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第三章ーパルヴァン辺境地ー
エディオル=カルザイン④
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*本日は、2話投稿予定です*
ー何故!?ー
叫びそうになる。彼女の元に駆け出しそうになる。
それでもそのまま前に進んで行く。
彼女まで少し距離があった。瞳の色と髪の色が違ったけど…あれは彼女だ。
初めて気になって、初めて好きになった人。初めて愛おしいと思った人。きっと、彼女にしか、俺の心は動かされない。
前に進んで、もう彼女が見えなくなった。振り返りたいのをグッと我慢する。手綱を握る手に、必要以上に力が入った。
ー振り向くな…今は前を…前だけを見ろー
自分にそう言い聞かせた。
『何だ?って…お前、大丈夫か?疲れているなら、もう部屋に下がって休んで良いぞ?』
帰路に就いて2日目の宿泊場である、王家所有の離宮でランバルトとクレイルと3人で寛いでいる時に、ランバルトにそう言われて、そのまま自分に充てがわれた部屋に下がった。
疲れてはいなかったが、どうしても1人になりたかったのだ。
ーどうして、彼女がこの世界に居るのかー
あれ程還りたいと言っていたのに。還れる事を喜んでいたのに。
それに、あの容姿は…。どっちが本当の彼女なんだ?
聖女様達が言っていた。自分の世界には魔法や魔術は無い。その代わりに“科学”と言う物が発達していると。この世界では有り得ない事が自分の世界にはあるし、逆に自分の世界では有り得ない事がここにはあったりすると。
髪の色は薬草でも魔術でも変えられたりする。
では…瞳の色は?思い出せ…彼女の瞳は、本当は何色だった?眼鏡越しに見た瞳は茶色っぽい黒だった。
『還れる…よね?』
と、眼鏡を外して囁いた彼女の瞳は…何色だった?あの日は月が綺麗で、星も輝いていて、彼女をキラキラと照らしていて…夜なのに彼女の顔がよく見えて…
ふと、左耳に着けているピアスに手をやる。
黒色と…水色の魔石。
「…水…色…」
不思議だった。聖女様達も彼女も黒色なのに、何故水色の魔石と組んでいるのか…。
ーやっぱり…あれは彼女だー
彼女が、まだこの世界に居る。喜びが溢れる前に不安が広がった。
還れなかったとして…何故パルヴァンに居るのか。何故王都…王城に来なかったのか。 元の世界に還りたいのなら、王城に来なければ還れないと言う事は知っている筈だ。それなのに…1年もパルヴァンに居るのは…。
『浄化をしている間は、私達は、自分の時が止まるのよ。だから、容姿が全く変わらないのよ!』
と、フジ様が嬉しそうに言っていた。だから、彼女もこの世界に居た3年の間、全く容姿が変わらなかった…が…
「…髪が…長くなって…なかったか?」
1年前の彼女の髪は、肩に届くか届かない位だった。でも、パルヴァン邸で見た彼女の髪は…殆どがフードで隠れていたが、フードからはみ出ていた髪は…胸の辺りまで…なかったか?
何故?何も分からない。
何故王都に…王城に…来ない?いや…
ー行きたくないー
と言う事か──
当たり前か…。彼女にとって、聖女様達が居ない王城には良い思い出が無いだろう。それに、きっと俺も…嫌われてるだろうし…。
「ははっ…」
彼女がこの世界に居るのに、俺は動けない。
彼女達の時間が止まっていると聞いた時、あぁ、本当に俺と彼女の時間が交わる事はないのかと。違う世界の存在なんだと、突き付けられているようだった。
でも──
おそらく、彼女の時間も、この世界で動き出している。ならば…今すぐパルヴァン邸に引き返して、彼女を連れて帰りたい。一緒に時を過ごしたいと思うのに…動けない。
ーきっと、彼女はそれを望んでいないだろうー
王城に来ずパルヴァン辺境地に留まり、今回の視察でも私達に会おうともしなかった。その理由は簡単だ。
俺達には会いたくなかったと言う事だ。
だから、俺は…動かない。
グッと手に力が入る。すぐそこに居るのに。最初に間違えたのは俺だ。嫌われたままで良いと思ったのも俺だ。だから、今は…今回だけは…まだ耐えられる。
でも─
彼女が元の世界に還らずに、この世界で生きていくと言うなら─
次に彼女を見付けたら─
その時は─
きっと俺は─
動く─
ー何故!?ー
叫びそうになる。彼女の元に駆け出しそうになる。
それでもそのまま前に進んで行く。
彼女まで少し距離があった。瞳の色と髪の色が違ったけど…あれは彼女だ。
初めて気になって、初めて好きになった人。初めて愛おしいと思った人。きっと、彼女にしか、俺の心は動かされない。
前に進んで、もう彼女が見えなくなった。振り返りたいのをグッと我慢する。手綱を握る手に、必要以上に力が入った。
ー振り向くな…今は前を…前だけを見ろー
自分にそう言い聞かせた。
『何だ?って…お前、大丈夫か?疲れているなら、もう部屋に下がって休んで良いぞ?』
帰路に就いて2日目の宿泊場である、王家所有の離宮でランバルトとクレイルと3人で寛いでいる時に、ランバルトにそう言われて、そのまま自分に充てがわれた部屋に下がった。
疲れてはいなかったが、どうしても1人になりたかったのだ。
ーどうして、彼女がこの世界に居るのかー
あれ程還りたいと言っていたのに。還れる事を喜んでいたのに。
それに、あの容姿は…。どっちが本当の彼女なんだ?
