巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

文字の大きさ
89 / 203
第四章ー王都ー

パルヴァンの騎士とリス

しおりを挟む

パルヴァン様とレオン様とティモスさんは…分かる。でも…えー…ルナさんもリディさんも…とんでもない…女騎士だったのか…。

ーえ!?私の専属侍女になる為にって、そう言う意味だったの!?ー




「…少しは、目が覚めましたか?」

静かにだけど、少し怒りが込められたような低い声が響いた。

どうやら、パルヴァン様達は私とレイナさんには気付いていないようだ。

「あぁ…目が…覚めた。…。」

そう答えた人の声は─王太子様だった。

後ろ姿しか見えないけど、満身創痍で立っている数名の騎士様達のうちの一人だ。何故、王太子様が第一騎士団の訓練にいるんだろうか?



『…少しは、目が覚めましたか?』

『あぁ…目が…覚めた。助かった…。』



レフコースが言っていた。


『一番酷い症状が出ているのは、主と我の魔力が込められた魔石をピアスにしている3人のうちの1人だ。』

成る程。王太子様は、かなり症状が悪化していたんだろう。それで、この訓練に参加させられたと言う事か。そして、パルヴァン様も、容赦無くやったと…。
え?第一騎士団より、パルヴァンの騎士の方が凄いって事…なの!?


『狼の群れの中のリス』


ーうん。私はリス…以下だろうー


「えっと…薬師として訊きますけど…治療とかした方が良いんでしょうか?」

「パルヴァン伯様次第…ですね。」

ーですよね!勝手に治療したら、その分また、その人がしごかれそうだー

「「ルディさん!!」」

「ふぁっ!?」

急に大声で名前を呼ばれて、また変な声を出してしまったよ!と、呼ばれた方を見ると、ルナさんとリディさんが私の方に向かって走って来て─

「ぐふぅーっ」

はい、またそのままの勢いで抱き付かれました。

ー抱き枕なハルですー

「ルディさん、もう身体は大丈夫なんですか?」

ルナさんが泣きそうな顔をしながら訊いて来る。


「はい、もうすっかり元気ですよ!心配を掛けてごめんなさい。」

「本当に、元気になって…良かったです。」

リディさんも泣きそう顔をしながら、でも笑顔で良かったと言ってくれた。

感動的な再会?なんだけど…よく見たら…ルナさんもリディさんも…服に血が付いている…恐らく…返り血だろう…。ルナさんもリディさんも、怪我をしている感じは全く無い。

ー恐るべし、パルヴァンの騎士ー



「ルディ、どうして訓練場ここに?何かあったのか?」

と、パルヴァン様に声を掛けられた

「えっと…訓練も、そろそろ終わりかなと思いまして…あーお迎えに来ました!」

「…そうか…まだまだ足りないかと思ったが…。」

ー足りないって、何が!?ー

「仕方無い、ルイス、後は頼んだ。」

「…承知しました。」

パルヴァン様の後ろに控えていた年配の騎士様が、やや引き攣り顔で頭を軽く下げた。誰だろう?と思って見ていると、その騎士様も私の方を見て来たので、目が合ってしまった。

「あなたが…薬師のルディ殿だろうか?」

「あ、はい。」

「私は、第一騎士団団長を務めている、ルイス=カルザインだ。此度の事、我ら第一騎士団の落ち度でもある。すまなかった。」

と、第一騎士団長様が頭を下げる。

「そんな、頭を上げて下さい!」

第一騎士団のトップに頭を下げられるなんて、心臓に悪過ぎる!って─“カルザイン”って、言わなかった?

「あのーっ、カルザイン様と言うと…私を助けてくれた─…」

「あぁ、それは私の息子のエディオル=カルザインだ。」

ーやっぱり。確かに、よく見ると似ている気がするー

「私、目が覚めてから、まだお会いしていないので、お礼も言えていないんですけど。」

「そう…なんですか?あぁ、丁度良かったのかも知れない。エディオル!」

騎士団長様が、私の後ろへと視線をやり、声を張り上げる。何だろう?と思い、騎士団長様の視線の方に振り返ると─エディオル=カルザイン様が居た。

居たのだけど…


「まぁ…今日は酷い惨状ですね?誰がこんな酷い事を?怖いです…」


と、カルザイン様の左腕にギュウッとしがみつく聖女様を伴っていた。

ー今時の高校生は…積極的なんですねー

と、少し遠い目になった。

この子…この世界の勉強はしていないんだろうか?日本では問題がない言動でも、この世界では問題になる言動がたくさんある。言動一つで見方やその人の評価さえ変わる。私は、それらを身をもって感じさせられた。お姉さん達だって、4人だけの時は口では自由気ままな事を言ってはいたが、行動ではこの世界のルールに倣っていた。“聖女だから”と、傲る事もなかった。

チラリと、横に居るレイナさんを見ると、何かを我慢するように口をグッと閉じている。

そんな中で──

「惨状…ですか…」

と、低い…今までに聞いた事がない程の、低い声が響いた。













    
しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います

黒木 楓
恋愛
 伯爵令嬢のリリカは、婚約者である侯爵令息ラルフに「水魔法しか使えないお前との婚約を破棄する」と言われてしまう。  異世界に転生したリリカは前世の知識があり、それにより普通とは違う水魔法が使える。  そのことは婚約前に話していたけど、ラルフは隠すよう命令していた。 「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」  そう言われ続けてきたけど、これから命令を聞く必要もない。 「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」  飲んだ人を強くしたり回復する聖水を作ることができるけど、命令により家族以外は誰も知らない。  これは前世の知識がある私だけが出せる特殊な水で、婚約破棄された後は何も気にせず使えそうだ。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

藍生蕗
恋愛
 子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。  しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。  いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。 ※ 本編は4万字くらいのお話です ※ 他のサイトでも公開してます ※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。 ※ ご都合主義 ※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!) ※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。  →同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。 全123話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

処理中です...