56 / 203
第三章ーパルヴァン辺境地ー
エディオル=カルザイン②
しおりを挟む
*本日は、2話投稿予定です*
彼女は、浄化の旅に同行する為にと薬師の資格をとった。こんな短期間でと驚いた。その事で旅の同行メンバーが追加される事になった。同行するメンバーは、どんな職の者でも多少は戦える者を選んでいるのだが、彼女はそうではないだろう。本来なら、薬師の資格だけでは同行はできないが、同郷の聖女様達と2~3年離れるのもどうか…虐めの件もあり、魔導師のクレイルと騎士である俺が同行する事で彼女の同行の許可がおりたのだ。その事は、俺とクレイルだけしか知らされていなかった。
旅が始まってすぐ、クレイルは彼女に声を掛けたようで、よく彼女と話をしているところを見掛けた。
『エディオルも素直になれば良いのに』
と、クレイルには旅中ずっと言われたが…。
『確かに。アレは、絶対悪い事が出来ないタイプだな。さっきの困った様なはにかんだ笑顔は…可愛かった…』
『“癒し”を見付けた気がする…』
『『『『…分かるわー!』』』』
5人の騎士達が、彼女の話をしていた。
“癒し”何となく分かるが…しかし…と思っていると
『これからどんどん穢れが増えて、魔獣も増えて来るだろうから、“心が疲れた”何て言わずに頑張ってもらうからね?』
とクレイルが、あの笑顔で騎士達に圧を掛けた。そう、クレイルも、少なからず彼女の事を気に入っているようだった。
『はぁー…お前も大概拗らせてるよね。でも、そんなままだと…誤解されたままだよ?良いの?』
良いも何も…彼女はこの旅が終われば還ってしまうのだ。この世界からいなくなるのに、どうしろと言うのか…。グッと手を握り締める。
クレイルが呆れた様に何か言っていたが、俺は自分を誤魔化して答えただけだった。
ー聖女様達は…本当に凄かったー
パルヴァンの森に入っても、その勢いは止まらなかった。流石に、森の奥迄来ると聖女様達の力だけでは祓えない魔獣も出て来た。が、それは「待ってました!」と言わんばかりに、同行の騎士達が張り切って討伐した。俺もクレイルも、殆ど後ろから見守る感じだった。
そして、油断した─。
急に現れた…フェンリル。
咄嗟にグレン様に庇われて、グレン様が大怪我を負ってしまった。そこから騎士達全員でフェンリルの足止めをしつつ、クレイルが拘束の魔法陣を展開する準備を始めた。怒りを露にするフェンリルだが、殺気が無い。何とも言えない違和感を感じていると、ふと、フェンリルの動きが止まった。
ー今だ!ー
と思った瞬間、フェンリルがパルヴァン邸の方へと飛んで行ってしまった。
ーパルヴァン邸には彼女が居るー
そう思ったら、全速力でパルヴァン邸へと走り出していた。
『薬師殿!早くここから遠くへ逃げてくれ!』
パルヴァン邸に足を踏み入れた瞬間、そう叫ぶ声が聞こえて、心臓がドクリッと波打った。それでも足を止めず走り抜けると、フェンリルと対峙している彼女の姿が目に入った。
フェンリルがニタリと嗤って彼女に飛び掛かかる前に、俺は彼女の後ろから左腕を回して抱き寄せて、そのまま後方へと飛び下がった。
俺の腕の中に彼女が居る。目の前にフェンリルが居て、危機的な状況であるにも関わらず、微かに喜びが沸き上がる。それでも、フェンリルから視線を外さず彼女に問い掛ける。大丈夫かと訊けば、大丈夫だと。ありがとうと。
動けるかどうか訊くと、それは分からないと言う。ならば──
『…では、このまま、もう少し辛抱してくれ。』
そう言って、より一層強く彼女を抱き込んだ。
俺の片腕にスッポリ収まる彼女。
ーずっとこのまま一緒に居る事ができたらいいのにー
場違いな事を考えていると、フェンリルの足元で魔法陣が発動した。
無事にクレイルが魔術でフェンリルを拘束し、フェンリルはおとなしくなった。
聖女様達や騎士は大丈夫かと訊かれ、大丈夫だと答えると、彼女は…何とも言えない…ふにゃっとした顔で笑った─その顔が…何と言うか…グッと来て…。クレイルと2人で固まってしまった。
それから、先に立ち直ったクレイルに突っ込まれて、慌てて俺の腕を彼女から離すと、彼女はその場にへたり込んでしまった。
『す…すみません…その…足に力が入らなくて…こんな大きな…魔獣なんて…私の世界には…居なくて…』
泣くのを我慢するかのように、震える体にぐっと力を入れる彼女。
抱き締めたいとか、俺の腕の中で泣けば良いのにとか…そんな思いに蓋をする。
すると、そんな俺を呆れた顔で見た後、クレイルが溜め息をつき、一言謝ってから彼女を抱き上げた。
彼女は顔を真っ赤にして抵抗して、それを笑うクレイル。そんな2人を、ただ横で見ている事しかできなかった。