聖女様達が言っていた。自分の世界には魔法や魔術は無い。その代わりに“科学”と言う物が発達していると。この世界では有り得ない事が自分の世界にはあるし、逆に自分の世界では有り得ない事がここにはあったりすると。
髪の色は薬草でも魔術でも変えられたりする。
では…瞳の色は?思い出せ…彼女の瞳は、本当は何色だった?眼鏡越しに見た瞳は茶色っぽい黒だった。
『還れる…よね?』
と、眼鏡を外して囁いた彼女の瞳は…何色だった?あの日は月が綺麗で、星も輝いていて、彼女をキラキラと照らしていて…夜なのに彼女の顔がよく見えて…
ふと、左耳に着けているピアスに手をやる。
黒色と…水色の魔石。
「…水…色…」
不思議だった。聖女様達も彼女も黒色なのに、何故水色の魔石と組んでいるのか…。
ーやっぱり…あれは彼女だー
彼女が、まだこの世界に居る。喜びが溢れる前に不安が広がった。
還れなかったとして…何故パルヴァンに居るのか。何故王都…王城に来なかったのか。 元の世界に還りたいのなら、王城に来なければ還れないと言う事は知っている筈だ。それなのに…1年もパルヴァンに居るのは…。
『浄化をしている間は、私達は、自分の時が止まるのよ。だから、容姿が全く変わらないのよ!』
と、フジ様が嬉しそうに言っていた。だから、彼女もこの世界に居た3年の間、全く容姿が変わらなかった…が…
「…髪が…長くなって…なかったか?」
1年前の彼女の髪は、肩に届くか届かない位だった。でも、パルヴァン邸で見た彼女の髪は…殆どがフードで隠れていたが、フードからはみ出ていた髪は…胸の辺りまで…なかったか?
何故?何も分からない。
何故王都に…王城に…来ない?いや…
ー行きたくないー
と言う事か──
当たり前か…。彼女にとって、聖女様達が居ない王城には良い思い出が無いだろう。それに、きっと俺も…嫌われてるだろうし…。
「ははっ…」
彼女がこの世界に居るのに、俺は動けない。
彼女達の時間が止まっていると聞いた時、あぁ、本当に俺と彼女の時間が交わる事はないのかと。違う世界の存在なんだと、突き付けられているようだった。
でも──
おそらく、彼女の時間も、この世界で動き出している。ならば…今すぐパルヴァン邸に引き返して、彼女を連れて帰りたい。一緒に時を過ごしたいと思うのに…動けない。
ーきっと、彼女はそれを望んでいないだろうー
王城に来ずパルヴァン辺境地に留まり、今回の視察でも私達に会おうともしなかった。その理由は簡単だ。
俺達には会いたくなかったと言う事だ。
だから、俺は…動かない。
グッと手に力が入る。すぐそこに居るのに。最初に間違えたのは俺だ。嫌われたままで良いと思ったのも俺だ。だから、今は…今回だけは…まだ耐えられる。
でも─
彼女が元の世界に還らずに、この世界で生きていくと言うなら─
次に彼女を見付けたら─
その時は─
きっと俺は─
動く─
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