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第四章ー王都ー
ピアスの発動
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その魔導師の元まで一気に駆け寄り、先ずは、剣ではなく思いっきり蹴り上げる。
「カルザイン様!?」
「エディオル!?」
後ろでティモス殿とクレイルが、ビックリしたように俺を呼ぶが今は無視をする。
その魔導師がぶっ飛んで床に倒れこんだと同時に、彼女の体の下で展開していた魔法陣が消えたのを確認する。そのままフェンリルに視線を向けると…
怒りの消えた瞳で俺を見ていた。そして、フェンリルは、優しい瞳を彼女に向けた。
ーやっぱりー
今は…彼女はフェンリルに任せておくのが一番だろうと思い、彼女から意識を離し、再び魔導師に意識を向ける。
「ちょっ…エディオル!ルディ殿を助ける方が先だろう!?」
かなり焦った様にクレイルが叫ぶ。
それもそうか…今のフェンリルは、クレイルが仕掛けた光の檻から出ていて、その上、足と首にあった枷も解かれているのだ。しかも、足元に彼女が横たわっている。誰がどう見ても、フェンリルが彼女を襲っているよに見えるだろう。
「いや─。彼女にとっては、あそこが一番安全なんだ。先にやるべき事は…あの魔導師を潰す事だ─。」
「はぁ!?エディオル、何を言って─…」
「カルザイン様、俺の手は必要ですか?」
クレイルはまだ納得していないようだが、ティモス殿の方は冷静なようだ。流石は、パルヴァンの騎士と言ったところか。
「いや─必要ない。あっちで倒れてる奴を頼む。」
「承知した。」
そう言うと、お互いが直ぐに動き出した。
ー彼女に手を出した事、後悔させてやるー
もう一度蹴り上げてやろうか?と思ったが、相手は曲がりなりにも魔導師。立ち上がり防御の魔術を発動させる。
ー遅いけどー
完全に発動させる前に懐に飛び込み、やっぱりもう一度同じ所を蹴り上げる。
「ぐぅ─っ!!」
倒れこんだ男の元まで一気に詰めて、男の胸に右膝を付いて押さえ込み、左手で男の喉元を押さえる。
「楽に…死ねると思うなよ?」
これじゃあ、どちらが悪者か分からないが…手加減なんてする気は全くない。
『どうやら、この夜会にパルヴァン辺境伯を恨む輩が居たようで…。』
この2人だけ始末しても、その後ろに誰が居るのか分からなければ、また同じ様な事が起こるかもしれない。王族としても、この国の重要なパルヴァン辺境地絡みの事件となれば、放ってはおけないだろう。だから、この2人には生きていてもらわなければいけない。
もとより、楽になれる道なんて選ばせるつもりもないが…。
こんな不利な状況にも関わらず、この男はニヤリと嗤い出した。
「何がおかしい?」
「…何が…か…誰がお前に教えてやるもんか…はははっ…」
「エディオル気を付けろ!そいつ、何かの魔石を持ってる!」
ー攻撃魔法を込めた魔石か!?ー
「ここで使う気はなかったけどね!はい、バイバイ」
そう言うと、その男は魔石に込められた魔術を発動させた。ほぼ同時にクレイルが何やら魔術を展開させようとしたようだが、多分間に合わないだろう。
ー流石に、この距離でやられたら少しヤバいかもしれないなー
と、呑気に考えていると、左耳がほんのり熱を持ち温かくなる。
目の前に攻撃魔法が現れ─
「エディオル!!」
クレイルの叫び声が酷く響いた。
パ──ンッ
「……?」
目を閉じて衝撃を覚悟していたが、何も起こらなかった。不思議に思い目を開けると、魔導師の男は気を失っていた。チラリとクレイルを見ると、クレイルとティモス殿が驚いた様に目を見開いて固まっている。
未だにほんのりと温かいピアスに手をやる。
今迄感じた事はなかったが、この魔石に何か…防御系の魔力が込められていた?
