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第三章ーパルヴァン辺境地ー
疑問
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「では、ハル様、今日から6日間は別邸での生活になります。」
いよいよ、明日、王太子様御一行が来ると言う日に、パルヴァン邸の執事であるゼンさんが、私を別邸へと案内してくれた。
「分かりました。それで…ルナさんとリディさんも、別邸に来てくれるんですか?」
「勿論です。今は、ハル様の荷物などの整理と移動をしていてここには居ませんが、別邸でも今まで通り、ハル様の身の回りのお世話はあの2人がいたします。」
ゼンさんが、ニッコリと笑ってくれる。
パルヴァン邸の執事、ゼンさん。パルヴァン様とは違い、ダンディーなおじ様だ。
ルナさんもリディさんもそうなんだけど、私がパルヴァン様の命の恩人という事で、“様”を付けて名前を呼んで来る。ただの平民で薬師なだけなので、“様”は要らないし、敬語も要らない!と断ったんだけど…最後には…
「パルヴァン様の恩人に敬語無しなんて無理ですっっ!!」
と、泣かれたから諦めた…。
パルヴァン様は、この邸の人達に愛されてるんだなぁ…と思った。
そう言えば…ルナさんが言ってた『勝ち抜いて来た』って、一体どう言う事だったんだろう?また今度訊いてみよう。
とにかく…明日だ…。明日からは、全力で別邸に引き籠ります!!
*****
「王太子殿下、ようこそおいで下さいました。」
「あぁ、パルヴァン辺境伯、出迎えありがとう。」
王太子様御一行がパルヴァン邸に到着したのは、予定日のお昼過ぎだった。お昼は食べたと先触れで知っていた為、サロンにお茶と軽食とデザートを用意していた。
「サロンで軽く食べてゆっくりして下さい。」
「丁度小腹が空いていたから、ありがたく頂きます。」
そう言って、王太子様と宰相様とダルシニアン様とカルザイン様がサロンへと入って行った。
それから少し落ち着いた頃、そのままサロンでこの1年の森の状態を説明する事になった。
「1年経っても…穢れが出て無いんだな?」
「そうですね。本当に…浄化が終わったのは昨日だったか?と思う程、未だに空気が清んでいますな。」
「…流石…だな…」
やっぱりあの3人の聖女様達は、歴代トップクラスだったんだと思い知らされる。何故かクレイルが若干ひいているが、気にしない。
「この1年で、何か変わった事とか気になった事は?」
「いえー…特にはありませんな。魔獣が出なくなって平和ボケしそうな位ですな。はははっ。」
この目の前に居るのはパルヴァン辺境伯。パルヴァン殿も、瀕死の状態に陥ったと聞いていたが…何の後遺症もなく、今も元気な現役だ。
「パルヴァンには、余程腕の良い魔導師か、薬師がいるのだろうか?」
ランバルトのふとした質問に、パルヴァンは何食わぬ顔で反応する
「何故、その様な事を?」
「いや…パルヴァン殿が、瀕死の状態にまでなったのにも関わらず、後遺症もなく今でも現役でいる事が凄いなと思ってね。それが、パルヴァン殿を治療した魔導師か薬師のお蔭ならば、余程腕の良い者なんだろうと思ったんだが。」
「成る程。今回の事に関しては…我が邸にたまたま質の良いポーションがありましてな。そのお陰だったんですよ。まぁ、我が邸付きの魔導師も薬師も、どちらも腕が良いのは確かですが。」
何だろう?『これ以上は聞くな』と言われている様な…気のせいか?チラリと、クレイルとエディオルに視線を向ける。2人ともが軽く首を振っている。2人もよく知らないようだ。
「ところで…」
その時、今まで黙って座っていたパルヴァン夫人ーシルヴィア殿が口を開いた。
「聖女様達4人が還ってから1年経ったと言う事で、王太子殿下もそろそろ婚約者をーと聞きましたが…もうお決まりですか?」
「ははっ。その話は、ここにまで届いているんだな。まだ決まっていないよ。この視察が終わってから選定に入るんだ。」
「おやおや。それでは、王太子殿下もようやく立ち直れたと言う事ですかな?」
「…何故パルヴァン殿が知っている!?」
「何故も何も…殿下があの夜会でミヤ様を離さず、2曲連続でダンスをしたからですよ。社交界で知らぬ者はいないと思いますよ。」
と、こちらも今まで黙っていたハンフォルト宰相が口を開いた。
「…薬師殿…ハル…殿だったかな?彼女も夜会でダンスを?」
パルヴァン夫人の問い掛けに、微かにだが、クレイルとエディオルが反応した。
「いえ、ハル殿はきらびやかな夜会は苦手だと言って…参加しなかったんですよ。ハル殿は…最後まで謙虚な方でしたね。今までのお礼にと言って、私のようなおじさんにまでクッキーを頂きました。今頃は…元の世界で元気にやっているんでしょうかね?」
優しい顔でそう語るハンフォルト宰相を、パルヴァンとシルヴィアは複雑な心境で見遣る。
ーハルがこの世界に居る。還れなかった事を知っているのかいないのかー
2人とも疑問に思っていた。だから、今回の視察で王太子殿下が来ると分かった時、言い機会だと思ったのだ。
そして、王太子殿下や宰相の態度、反応からして、どうやら本当にハルがこの世界に居る事を知らないようだと確信したのだった。
いよいよ、明日、王太子様御一行が来ると言う日に、パルヴァン邸の執事であるゼンさんが、私を別邸へと案内してくれた。
「分かりました。それで…ルナさんとリディさんも、別邸に来てくれるんですか?」
「勿論です。今は、ハル様の荷物などの整理と移動をしていてここには居ませんが、別邸でも今まで通り、ハル様の身の回りのお世話はあの2人がいたします。」
ゼンさんが、ニッコリと笑ってくれる。
パルヴァン邸の執事、ゼンさん。パルヴァン様とは違い、ダンディーなおじ様だ。
ルナさんもリディさんもそうなんだけど、私がパルヴァン様の命の恩人という事で、“様”を付けて名前を呼んで来る。ただの平民で薬師なだけなので、“様”は要らないし、敬語も要らない!と断ったんだけど…最後には…
「パルヴァン様の恩人に敬語無しなんて無理ですっっ!!」
と、泣かれたから諦めた…。
パルヴァン様は、この邸の人達に愛されてるんだなぁ…と思った。
そう言えば…ルナさんが言ってた『勝ち抜いて来た』って、一体どう言う事だったんだろう?また今度訊いてみよう。
とにかく…明日だ…。明日からは、全力で別邸に引き籠ります!!
