巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

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第七章ー隣国ー

誰に何を言われようとも

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*エディオル視点*




『はい、そこでストップ!まだハルへのは禁止だから!』

聖女─ミヤ様にそう言われて、グッと体に力を入れて、その場に留まった。きっと、ハル殿から今回の事を聞いたのだろう。

また、ハル殿が俺の目の前に現れた。ミヤ様も一緒と言う事にも驚いたが─。
もう二度と会えないと思っていた。でも、手を伸ばせば届く距離に居る。

ーそれでも、“お触り禁止”とか…辛いなー





それからは、驚きの連続だった。

ハル殿による、6人とレフ…ネージュ殿の転移魔法に拘束魔法。どうやらハル殿は、リュウ殿が言う通り、格の違う─規格外の魔法使いのようだ。あぁ、ミヤ様も規格外の聖女だった。



ーこの2人の組み合わせは、最強なのでは?ー





それから、ミヤ様はジン殿に選択肢を与え、ウォーランド王国に帰ると言う。それに対し、ジン殿も心を決めたようだった。ならば─と、俺はこの国の状況を報告する為に、この国に留まる事にした。

ハル殿とまた離れるのは…正直かなりキツいものがあったが…これが落ち着けば、また一緒に居られる。いや、今度こそ確実に俺の手の中に入れる─。と思い我慢した。すると─


『あの─私…待っていても良いですか?あの─エディオル様と色々話したい事があって─だから、待っていて良いですか?』

手が届きそうで届かない距離に居るハル殿が、小首を傾げて俺を真っ直ぐに見つめている。

『─っ…参ったな…』

と呟きながら左手で口元を覆った。

その姿、仕草─全部が可愛いとか!それに─

“待っていて良いですか?”

そんな事を、言ってもらえるとは思わなかった。

ー少しは─自惚れても良いよな?ー

『ハル殿ありがとう。俺も…聞いて欲しい話がある。それに─ハル殿が俺を待っていてくれるのは…とても嬉しい─。必ず、ハル殿の元に帰るから…待っていて欲しい。』

そう言うと、ハル殿は嬉しそうな、でも泣きそうな顔で微笑んで、そのまま踵を返してミヤ様達のもとへ行き、そのまま魔法陣を展開させてウォーランド王国へと帰って行った。


「マジか…一体、ハルはどんだけ凄い魔力の持ち主なんだ?」

と、俺の横に居たリュウ殿が呟いた。














それから、ジン殿は直ぐに行動に出た。もともと、ジン殿を王都へ─次期国王へ。と、思っていた貴族が多かったようで、今のところ、ジン殿に関しては特に問題は起こっていないようだ。
逆に、隣接している三国から抗議文が届いているのにも関わらず無視をし、穢れも放置をしている国王に非難が集まっている。民衆も分かっているようだし…政権交代も、時間の問題だろう─と思う。








その日は何故か目がさえていて、泊まっていた宿の部屋の窓際に椅子を置き、何とはなしに夜空を眺めていた。


『─騎士よ、起きていて良かった。』

「レフ…ネージュ殿!?」

『ふむ。別に、レフコースでも構わぬぞ?』

ネージュ殿が何故ここに?と、不思議に思っていると

『主がな?ここに来ているのだ。迎えに行ってくれぬか?この宿の中庭で─1人で居る筈だ。』

ーえ?こんな時間に1人で!?ー

ハル殿は魔法使いで、防御に関しては規格外。ケガなどの心配なんて事はないが─気が付けば、中庭に向かって走り出していた。



中庭に佇むハル殿の後ろ姿を目にしたら、もう我慢もできなくて、ハル殿の手を取って俺の方へ引き寄せて、腕の中に閉じ込めた。相変わらず小さくてスッポリと俺の腕の中に収まる。


『夜も遅いし、人目もあるから─』


と言って、“嫌だ”と言う間も与えず、そのままハル殿を俺の部屋へ連れて行った。

相変わらず簡単?に付いて来るから、本当に心配になるが─だと思う事にした。

ハル殿にお茶を手渡してから、すぐ横に腰をおろすと、“向かい側に椅子があるのに?”みたいな顔するハル殿。こちらも相変わらずで、思ってる事が顔に出ている。

どうしてここに来たのかを訊くと

『その─、エディオル様は大丈夫かな?元気かな?って思ったら…あの…来ちゃってました─』

と言った後、恥ずかしくなったのか、目をギュッと瞑って両頬をペチペチと叩くハル殿は─

ー本当に可愛いしかないだろうー

思わず口にも出ていた。ハル殿には聞こえていなかったようで、真っ赤な顔を両手で押さえながら、俺をキョトンとした顔で見上げてくる。

ーくっ─やっぱり、可愛いが続くと辛くなるー




それから、優秀な薬師として、ハル殿が作って持って来てくれたポーションを数本もらった。規格外の魔法使いが作るポーションだ。きっと…万能なんだろう。

それと、防御の魔法を掛けたピアスをくれたのだが─。チラリと、ハル殿の耳を見る。そこには、ハル殿の瞳と同じ色をした魔石が付いたピアスが。俺の手には、俺の瞳と同じ色をした魔石が付いたピアスがある。

「俺は…このピアス─この色の魔石のピアスが欲しいな。」

「─え?」

「それで、こっちの青い魔石のピアスは…ハル殿に着けてもらいたい。」

「───え??」

「駄目…だろうか?」

ハル殿の耳に触れたまま、少し困ったような顔をしてハル殿を窺い見る。

「だ────駄目!じゃ─ないです!!」

ハル殿は、俺が困ったような顔をすると、俺の言う事を聞いてくれるのだ。本当に、心配になる位のお人好しだが─それをうまく利用させてもらう。勿論、“やっぱり無理です!”と言われる前にお礼を言う。

「ありがとう─」

「う゛っ──」

そう。ハル殿は、俺の笑顔?にも弱いみたいだ。ハル殿は、顔を赤くしたまま、自分が着けていたピアスにクリーン魔法を掛けてから、俺にそのピアスをくれた。俺はハル殿の瞳の色のピアス。そして、ハル殿は俺の瞳の色のピアスを着ける。そろそろ帰ると言うハル殿に、そのピアスは外さないでくれと頼みながら、ソッとその耳に触れる。いちいち触らなくても分かってます!と、耳を隠そうとする手を掴んで─

その掌にキスをした

、分かっているだろうか?ー

いや、分かってなくても良いか。そして、その距離のままでハル殿を見つめて囁いた。


「ハル殿。俺がウォーランド王国に帰ったら─覚悟しておいて。もう、手加減しないから─。」




二度も失い掛けた。もうあんな思いは懲り懲りだ。ウォーランド王国に帰ったら、遠慮も手加減もする気は無い。


誰に、何を言われようとも──。







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