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第四章ー王都ー
白いの
しおりを挟む「…な…に…?」
「あれ?ひょっとして、魔力持ちだったのか?念の為に用意してただけだけど、良かった。」
もう一人の男が飄々と言った感じで答える。
「これ、魔力封じの首輪ね。魔力を封じると同時に、少しずつ吸い取ったりもするんだ。しかも、魔力が強ければ強い程効果も強くなるんだ。君…凄く…強いんじゃない?」
ー魔力封じの首輪?そんなの、聞いた事…なかった。これって、ちょっとヤバくない!?ー
駄目だ…立ってるだけでも辛い…。
「なぁ、ギデル。この子の魔力に興味あるんだけど…やっぱり、贄はカテリーナにしないか?」
「馬鹿を言うな。もう時間も無いと分かっているだろう?それに、贄に関しては私に一任されてるんだ。口出しするな。」
『…残念…。』
そのもう一人の男は、そう言いながら私に着けた首輪をそっとなぞって行った。
「兎に角、急いで地下に行くぞ!ほら、歩け!」
(今の会話で初めて知ったけど )ギデルに追い立てられた私は、重くなった体を何とか動かしてもう一人の男の後を付いて行った。
「え…ウソ…」
私が連れて行かされた場所には…あの時のフェンリルが居た。
ー“にえ”…“贄”って…まさか…そう言う事!?ー
ダルシニアン様が拘束した時と同じで、光の檻の中に閉じ込められていた。首と4本の足にも光の輪っかの様な物も着いたままだった。
そのフェンリルが、ゆっくりとこちらを振り返り
アイスブルーの瞳と目が合った
ーあぁ…この瞳だー
不思議と恐怖心はなかった。
声が…聞こえないのは…この魔力封じの首輪のせいだろうか?重たい頭でぼんやりと考えながら、ソッと首輪に触れる。
すると、アイスブルーの目が大きく見開かれ、フェンリルから魔力が溢れ出した。
「─っ!?おいっ!このフェンリルは拘束されて、おとなしくなったんじゃなかったのか!?」
フェンリルの魔力に驚き、ギデルが叫ぶ。
「おとなしかったよ!でも、“贄”を目の前にして、喜んでるんじゃないの?予定通り事を進めるから、ギデルはここに誰も入って来ないようにドアを見張っててよ!」
もう一人の男がそう言うと、私の腕を掴んでそのままフェンリルの方へと突き飛ばした。
抵抗する気力も魔力も無い。
ーあぁ…ヤバい…のかなぁ?ー
文字通り、私をこのフェンリルの贄にしようとしてるんだろう。ただ…フェンリルの魔力は凄いのに、何故だか全然恐くないのだ。
と、自分がへたりこんでいる場所に魔法陣が顕れた。すると、より一層体が重くなり、そのまま私はその場に倒れこんだ。
チラリとフェンリルを見ると、フェンリルも私を見ていた。
「…あなたの声…が…聞こえたら…良かったのに…」
『──っ!』
もう駄目かな?と目を閉じる瞬間─
『─っ!我の名を呼べ!』
ー名前?誰の?ー
重たい頭の中で、誰かの声が響いた─
『お前は真っ白だな─』
『白いの。お前に名をつけてやろう。そして、お前を守ってやろう。』
『お前の名前は─』
「……レフ…コース…」
そう囁いた後、私は意識を手放した。
*****
「レオン…」
未だ続いている夜会の大広間に、カテリーナは緊急事態な事を周りに気取られる事のないように入場し、そっとレオンとティモスの側までやって来た。
「リーナ!?何故1人でここに?ルディはどうした?」
ビックリしたのはレオンだけではなく、ティモスもだった。ただ、カテリーナの手が震えている事に気付いたのはレオンと…
「何かあったの?」
その時に一緒に居たクレイル=ダルシニアンだった。
丁度、王太子殿下に帰りの挨拶をしているところだった為、レオンとティモスの側に、ランバルトとクレイル、近衛としてエディオルも一緒に居たのだ。
「えっと…」
早く事の次第をレオンとティモスに話したいが、ランバルト達が居る為、カテリーナは言い淀む。その事にレオンも気付いてはいるが、相手は王太子。どうしたものか…と思案していると
「何か緊急な事でも起こったか?もし、聞かれて困るような事なら…部屋を用意させよう。」
と、ランバルトが近くに居た侍従に声を掛け、すぐに部屋へと案内してくれた。
ランバルト達もその部屋に来たが、取り敢えずはと、レオン達と距離を置いて3人の話が終わるのを待つ事にした。
「パルヴァンで何かあったんだろうか?」
「どうでしょう?それなら、私達に隠そうとはしないと思いますけどね。」
「…確かに…」
「ルディが!?」
小さい声で話し合っていたのに、ティモスが焦ったように声を張り上げた。
「ルディ?」
その名前に反応したのはクレイルだった。
ティモスは、「しまった!」と言う様な顔をしたが、レオンはクレイルの方に視線を向け
「ダルシニアン様、ここには…フェンリルが。あの時のフェンリルが居ましたね?」
「あぁ、神殿地下に。あの時に拘束した状態でね。それが…何か?」
「どうやら、この夜会にパルヴァン辺境伯を恨む輩が居たようで…。カテリーナを狙ったようですが、カテリーナの身代わりにと…一緒に居た“薬師のルディ”が…連れ去られたようです。」
「…何処に?」
「その者が、“贄”にすると─。」
クレイルがハッとした瞬間
「…薬師?」
エディオルが先に反応した。
「その薬師とは…どんな容姿をしている?」
それに答えはたのはクレイル。
「エディオルとランバルトは、会ってない?パルヴァン付きの薬師のルディ。容姿は─プラチナブロンドの髪に…淡い水色の瞳だったよ。」
「──っ!?」
ヒュッと息を呑んだ次の瞬間、エディオルは直ぐ様駆け出し部屋を飛び出した。
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