそうなのが見ていて辛いので、先に肺を治そうと思ったのだ。シルヴィア様にも気付かれないように、カモフラージュとして、ポーションをパルヴァン様に掛けるのと同時に、ヒーリングの魔法を掛ける。
本当に“魔法使い”だなと思う。怪我の具合が手に取るように分かるし、それをキレイに治すイメージをすると、それが治っていくのだ。
よし、これで肺は大丈夫だ。次は頭だよね、シルヴィア様も、飲ませ終えたようだ。
「ハル殿…このポーションは…」
「私が…作った物で、もしもの時の為に、何本か持っていたんです。気にしないで下さい。」
そう言うと、目を見開いたまま私見詰めて来た。
「パルヴァン様は、私が必ず助けますから。」
ニコリと笑いながら言うと
「─っ…ありが…とう…っ…」
シルヴィア様は、握り締めていたパルヴァン様の手を自身口元に引き寄せ涙を流した。
その姿は、とても綺麗だった──
どれくらい経っただろうか?頭の傷と右腕の傷は、まだ痛々しい感じで残ってはいるが、もう危険な状態は脱していた。
目に見える傷まで一気に治すと、色々ヤバいだろうと思って、見えない傷を先に治したのだ。見えない傷の方が命に関わる程だったし…。
「ふぅー…」
魔法使いの魔力は無限と言っても、使い続けると疲れるのは疲れる。シルヴィア様は、パルヴァン様が助かると分かり気が緩んだのか、パルヴァン様の手を握ったままベッドに突っ伏して寝てしまっている。
森からまだ誰も帰って来ていないのだろうか?ダルシニアン様も慌てて引き返す程だ…フェンリルはとても強いんだろう。冗談ではなく、そんな強い魔獣が乙女ゲームに出て来るなんて…驚きだけど。乙女ゲームの定番は、“もふもふ”じゃなかったの?日本に還ったら、ラノベを読んでみようかな…。何て呑気に思っていた時
身体中にピリピリと刺さるような何かを感じた。
ー何?ー
それから、足下からゾワリと嫌な感覚が広がってくる。
一体何が起こっているのか分からない。分からないけど、ここには無防備なパルヴァン様とシルヴィア様が居る。私はそっとパルヴァン様の部屋から出て、部屋全体に結界を張り(カモフラージュに魔石を置き)、嫌な感じがする方へと足を向けた。
どうやら、パルヴァン様の部屋周辺に、防音防御の結界が張られていたようで、パルヴァン様の部屋から離れるにつれて、階下のざわめきが鮮明になる。それと比例して、身体中に不快感が増して行く。震え出す足を何とか前に出し、1階へと降りていくと──
「薬師殿!こっちへ来ては駄目だ!」
先程話をしていた騎士様が私に気付き、大声を上げる。
ヒユッと息を呑む。カタカタと体中が震え出す。
目の前に現れたのは…フェンリルだった
私の想像していたものより遥かに大きい。瞳はアイスブルーなのに、怒りの色を灯しているのが分かる。白銀の毛は所々血で赤く染まっている。そして、その首と手足には枷の様な物が付いている。
そのフェンリルの周りを、邸に居残っていた騎士様達と、パルヴァンの騎士様達で取り囲んでいるが…もともと、フェンリルが森に現れたと聞き、大多数の騎士が森へ向かったのだ。邸に残っている騎士は少なかった。それでも、流石はどちらの騎士も精鋭部隊。フェンリル相手に少人数でもその場を持ち耐えていた。
それでも、時間の問題である事は分かる。
何でここにフェンリルが居るの?森に行った騎士様達はまだ帰って来ていない。お姉さん達も。皆…無事だよね?
「薬師殿!早くここから遠くへ逃げてくれ!」
騎士様がフェンリルを相手にしながら叫ぶ。逃げなければと思うのに、足が動かない。
魔法使いは“チート”だ。何だって出来た。でも、一つだけ、どうしても出来なかった事がある。それが“攻撃魔法”。どうしても、攻撃するイメージが出来なかったのだ。でも…
ーここで私がやれば、皆が助かる?ー
はっはっ…と呼吸が荒くなる…
「薬師殿!!」
再度呼ばれてハッとする。
アイスブルーの瞳と目が合った
フェンリルの口がニタリと嗤った様に見えた瞬間、私の方に飛び掛かって来た。
「──っ!!」
もう駄目だ!と目をギュッと瞑った時、後ろから誰かに抱き抱えられた。
「後は、様子を診ながら治療を続けますが…グレン様次第かと…」
ーもう、打てる手は無いー
と言う事だ。
「皆、少しの間、下がってもらえるか?」
シルヴィア様がそう言うと、部屋に居た薬師、魔導師、メイド達が部屋から出て行った。
「…それで?ハル殿、人払いはしたが…私にお願いとは?」
皆が部屋から出て行った事を確認すると、シルヴィア様はグレン様の手を握り締め、グレン様の顔を見ながら私に問い掛けてきた。
「パルヴァン様は、もう自力で飲む事が出来ないと思うので…このポーションを…その…シルヴィア様がグレン様に…」
「あぁ…口移しで飲ませろと…言うことか?」
私がコクコクと首肯すると、シルヴィア様は薄く笑いながら、私の手からポーションを取る。
そして、何の迷いも無く一気に自身の口に流し入れ、そのままパルヴァン様に口付けた。
パルヴァン様の反応も弱いのだろう。ゆっくりと、時間を掛けながら流し込んでいるようだ。
私はその邪魔にならないように、シルヴィア様とは反対側に回り込み、パルヴァン様の胸元にそっと手を乗せる。
息苦しそうなのが見ていて辛いので、先に肺を治そうと思ったのだ。シルヴィア様にも気付かれないように、カモフラージュとして、ポーションをパルヴァン様に掛けるのと同時に、ヒーリングの魔法を掛ける。
本当に“魔法使い”だなと思う。怪我の具合が手に取るように分かるし、それをキレイに治すイメージをすると、それが治っていくのだ。
よし、これで肺は大丈夫だ。次は頭だよね、シルヴィア様も、飲ませ終えたようだ。
「ハル殿…このポーションは…」
「私が…作った物で、もしもの時の為に、何本か持っていたんです。気にしないで下さい。」
そう言うと、目を見開いたまま私見詰めて来た。
「パルヴァン様は、私が必ず助けますから。」
ニコリと笑いながら言うと
「─っ…ありが…とう…っ…」
シルヴィア様は、握り締めていたパルヴァン様の手を自身口元に引き寄せ涙を流した。
その姿は、とても綺麗だった──
どれくらい経っただろうか?頭の傷と右腕の傷は、まだ痛々しい感じで残ってはいるが、もう危険な状態は脱していた。
目に見える傷まで一気に治すと、色々ヤバいだろうと思って、見えない傷を先に治したのだ。見えない傷の方が命に関わる程だったし…。
「ふぅー…」
魔法使いの魔力は無限と言っても、使い続けると疲れるのは疲れる。シルヴィア様は、パルヴァン様が助かると分かり気が緩んだのか、パルヴァン様の手を握ったままベッドに突っ伏して寝てしまっている。
森からまだ誰も帰って来ていないのだろうか?ダルシニアン様も慌てて引き返す程だ…フェンリルはとても強いんだろう。冗談ではなく、そんな強い魔獣が乙女ゲームに出て来るなんて…驚きだけど。乙女ゲームの定番は、“もふもふ”じゃなかったの?日本に還ったら、ラノベを読んでみようかな…。何て呑気に思っていた時
身体中にピリピリと刺さるような何かを感じた。
ー何?ー
それから、足下からゾワリと嫌な感覚が広がってくる。
一体何が起こっているのか分からない。分からないけど、ここには無防備なパルヴァン様とシルヴィア様が居る。私はそっとパルヴァン様の部屋から出て、部屋全体に結界を張り(カモフラージュに魔石を置き)、嫌な感じがする方へと足を向けた。
どうやら、パルヴァン様の部屋周辺に、防音防御の結界が張られていたようで、パルヴァン様の部屋から離れるにつれて、階下のざわめきが鮮明になる。それと比例して、身体中に不快感が増して行く。震え出す足を何とか前に出し、1階へと降りていくと──
「薬師殿!こっちへ来ては駄目だ!」
先程話をしていた騎士様が私に気付き、大声を上げる。
ヒユッと息を呑む。カタカタと体中が震え出す。
目の前に現れたのは…フェンリルだった
私の想像していたものより遥かに大きい。瞳はアイスブルーなのに、怒りの色を灯しているのが分かる。白銀の毛は所々血で赤く染まっている。そして、その首と手足には枷の様な物が付いている。
そのフェンリルの周りを、邸に居残っていた騎士様達と、パルヴァンの騎士様達で取り囲んでいるが…もともと、フェンリルが森に現れたと聞き、大多数の騎士が森へ向かったのだ。邸に残っている騎士は少なかった。それでも、流石はどちらの騎士も精鋭部隊。フェンリル相手に少人数でもその場を持ち耐えていた。
それでも、時間の問題である事は分かる。
何でここにフェンリルが居るの?森に行った騎士様達はまだ帰って来ていない。お姉さん達も。皆…無事だよね?
「薬師殿!早くここから遠くへ逃げてくれ!」
騎士様がフェンリルを相手にしながら叫ぶ。逃げなければと思うのに、足が動かない。
魔法使いは“チート”だ。何だって出来た。でも、一つだけ、どうしても出来なかった事がある。それが“攻撃魔法”。どうしても、攻撃するイメージが出来なかったのだ。でも…
ーここで私がやれば、皆が助かる?ー
はっはっ…と呼吸が荒くなる…
「薬師殿!!」
再度呼ばれてハッとする。
アイスブルーの瞳と目が合った
フェンリルの口がニタリと嗤った様に見えた瞬間、私の方に飛び掛かって来た。
「──っ!!」
もう駄目だ!と目をギュッと瞑った時、後ろから誰かに抱き抱えられた。
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