巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

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第四章ー王都ー

ティモスの動揺①

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「取り敢えず…城には戻れないから、クレイルの言う通り、彼女を神殿ここの客室に運ぼう。ティモス殿、頼めるか?」

と、ティモス殿に訊くと、またフェンリルが軽く殺気を飛ばす。

「「……」」

「何故だ?城ではなく…神殿ここでも駄目なのか?」

フェンリルが、じっと俺を見据えて来る。

「あぁ…多分ですけど…駄目って事じゃないですか?」

とティモス殿が言うと、フェンリルが殺気を消した。

「は?」

ー何故、ティモス殿では駄目なんだ?ー

「カルザイン様、ルディの事…お願いしても良いですか?」

良いも何も…嫌ではない。ないが…

ー俺が、彼女に触れても…良いのだろうか?ー

ゆっくり彼女に近付いて行くと、フェンリルがスッと彼女から少し身を離した。

長いプラチナブロンドの髪が、床に広がっている。目を閉じているから、瞳の色は分からない。何もかもが1年半前とは違う彼女。でも、愛おしさは…変わっていない。


ーきっと、触れてしまったら…離せなくなるー


チラリとフェンリルに視線を向ける。

何故か本当に分からないが、優しい瞳に『大丈夫』と言われているような気がした。

彼女にそっと触れると…また左耳のピアスがほんのり温かくなって

      カシャンッ


と、音を立てて、彼女の首にあった首輪?のような物が外れて落ちた。

「…魔力…封じの…首輪?」

ーえ?彼女は…魔法が使えた?ー

いや、今はそれは置いといて、このせいで気を失っているとしたら、早く治療をした方が良いだろう。
今度は躊躇う事なく、彼女を抱き上げた。


フワリと花のような香りがした。
俺の腕の中に…彼女が居る。
もう二度と会えないと…思っていた。
なのに、今、俺の腕の中に居る。


彼女に負担が掛からないように、静かに、且つ、早足で神殿の客室へと急いだ。












*ティモス*



カルザイン様には…ルディイコールハルだとバレている…よな?



『色々と突っ込みどころはありますけど…それはないと思いますよ?ダルシニアン様とは、浄化の旅で話をするようになった位ですし、カルザイン様に至っては…寧ろ嫌われている可能性の方が高いですからね。それに、私は聖女様達と違って、その3人とは殆ど接点ありませんでしたからね。』

前に、俺が、カルザイン様とダルシニアン様がハルが好きって事はないのかと訊いた時、ハルはそう答えた。ハッキリと言っていたよな?全否定だったよな?

ー有り得ないだろー 

カルザイン様がハルを抱き上げて、その抱き上げたハルを見るカルザイン様の顔…

「蕩けてたけど?」

アレ、カルザイン様自身も自覚していない程の蕩け切った顔…だった…。

え?何?アレで…ハルは気付いてないのか?
いや違う…のか?1年半前と今では色んな事が違っている。
前の時は…カルザイン様自身、敢えて隠していたのかもしれない。ハルは、還る予定だったから。

ーカルザイン様かー

ハルの容姿が変わっていても、ハルだと気付いた彼なら…ハルを任せられるだろうか?ハルの側で、ハルを守ってくれるだろうか?そうなってくれたら良いな…。

と思いながら、2人の後に付いて行った。









ダルシニアン様が用意をしてくれていた客室に入ると、そこには医師らしき人と魔導師の2人の女性が居た。

「ダルシニアン様から軽くですが、事情は聞いております。先ずは、彼女…ルディさんでしたか?そちらのベッドに寝かせて下さい。」

そう医師らしき人が言うと、カルザイン様はハルをそっとベッドに下ろす。

その時の顔が…カルザイン様がハルを見る顔が…また…何と言うか…『愛しくてたまらない』みたいな……。何だか俺の方が恥ずかしくなるな!と思っていると…

医師らしき人と魔導師の人は、目を見開いて固まっていた。

ーうん。その気持ち、解らなくもないー

「うっ…コホン。ででは、ルディさんの体調確認しますので、呼びに行く迄お二人は違う部屋でお待ち下さい。」

と、医師らしき人が言った時、俺の足元をスルリと何かが横切った。

「─えっ!?」

アレ…サイズは違うけど…さっきのフェンリルじゃないのか?

さっき迄、あのフェンリルは2m位あった…筈なのに…。今は中型犬位の大きさになっている。驚いてカルザイン様を見ると

「…このは…彼女の側を離れたがらないから、この部屋に置いてやってくれるか?彼女に害がなければ、このも暴れる事はないから。」

ー害があれば暴れるのかー

と、3人ともが思ったが、予想外の事があり過ぎて、3人ともいっぱいいっぱいで…突っ込むのも拒否するのも諦めて、それを受け入れた。

「では、私達は一度城の方に戻る。後は…宜しく頼みます。ティモス殿、行こうか。」

「はい。ルディの事…宜しくお願いします。」

そう言って2人の女性に任せて、俺はカルザイン様と一度王城に居るレオン様達の元に戻った。


レオン様達の所に着く迄に、この動揺した気持ちを落ち着かせよう…

そう思いながら。








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