巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

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第七章ー隣国ー

ハーピーvs???

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*引き続き、エディオル視点です*











ハーピーは、馬鹿にするかのように上空で旋回しながらこちら側を見渡し、弱っている人間を見極め、それを確実に1人ずつ仕留めていく─。
最悪な事に、ここに居る騎士に魔術を使える者が居なかった。魔法を使えるのはリュウだけ。でも、そのリュウも、ヘルハウンドに対峙した時にかなりの魔力を使っていた。そのヘルハウンドを仕留めた後も、休む間もなく穢れを祓っていた。どう考えても、リュウの魔力も限界が近い筈─。空を舞うハーピーを捕らえるには、魔術や魔法が必要不可欠だが─。

ハーピーが、獲物を狙いにこちらに来た時を狙うしか…ないか…。

チラリとジン殿を見る。かなりの怪我を負っているが、今のところハーピーがジン殿を狙う気配は無い。おそらく、あのピアスのお陰だろう。ハーピーは、自分より強いモノには手を出さない習性がある。

本当に、あのピアスの防御のレベルは半端無いんだな─と思う。同じ魔法使いであるリュウも、ハル殿とは格が違い過ぎると言っていた。

俺は、知らず知らずのうちに、ずっとハル殿に守られていたのだ。

ー何が“俺が守る”だー

ついつい思考がズレて集中ができない。
剣を握り直して軽く息を吐き、周りの状況を確認する。

もともと同行していた辺境地の騎士は多くはなかった。ここに来る迄にも負傷し、負傷した者は足手まといにならないようにと、その地に留め置いて来ていた。そして、今、目の前でハーピーに次々とやられていく。ここを何とかできたとしても─次には行けないだろう。ここでハーピーを逃せば、違う街に被害が出る。最悪は─隣国であるウォーランド王国にも影響が出る可能性がある。

ー必ず、ここで仕留めなければー

「エディオル…あんた…ピアスはどうした?」

いつの間にか、俺の近く迄来ていたリュウに訊かれた。

「あのピアスは、ジン殿に持たせている。後々…ジン殿がになるだろう?」

「…あんた…気付いていたのか?」

「さぁ?何の事だか?」

「…あんたは馬鹿だな。あのピアスがあれば、何があっても守ってくれるのに。」

「…守られて…生きてウォーランド王国に帰って、何の意味がある?俺は…もう分からないんだ─。」

リュウには一瞥もせず、ただひたすらハーピーを見つめながら話す。

「はぁ─…本当は、あんただけでもウォーランド王国に還したかったんだけど…俺も魔力がヤバくてね。本当に─すまない。」

「何度も言うが、お前のせいではないだろう?」

「あんたも大概のお人好しだな。ハルが居なくなったのは、俺のせいなのに。」

「それはそうだな。」

「ははっ…そこは否定無しか─。」

困ったように笑った後

「死に急ぐような事はするなよ?俺が言うのも何だけどさぁ。ハルは─どんな境遇に置かれても、前を見ていただろう?そんなハルに顔向けできないような事…するなよ?」

「……」

そして、またハーピーが誰かを仕留めようと旋回を止め、一気に急降下して来た。その着地地点だろう人物の元へと走り出す。

「エディオル─っ!?」

狙うのは─首一点のみ。

失敗すれば、次に狙われるのは俺かもしれない。

剣に填めた魔石を使い、剣に強化の魔術を掛ける。
ハーピーが、獲物に飛び付こうとした所に力を込めて剣を振り下ろした─。

『ギャアーッ』

「─っ!?」

仕留めた─仕留めたのに─!!

また上空から新たなハーピーの声が響き渡った。

上空に留まったままで、こちらを見下ろしている。

ーどう出て来る?ー

仲間姉妹?を殺られて、怒って俺を狙って来るか、俺を強いと認め他を狙うか、ここを去るか─。

ー去って…くれないだろうかー

剣を握る手と背中に、ジワリと嫌な汗が出る。

『ギャアーッ』

と、そんな願いも虚しく─もう一頭現れた。

「はっ…」

場違いな笑いが溢れた。

リュウも他の騎士達も、動けなくなった。

ー無理…だよなー

最後まで足掻くけど─



最後になるなら、もう一度、ハル殿に会いたかった─



ランバルトは…少し位気に病めば良い─



上空に留まっていた2頭のハーピーが、一気に急降下して来た。












「“結界”と“防御”の魔法陣、展開します!!!」

「いや!そこは中二病的な詠唱じゃないの!?」

「“チュウニビョウ”は分からないけど、そんな緩い感じな時じゃないですよね!?」

「はい、ティモスさんはあの魔物に集中して!ハルはそのまま防御と結界宜しくね!私も─久し振りに祓いまくるわよ─!」

「───え?」

場違いな会話が響き渡り、その次の瞬間には俺を含めて、バラバラに点在している騎士達の足下に魔法陣が展開し、そこから淡い水色の光がフワフワと舞い上がった。

「あ、ネージュは取り敢えずハルの側を離れないでね?」

『勿論、分かっているが…ハーピーは相変わらず煩いな。』



“ハル”



そう呼ばれ、俺達に魔法を掛けたであろう人物が、プラチナブロンドの髪をフワリとさせて、俺達を護る様に目の前に立っている。その横には犬の様な魔獣が寄り添っている。

「ミヤ様、穢れは頼みましたよ?俺は─久し振りの大物で…手加減が出来そうにないけど─」

「手加減って─要るの?」

「─確かに…要りませんね。」

緊張感の無い会話が続くが、ハーピー達もその場に留まり降下して来る気配が無い。このまま逃げられても後々困るな─と思っていると

「ティモスさん、あの2頭?を拘束しますね。その後の事は、宜しくお願いします。」

そう言って、その女性は薔薇の蔦の様な魔法を展開させ、上空に留まっていた2頭のハーピーを一気に拘束した。




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