79 / 203
第四章ー王都ー
フェンリルと巫女①
しおりを挟むーそれは、誰の記憶だっただろうか?ー
『お前は真っ白だな─』
『白いの。お前に名をつけてやろう。そして、お前を守ってやろう。』
『お前の名前は─』
「レフコース?」
『あぁ、主。ようやく我の名を呼んでくれた。』
目の前にいる、あのフェンリルが嬉しそうに笑っている。
「あるじ?」
『そう。我の魔力を引き継いだ巫女であり、我の主。』
「みこ?」
『そう。我の唯一の主。』
『“言い伝え”では…数百年前に存在した魔法使いが、フェンリルと契約を結んでいたんだけど、その契約を結んだまま、ある日突然その魔法使いが死んでしまって、そのフェンリルも行方が分からなくなったとか…。ま、真偽は分からないけどね。』
「私が聞いたのは、あなたは魔法使いと契約を結んだと…。」
そう言うと、フェンリルはコテンと首を傾げた。
ーえ…何それ、可愛いからー
『ふむ…。長く年月を重ねると、根本的な事さえ違って伝承されるのだな…。』
「根本的な事さえ違って?」
『主…我の話を聞いてくれるか?』
「勿論。あなたが話してくれると言うなら。」
そう言うと、フェンリルは満足気に頷いた。
今居る、この真っ白な空間が何処なのか、魔力封じの首輪をかせられた私はどうなったのか…色々訊きたい事はあるのだけど、先ずはフェンリルの話を聞く事にした。
今は滅んでしまった某国では、フェンリルの守護の元、他国に侵略される心配もなく、豊かに栄えていた。その国には、“先読みの巫女”が居た。将来起こり得る事が視える巫女。その巫女が、新たなるフェンリルの誕生時に
『そのフェンリルは魔力が強過ぎる為、将来、この国に災いをもたらす存在になるだろう。』
と、先読みしたのだ。されどこの国の守護獣であるフェンリル。それに、先読みも違える事もある。先ずは、魔力を抑える枷を着け、そのフェンリルを見守る事にした。
しかし、そのフェンリルが成長するにつれて、魔力はどんどん大きくなり、枷では抑える事ができなくなっていった。このままでは、先読み通り、この国に災いをもたらす存在となってしまうと危惧した民達は…そのフェンリルを…始末する事にした。
勿論、そのフェンリルは逃げ出した。
国を跨いで逃げても、逃げた先でも命を狙われた。
そして、最後に辿り着いたのが…パルヴァンのあの森だった。
真っ白な綺麗な毛並みは、血が乾いて赤黒く染まっていた。
ーもう…死ぬのか?ー
そう生きながらえる事を諦めた時
『白いの、大丈夫か?』
1人の女が、横たわる我を覗き込んできた。
ーまた人間か…。どうせ、我を殺す為に来たのだろう?ー
それには答えず、ソッと目を閉じた。
ーもう…いいかー
と、思っていると、一瞬で体全体が温かくなったかと思えば、あれ程重たかった体が軽くなった。驚いて目を開ければ…
赤黒く汚れてガビガビになっていた毛が、本来の綺麗な真っ白な色に戻っていて、負っていた傷も無くなっていた。
『白いの。お前は…綺麗な色だな。』
嬉しそうにニッコリ笑う女。
『私は、この国の巫女だ。今、この森の穢れを祓っていたところだ。白いのは…魔力が大きいな?その魔力、少し貰っても良いか?』
ー貰う?ー
魔力と言うのは…あげられるものなのか?と、首を傾げ、その巫女とやらをジッと見つめる。
『あぁ、もしかして…お前が某国で追われていると言うフェンリルだったのか?』
その言葉にビクリッと、体が固まる。
そんな様子に気付いた巫女は、更に優しく微笑んでそのフェンリルの頭を撫でた。
『お前は真っ白だな─』
優しい笑顔のまま、グリグリと撫で回して来る巫女。
『白いの。お前に名をつけてやろう。そして、お前を守ってやろう。』
ー守る?我がではなく、我を?ー
また首を傾げてその巫女を見つめる。
『お前に名前をつけて、私と繋がりを持たせるんだ。ある種の“契約”なんだが、それによって、白いのの魔力を私が受け入れる事ができるようになる。その魔力で、この森の穢れをもっと綺麗に浄化できるようになるし、白いのは魔力が減って追われる事がなくなる。良いと思わないか?』
ーそんな事ができるのか?我は…まだ生きていて良いのだろうか?ー
『お前の名前は─“レフコース”!そして、私の名前はーーーーー。』
その巫女は、我に名をつけ、自身の真名を告げ我らの足元で魔法陣を展開させた。
トクリ…トクリ…と、優しい魔力が流れ込んで来るのと同時に、我の魔力がその巫女に流れ込み、繋がりができた事を実感した。
それからの我は、魔力が溢れる事も強くなり過ぎることもなくなった。巫女も、我の魔力とは相性が良かったようで、問題なく我の魔力を使いこなし森の穢れを祓っていった。
その巫女のお蔭で、追われる事がなくなった。
なのに─。
あの某国の人間は…我ではなく…その巫女に目を付けたのだ─。
213
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる