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第三章ーパルヴァン辺境地ー
新たな聖女
しおりを挟むその女性のステータスを確認したところ、“聖女”とあったらしい。ただ、今、この世界のこの国─ウォーランド王国─では聖女を必要とはしていない。パルヴァンの森だけではなく、この国には未だに何処にも穢れが出ていないのだ。
ーされど聖女様ー
ありがたい存在。尊い存在である事には変わりない。その為、その存在を一般的に公表し、歓迎の夜会も開かれる事になった。その夜会の招待状が一昨日届いた手紙だったのだ。
『ハル殿は…どうしたい?』
「…どうしたいか…ですか…」
「あぁ。容姿だけで言うと、ハル殿と同郷の者かもしれないだろう?ひょっとすれば、知り合いの可能性もある。会うのは嫌でも、見るだけでも…したいのではないかと思ってな。勿論、ハル殿がそれを必要としないのであれば、行かなくて良いんだ。どうする?」
シルヴィア様は少し困った様に。パルヴァン様とレオン様は優しい顔で私を見る。
「もし…見たいと…行きたいと言ったら?」
「その御披露目の夜会は1ヶ月後に行われる。レオンとカテリーナはその一週間前にここを出発して、王都にあるパルヴァン邸に向かう。それで、ハル殿には薬師“ルディ”としてか…カテリーナ付きの侍女としてかで同行させようと思っている。」
ー王都かー
確かに…その女性の事はすごく気になる。
『後残ってるのは何ルートあるんですか?』
『それがねぇ…基本は後二つなんだけど…多分、私達が知らないだけで、隠しルートと追加ルートがあったと思う…』
ーゲームがまだ続いてる?違うー
『やっぱり、この世界はゲームの世界であって、そうじゃないのね。1人1人が意思を持って動いてるって事なんだね…。』
『そうだね…ゲーム通りに決めつけて進めるのは…駄目だって事だね。でも、私達は、絶対日本に還るって事だけは変わらない。』
例え、乙女ゲームが続いていたとしても、ゲーム通りになる事はないんだ。実際、お姉さん達は皆お姉さん達の意思通りに還った。
ここは、現実の世界。1人1人が意思を持って生きている─それを、忘れてはいけない。
そもそも、私はゲームの事は一切知らないわけで…。気にするだけ無駄かもしれない…。
「正直に言うと…王都には行きたくないんですけど…やっぱり…その女性の事は…気になります。レオン様やパルヴァン様の迷惑にならないのであれば…同行して見に行っても良いですか?」
パルヴァン様の目をしっかり見ながら答えると、パルヴァン様は更に目元を緩めて笑い
「迷惑だなんて事はない。正直、薬師であるハル殿が同行してくれた方が安心する。何があっても大丈夫だと思えるからな。」
「ありがとう…ございます。」
今日は、この話はこれで終わりーと言う事で、カテリーナ様も別邸から呼び寄せて、本邸で5人で一緒に夕食を食べた。
*****
ハルが就寝した後、グレンの執務室に、ティモスとルナとリディがグレンに呼ばれた。
「あの馬鹿息子ですか!?」
「馬鹿息子…」
「あ、失礼致しました。本当の事をついうっかり言ってしまいました。」
ルナの刺々しい言い方にグレンは呆れるも、注意はしない。
ー馬鹿息子ー
ハルを牢屋に入れたまま放置して、シルヴィアに締め上げられた後、領地追放処分を受けた元パルヴァン騎士団副団長だった、ギデル。ハルの事は口外出来ないように魔術を掛けて追放した為、ハルの事が外にバレている事はない。ただ、そのギデルが、今は王都に居ると言う。追放され身分も失ったギデルは、怪しい連中と行動を共にしているとか…。ギデルも今のハルの容姿は知らないと思うが…もし知っていて、ギデルとハルが遭遇してしまったら…。
「ティモスとルナとリディも、レオン達に同行して王都に行ってもらう。勿論、ハル殿を守る為にな。お前達3人は、レオン=パルヴァンではなく、ハル殿を最優先に動け。良いな?」
「「「承知しました。」」」
『それもそうだけど…ハル殿は…取り乱すどころか、泣いてもいないし、召喚した側の人間を一切責めていない。そう言うタイプの人間はね、他人を…信用していないって事だよ。そして…壊れる時は…一気に壊れてしまうんだ。私は、それが怖いと思った。だから、ハル殿がパルヴァンに居たいと言うなら、ここで守ってあげたい。』
ハル殿がここに来た時に、シルヴィアが言った言葉を思い出す。
本当に、ハル殿はいつも周りを気にして、気を遣ってばかりで自分の事は後回しにする。それが心配で仕方ないのだ。できるのであれば、王都や王族とは関わらせたくないと言うのが本音である。だがー。王都に行くと、彼女は私の目をしっかりと見据えながら言ったのだ。ならば、私がする事は…彼女を守る為のものを用意する事だけだ。
ー何事も無く、またパルヴァン辺境地に帰って来れます様にー
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