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第三章ーパルヴァン辺境地ー

エディオル=カルザイン③

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*本日、2話目です*








フェンリル出現以降、聖女様達の浄化の勢いが更に増した。もう、聖女の域を越えてないか?と思う位に。

そして、聖女様達は…たった1ヶ月でパルヴァンの森を完璧に浄化仕切ったのだ。
魔導師のクレイルの顔が引き攣っているのを初めて見た。余程、凄い事なんだろう。



そして、パルヴァン辺境地を出立し、王都への帰路に就いた。帰りは一週間掛けて帰る。所謂聖女様達との交流をはかる為の旅だ。同行した騎士達は、ようやくと言った感じで毎日聖女様達を取り囲んでいた。

彼女は…基本、同じ薬師のミリリーナ殿と一緒に居るようだった。でも、ある日から、ある1人の騎士と一緒に居る事が多くなった。

あれは確か…第一騎士団所属のステファン=オーブリーだったか。『癒しを見付けた』 と言っていた騎士達の1人だった。

『そんなに気になるなら、エディオルもハル殿に話し掛ければ?』

と、クレイルが言って来るが無視をする。
彼女は、帰城すれば後は還るだけ。フェンリルの一件で、彼女には思わずも近付いてしまったが、これ以上近付けば…彼女を離したくなくなってしまう。距離を…置かなければ…と、自分に言い聞かせた。






王城に着き、馬車から王城入り口まで、聖女様達をエスコートする。いつもはそのまま王城に入るのだが、聖女様達が彼女を待ちたいと言い、その場で待つ事になった。

すると、ステファン=オーブリーが、彼女をエスコートするのが見えた。


『本当に、ハルちゃんの笑顔って可愛いよね。』

『だね。最初の頃は心配だったけど…これなら、大丈夫なんじゃないかな?』

ハッとした。彼女は還ったら、誰かと…恋をするのかと…。それが俺ではないのだと…。







彼女は、やはり最後の夜会にも参加しないらしい。ならば、もう還る日迄会う事はないだろう。

『私とエディオルの2人からって事で、ハル殿に何かお礼のアクセサリーでもプレゼントしないか?』

とクレイルに言われて、日にちもあまりなかったので、2人で急いで王都にある店に行った。
俺の色の青とクレイルの色の赤の石を選び、彼女が好きなかすみ草の形に加工してもらい、それをクレイルに託した。



彼女達が還る数日前、王城内を歩いていると、サエラ殿が1人立って居るのを見掛け、思わず声を掛けてしまった。

『サエラ殿、こんな所で何を─…』

サエラ殿の視線の先を見遣ると、ステファン=オーブリーが、彼女に何かを渡しているのが見えた。そして、何か言葉を交わした後、彼女はフワリと花が綻ぶ様に笑った。そして…ステファン=オーブリーは、そんな彼女の手をとりキスをするとそのまま踵を返して走り去った。

『カルザイン様は…このままで良いのですか?』

と、サエラ殿に言われたが、何も答えられなかった。







彼女達が還る日は雨だった。

イリスに『最後なんだから、ハル殿をエスコートしたら?』

と言われたが、俺はそれを固辞してフジ様をエスコートして、彼女はクレイルがエスコートをした。

召喚の間に着くと、彼女達は俺達には分からない言葉─彼女達の世界の言葉で話し出した為に、誰1人その中に入る事ができなかった。

ーあぁ…本当に、これで彼女とは縁が切れてしまうのかー

『準備が整いました。』

魔導師の1人がそう声をあげると、彼女達4人はお互いに手を繋ぎ合った。そして、魔法陣が展開、発動して、辺り一面が光り輝き出す。あまりにも眩しい光で、もう既に彼女の姿は見えなくなっていた。
暫く光輝いた後、その光が一気に上昇して弾けて光が収まっていく。そして、光が収まった後…もう、そこには誰も居なかった。そこには、六つの加工された魔石が散らばっていただけだった。












王城に帰ると、サエラ殿が俺の帰りを待っていた。

『このショール、カルザイン様の物ですね?』

そう言って渡されたのは、いつだったか、彼女が図書館で寝てしまっているのを見付け、彼女に掛けた俺のショールだった。

『ハル様は、お礼を言いたいと、この持ち主を探していましたが…カルザイン様は知られたくないだろうと思いまして…。昨日、持ち主が分かったら、その人に渡して欲しいと、預かっておりました。』

そのショールを受けとる。

『そして、こちらがお礼として預かった物です。食べ物だと日持ちがしないからと言う事で、これにしたと言っておりました。』

そのお礼も受け取ると、サエラ殿は失礼しますと言って去って行った。




王城にある自室に戻り、“お礼”の入った袋を開ける。

そこには、ショールと同じ青色のハンカチと

ーありがとうございましたー

と書かれたカードが入っていた。




彼女に近付く事もできなかった。名前さえ…呼べなかった。名前を呼べば更に愛おしさが増してしまいそうだったから。
でも、彼女は、無事に還った。今頃は、きっと、4人で喜んでいるだろう。

ーこれで、良かったんだー





そう思っていた。

そう信じていたのにー。





パルヴァン辺境地の視察が終わり、いざ王都へと騎乗し歩みを進めた時、何故かザワリと胸がざわついた。

ー何だ?ー

と思い、視線を動かし周辺を確認する。


そして、と目が合った。



ドクンッと心臓が反応する。



ー何故…何故…がここに居る!?ー



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