巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

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第三章ーパルヴァン辺境地ー

エディオル=カルザイン②

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*本日は、2話投稿予定です*









彼女は、浄化の旅に同行する為にと薬師の資格をとった。こんな短期間でと驚いた。その事で旅の同行メンバーが追加される事になった。同行するメンバーは、どんな職の者でも多少は戦える者を選んでいるのだが、彼女はそうではないだろう。本来なら、薬師の資格だけでは同行はできないが、同郷の聖女様達と2~3年離れるのもどうか…虐めの件もあり、魔導師のクレイルと騎士である俺が同行する事で彼女の同行の許可がおりたのだ。その事は、俺とクレイルだけしか知らされていなかった。




旅が始まってすぐ、クレイルは彼女に声を掛けたようで、よく彼女と話をしているところを見掛けた。

『エディオルも素直になれば良いのに』

と、クレイルには旅中ずっと言われたが…。






『確かに。アレは、絶対悪い事が出来ないタイプだな。さっきの困った様なはにかんだ笑顔は…可愛かった…』

『“癒し”を見付けた気がする…』

『『『『…分かるわー!』』』』

5人の騎士達が、彼女の話をしていた。
“癒し”何となく分かるが…しかし…と思っていると

『これからどんどん穢れが増えて、魔獣も増えて来るだろうから、“心が疲れた”何て言わずに頑張ってもらうからね?』

とクレイルが、笑顔で騎士達に圧を掛けた。そう、クレイルも、少なからず彼女の事を気に入っているようだった。


『はぁー…お前も大概拗らせてるよね。でも、そんなままだと…誤解されたままだよ?良いの?』

良いも何も…彼女はこの旅が終われば還ってしまうのだ。この世界からいなくなるのに、どうしろと言うのか…。グッと手を握り締める。
クレイルが呆れた様に何か言っていたが、俺は自分を誤魔化して答えただけだった。








ー聖女様達は…本当に凄かったー

パルヴァンの森に入っても、その勢いは止まらなかった。流石に、森の奥迄来ると聖女様達の力だけでは祓えない魔獣も出て来た。が、それは「待ってました!」と言わんばかりに、同行の騎士達が張り切って討伐した。俺もクレイルも、殆ど後ろから見守る感じだった。

そして、油断した─。

急に現れた…フェンリル。

咄嗟にグレン様に庇われて、グレン様が大怪我を負ってしまった。そこから騎士達全員でフェンリルの足止めをしつつ、クレイルが拘束の魔法陣を展開する準備を始めた。怒りを露にするフェンリルだが、殺気が無い。何とも言えない違和感を感じていると、ふと、フェンリルの動きが止まった。

ー今だ!ー

と思った瞬間、フェンリルがパルヴァン邸の方へと飛んで行ってしまった。

ーパルヴァン邸には彼女が居るー

そう思ったら、全速力でパルヴァン邸へと走り出していた。





『薬師殿!早くここから遠くへ逃げてくれ!』

パルヴァン邸に足を踏み入れた瞬間、そう叫ぶ声が聞こえて、心臓がドクリッと波打った。それでも足を止めず走り抜けると、フェンリルと対峙している彼女の姿が目に入った。
フェンリルがニタリと嗤って彼女に飛び掛かかる前に、俺は彼女の後ろから左腕を回して抱き寄せて、そのまま後方へと飛び下がった。

俺の腕の中に彼女が居る。目の前にフェンリルが居て、危機的な状況であるにも関わらず、微かに喜びが沸き上がる。それでも、フェンリルから視線を外さず彼女に問い掛ける。大丈夫かと訊けば、大丈夫だと。ありがとうと。

動けるかどうか訊くと、それは分からないと言う。ならば──

『…では、このまま、もう少し辛抱してくれ。』

そう言って、より一層強く彼女を抱き込んだ。

俺の片腕にスッポリ収まる彼女。


ーずっとこのまま一緒に居る事ができたらいいのにー


場違いな事を考えていると、フェンリルの足元で魔法陣が発動した。



無事にクレイルが魔術でフェンリルを拘束し、フェンリルはおとなしくなった。

聖女様達や騎士は大丈夫かと訊かれ、大丈夫だと答えると、彼女は…何とも言えない…ふにゃっとした顔で笑った─その顔が…何と言うか…グッと来て…。クレイルと2人で固まってしまった。

それから、先に立ち直ったクレイルに突っ込まれて、慌てて俺の腕を彼女から離すと、彼女はその場にへたり込んでしまった。


『す…すみません…その…足に力が入らなくて…こんな大きな…魔獣なんて…私の世界には…居なくて…』

泣くのを我慢するかのように、震える体にぐっと力を入れる彼女。

抱き締めたいとか、俺の腕の中で泣けば良いのにとか…そんな思いに蓋をする。
すると、そんな俺を呆れた顔で見た後、クレイルが溜め息をつき、一言謝ってから彼女を抱き上げた。

彼女は顔を真っ赤にして抵抗して、それを笑うクレイル。そんな2人を、ただ横で見ている事しかできなかった。






    
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