*****
「王太子殿下、ようこそおいで下さいました。」
「あぁ、パルヴァン辺境伯、出迎えありがとう。」
王太子様御一行がパルヴァン邸に到着したのは、予定日のお昼過ぎだった。お昼は食べたと先触れで知っていた為、サロンにお茶と軽食とデザートを用意していた。
「サロンで軽く食べてゆっくりして下さい。」
「丁度小腹が空いていたから、ありがたく頂きます。」
そう言って、王太子様と宰相様とダルシニアン様とカルザイン様がサロンへと入って行った。
それから少し落ち着いた頃、そのままサロンでこの1年の森の状態を説明する事になった。
「1年経っても…穢れが出て無いんだな?」
「そうですね。本当に…浄化が終わったのは昨日だったか?と思う程、未だに空気が清んでいますな。」
「…流石…だな…」
やっぱりあの3人の聖女様達は、歴代トップクラスだったんだと思い知らされる。何故かクレイルが若干ひいているが、気にしない。
「この1年で、何か変わった事とか気になった事は?」
「いえー…特にはありませんな。魔獣が出なくなって平和ボケしそうな位ですな。はははっ。」
この目の前に居るのはパルヴァン辺境伯。パルヴァン殿も、瀕死の状態に陥ったと聞いていたが…何の後遺症もなく、今も元気な現役だ。
「パルヴァンには、余程腕の良い魔導師か、薬師がいるのだろうか?」
ランバルトのふとした質問に、パルヴァンは何食わぬ顔で反応する
「何故、その様な事を?」
「いや…パルヴァン殿が、瀕死の状態にまでなったのにも関わらず、後遺症もなく今でも現役でいる事が凄いなと思ってね。それが、パルヴァン殿を治療した魔導師か薬師のお蔭ならば、余程腕の良い者なんだろうと思ったんだが。」
「成る程。今回の事に関しては…我が邸にたまたま質の良いポーションがありましてな。そのお陰だったんですよ。まぁ、我が邸付きの魔導師も薬師も、どちらも腕が良いのは確かですが。」
何だろう?『これ以上は聞くな』と言われている様な…気のせいか?チラリと、クレイルとエディオルに視線を向ける。2人ともが軽く首を振っている。2人もよく知らないようだ。
「ところで…」
その時、今まで黙って座っていたパルヴァン夫人ーシルヴィア殿が口を開いた。
「聖女様達4人が還ってから1年経ったと言う事で、王太子殿下もそろそろ婚約者をーと聞きましたが…もうお決まりですか?」
「ははっ。その話は、ここにまで届いているんだな。まだ決まっていないよ。この視察が終わってから選定に入るんだ。」
「おやおや。それでは、王太子殿下もようやく立ち直れたと言う事ですかな?」
「…何故パルヴァン殿が知っている!?」
「何故も何も…殿下があの夜会でミヤ様を離さず、2曲連続でダンスをしたからですよ。社交界で知らぬ者はいないと思いますよ。」
と、こちらも今まで黙っていたハンフォルト宰相が口を開いた。
「…薬師殿…ハル…殿だったかな?彼女も夜会でダンスを?」
パルヴァン夫人の問い掛けに、微かにだが、クレイルとエディオルが反応した。
「いえ、ハル殿はきらびやかな夜会は苦手だと言って…参加しなかったんですよ。ハル殿は…最後まで謙虚な方でしたね。今までのお礼にと言って、私のようなおじさんにまでクッキーを頂きました。今頃は…元の世界で元気にやっているんでしょうかね?」
優しい顔でそう語るハンフォルト宰相を、パルヴァンとシルヴィアは複雑な心境で見遣る。
ーハルがこの世界に居る。還れなかった事を知っているのかいないのかー
2人とも疑問に思っていた。だから、今回の視察で王太子殿下が来ると分かった時、言い機会だと思ったのだ。
そして、王太子殿下や宰相の態度、反応からして、どうやら本当にハルがこの世界に居る事を知らないようだと確信したのだった。
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