「…嘘…だろう…」
そう囁いたクレイルを見ると…顔が引き攣っていた。
ピアスの事も気になるが、兎に角今は、2人の男が逃げないように拘束する事。そして─
フェンリルの方を見ると、フェンリルが横たわっている彼女を囲むようにして臥せっていた。何となく…フェンリルは満足気に笑っている…ように見える。
さて…その彼女をどうするか…。おそらく、レオン殿は勿論、ティモス殿もきっと知っているんだろう。知らなかったのは…俺達の方だけ。クレイルは、まだ気付いてないだろう。ルディ殿がハル殿だと言う事に。
それに、彼女はきっと王城には居たくない筈だ。どうする?と考えていると─
「取り敢えず、ルディ殿を城の医務室に連れて行こうか…」
と彼女に近付こうとすると、フェンリルがクレイルに軽くだが、殺気を飛ばした。
「えっ…何で?」
「城に…連れて行かせたくないんだろう?」
そう言うと、フェンリルは殺意を消し、また、満足げに笑う。
「取り敢えず…。クレイル、この2人をしっかり拘束して、牢屋に放り込んでおいてくれ。事が事だから、王も動かざるを得なくなるだろう。それに…グレン様も動くと思うから、絶対に逃がすなよ。」
「…だよね…。はぁー…本当に、新たな聖女様が来て以降、色んな事があり過ぎだよ…。私にはよく分からないけど…ルディ殿の事は、エディオルとティモス殿に任せるよ。ルディ殿が休めるように、神殿の客室を用意させておくよ。」
と言って、クレイルは魔術で2人を拘束し、転移魔法を発動させた。
「カルザイン様!?」
「エディオル!?」
後ろでティモス殿とクレイルが、ビックリしたように俺を呼ぶが今は無視をする。
その魔導師がぶっ飛んで床に倒れこんだと同時に、彼女の体の下で展開していた魔法陣が消えたのを確認する。そのままフェンリルに視線を向けると…
怒りの消えた瞳で俺を見ていた。そして、フェンリルは、優しい瞳を彼女に向けた。
ーやっぱりー
今は…彼女はフェンリルに任せておくのが一番だろうと思い、彼女から意識を離し、再び魔導師に意識を向ける。
「ちょっ…エディオル!ルディ殿を助ける方が先だろう!?」
かなり焦った様にクレイルが叫ぶ。
それもそうか…今のフェンリルは、クレイルが仕掛けた光の檻から出ていて、その上、足と首にあった枷も解かれているのだ。しかも、足元に彼女が横たわっている。誰がどう見ても、フェンリルが彼女を襲っているよに見えるだろう。
「いや─。彼女にとっては、あそこが一番安全なんだ。先にやるべき事は…あの魔導師を潰す事だ─。」
「はぁ!?エディオル、何を言って─…」
「カルザイン様、俺の手は必要ですか?」
クレイルはまだ納得していないようだが、ティモス殿の方は冷静なようだ。流石は、パルヴァンの騎士と言ったところか。
「いや─必要ない。あっちで倒れてる奴を頼む。」
「承知した。」
そう言うと、お互いが直ぐに動き出した。
ー彼女に手を出した事、後悔させてやるー
もう一度蹴り上げてやろうか?と思ったが、相手は曲がりなりにも魔導師。立ち上がり防御の魔術を発動させる。
ー遅いけどー
完全に発動させる前に懐に飛び込み、やっぱりもう一度同じ所を蹴り上げる。
「ぐぅ─っ!!」
倒れこんだ男の元まで一気に詰めて、男の胸に右膝を付いて押さえ込み、左手で男の喉元を押さえる。
「楽に…死ねると思うなよ?」
これじゃあ、どちらが悪者か分からないが…手加減なんてする気は全くない。
『どうやら、この夜会にパルヴァン辺境伯を恨む輩が居たようで…。』
この2人だけ始末しても、その後ろに誰が居るのか分からなければ、また同じ様な事が起こるかもしれない。王族としても、この国の重要なパルヴァン辺境地絡みの事件となれば、放ってはおけないだろう。だから、この2人には生きていてもらわなければいけない。
もとより、楽になれる道なんて選ばせるつもりもないが…。
こんな不利な状況にも関わらず、この男はニヤリと嗤い出した。
「何がおかしい?」
「…何が…か…誰がお前に教えてやるもんか…はははっ…」
「エディオル気を付けろ!そいつ、何かの魔石を持ってる!」
ー攻撃魔法を込めた魔石か!?ー
「ここで使う気はなかったけどね!はい、バイバイ」
そう言うと、その男は魔石に込められた魔術を発動させた。ほぼ同時にクレイルが何やら魔術を展開させようとしたようだが、多分間に合わないだろう。
ー流石に、この距離でやられたら少しヤバいかもしれないなー
と、呑気に考えていると、左耳がほんのり熱を持ち温かくなる。
目の前に攻撃魔法が現れ─
「エディオル!!」
クレイルの叫び声が酷く響いた。
パ──ンッ
「……?」
目を閉じて衝撃を覚悟していたが、何も起こらなかった。不思議に思い目を開けると、魔導師の男は気を失っていた。チラリとクレイルを見ると、クレイルとティモス殿が驚いた様に目を見開いて固まっている。
未だにほんのりと温かいピアスに手をやる。
今迄感じた事はなかったが、この魔石に何か…防御系の魔力が込められていた?
「…嘘…だろう…」
そう囁いたクレイルを見ると…顔が引き攣っていた。
ピアスの事も気になるが、兎に角今は、2人の男が逃げないように拘束する事。そして─
フェンリルの方を見ると、フェンリルが横たわっている彼女を囲むようにして臥せっていた。何となく…フェンリルは満足気に笑っている…ように見える。
さて…その彼女をどうするか…。おそらく、レオン殿は勿論、ティモス殿もきっと知っているんだろう。知らなかったのは…俺達の方だけ。クレイルは、まだ気付いてないだろう。ルディ殿がハル殿だと言う事に。
それに、彼女はきっと王城には居たくない筈だ。どうする?と考えていると─
「取り敢えず、ルディ殿を城の医務室に連れて行こうか…」
と彼女に近付こうとすると、フェンリルがクレイルに軽くだが、殺気を飛ばした。
「えっ…何で?」
「城に…連れて行かせたくないんだろう?」
そう言うと、フェンリルは殺意を消し、また、満足げに笑う。
「取り敢えず…。クレイル、この2人をしっかり拘束して、牢屋に放り込んでおいてくれ。事が事だから、王も動かざるを得なくなるだろう。それに…グレン様も動くと思うから、絶対に逃がすなよ。」
「…だよね…。はぁー…本当に、新たな聖女様が来て以降、色んな事があり過ぎだよ…。私にはよく分からないけど…ルディ殿の事は、エディオルとティモス殿に任せるよ。ルディ殿が休めるように、神殿の客室を用意させておくよ。」
と言って、クレイルは魔術で2人を拘束し、転移魔法を発動させた。
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