彼女は、浄化の旅に同行する為にと薬師の資格をとった。こんな短期間でと驚いた。その事で旅の同行メンバーが追加される事になった。同行するメンバーは、どんな職の者でも多少は戦える者を選んでいるのだが、彼女はそうではないだろう。本来なら、薬師の資格だけでは同行はできないが、同郷の聖女様達と2~3年離れるのもどうか…虐めの件もあり、魔導師のクレイルと騎士である俺が同行する事で彼女の同行の許可がおりたのだ。その事は、俺とクレイルだけしか知らされていなかった。
旅が始まってすぐ、クレイルは彼女に声を掛けたようで、よく彼女と話をしているところを見掛けた。
『エディオルも素直になれば良いのに』
と、クレイルには旅中ずっと言われたが…。
『確かに。アレは、絶対悪い事が出来ないタイプだな。さっきの困った様なはにかんだ笑顔は…可愛かった…』
『“癒し”を見付けた気がする…』
『『『『…分かるわー!』』』』
5人の騎士達が、彼女の話をしていた。
“癒し”何となく分かるが…しかし…と思っていると
『これからどんどん穢れが増えて、魔獣も増えて来るだろうから、“心が疲れた”何て言わずに頑張ってもらうからね?』
とクレイルが、あの笑顔で騎士達に圧を掛けた。そう、クレイルも、少なからず彼女の事を気に入っているようだった。
『はぁー…お前も大概拗らせてるよね。でも、そんなままだと…誤解されたままだよ?良いの?』
良いも何も…彼女はこの旅が終われば還ってしまうのだ。この世界からいなくなるのに、どうしろと言うのか…。グッと手を握り締める。
クレイルが呆れた様に何か言っていたが、俺は自分を誤魔化して答えただけだった。
ー聖女様達は…本当に凄かったー
パルヴァンの森に入っても、その勢いは止まらなかった。流石に、森の奥迄来ると聖女様達の力だけでは祓えない魔獣も出て来た。が、それは「待ってました!」と言わんばかりに、同行の騎士達が張り切って討伐した。俺もクレイルも、殆ど後ろから見守る感じだった。
そして、油断した─。
急に現れた…フェンリル。
咄嗟にグレン様に庇われて、グレン様が大怪我を負ってしまった。そこから騎士達全員でフェンリルの足止めをしつつ、クレイルが拘束の魔法陣を展開する準備を始めた。怒りを露にするフェンリルだが、殺気が無い。何とも言えない違和感を感じていると、ふと、フェンリルの動きが止まった。
ー今だ!ー
と思った瞬間、フェンリルがパルヴァン邸の方へと飛んで行ってしまった。
ーパルヴァン邸には彼女が居るー
そう思ったら、全速力でパルヴァン邸へと走り出していた。
『薬師殿!早くここから遠くへ逃げてくれ!』
パルヴァン邸に足を踏み入れた瞬間、そう叫ぶ声が聞こえて、心臓がドクリッと波打った。それでも足を止めず走り抜けると、フェンリルと対峙している彼女の姿が目に入った。
フェンリルがニタリと嗤って彼女に飛び掛かかる前に、俺は彼女の後ろから左腕を回して抱き寄せて、そのまま後方へと飛び下がった。
俺の腕の中に彼女が居る。目の前にフェンリルが居て、危機的な状況であるにも関わらず、微かに喜びが沸き上がる。それでも、フェンリルから視線を外さず彼女に問い掛ける。大丈夫かと訊けば、大丈夫だと。ありがとうと。
動けるかどうか訊くと、それは分からないと言う。ならば──
『…では、このまま、もう少し辛抱してくれ。』
そう言って、より一層強く彼女を抱き込んだ。
俺の片腕にスッポリ収まる彼女。
ーずっとこのまま一緒に居る事ができたらいいのにー
場違いな事を考えていると、フェンリルの足元で魔法陣が発動した。
無事にクレイルが魔術でフェンリルを拘束し、フェンリルはおとなしくなった。
聖女様達や騎士は大丈夫かと訊かれ、大丈夫だと答えると、彼女は…何とも言えない…ふにゃっとした顔で笑った─その顔が…何と言うか…グッと来て…。クレイルと2人で固まってしまった。
それから、先に立ち直ったクレイルに突っ込まれて、慌てて俺の腕を彼女から離すと、彼女はその場にへたり込んでしまった。
『す…すみません…その…足に力が入らなくて…こんな大きな…魔獣なんて…私の世界には…居なくて…』
泣くのを我慢するかのように、震える体にぐっと力を入れる彼女。
抱き締めたいとか、俺の腕の中で泣けば良いのにとか…そんな思いに蓋をする。
すると、そんな俺を呆れた顔で見た後、クレイルが溜め息をつき、一言謝ってから彼女を抱き上げた。
彼女は顔を真っ赤にして抵抗して、それを笑うクレイル。そんな2人を、ただ横で見ている事しかできなかった。
240
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる