恋愛は見ているだけで十分です

みん

文字の大きさ
2 / 61
第1章ー前世ー

婚約者

しおりを挟む
バシンッ

「──っ!?」

左頬に衝撃を受け、私はそのまま床にへたり込んだ。

「「「アドリーヌ!?」」」

ー一体…何が…起こったの!?ー

衝撃を受けた自身の左頬にソッと触れると、ピリッと痛みが走り、「く──っ」と痛みに耐えるように歯を食いしばると、口内に鉄の味が広がった。口内が切れて、血が出ているのだろう。

「あなた!何てことをしたの!?」

そこで叫んだのはジョアンヌ様だった。一緒に来ていた令嬢2人が、へたり込んでいる私の背中を支えてくれている。
子爵令嬢に至っては、両手で口を押えて今にでも倒れそうな程顔色は悪く、体は震えている。その彼女の横に居る第二王子さえも、少し驚いた顔をしている。
どうやら、私は……左頬を叩かれたようだ。そして、私を叩いたのは──

「お前がそうやって彼女をから、彼女が泣いてしまっただろう!」

私と同じ侯爵位の嫡男であり、私の婚約者だった。

「………“”………です…か?」

やっとの事で絞り出せた言葉は、あまりにも小さく震えてもいた。
彼女を睨んだ覚えはないし、まして、叩かれる理由が全く分からない。

「お前もジョアンヌ様と一緒になって、彼女を苛めていたんだろう!お前が彼女を睨んだだけで、あんなにも震えて泣いているんだ。言い逃れはできないぞ!」

「……………」

ーこの婚約者バカは、何を言っているの?ー

喩え、私が彼女を苛めていたとしても、男性が女性に手を上げて良い─と言う理由にはならない。
確かに、彼とは4年前に親同士が決めた婚約ではあったけど、それはお互いがちゃんと理解をしていて、それなりに良い関係を築いて来ていた─と思っていた。学園に入る迄の1年間は週に3日はお互いの家を行き来してお茶をともにし、学園に入学してからも時間が合えば同じ馬車で帰り、学園が休みとなれば街へ出掛けたりもしていた。
それが、いつからか、「忙しいから」と一緒に帰る事が減り、週末のお出掛けやお茶をする事もなくなり、学園生活最後の1年は、生徒会で顔を合わせる以外で会う事は殆ど無かった。

理由は分かっていた。

ここに居るジョアンヌ様は勿論の事、私の背中を支えてくれている2人の令嬢もそうだ。ここに居る4人の令嬢の目の前に居る第二王子と3人の令息は、お互いが婚約者同士でもある。第二王子とその令息3人は、この1年は殆どを子爵令嬢と行動を共にしていたのだ。彼女は生徒会役員ではなかったから、放課後だけは私達と生徒会の仕事をしていたが、それ以外では5人で居るところをよく目にしていた。最初の頃は、それこそ「子爵令嬢1人をのは、彼女の為にならない」とお互いの婚約者を諭そうとしていたが、「希なる光属性の彼女を守っているだけだ」と言われ、挙句には「嫉妬か?見苦しいぞ。」と言われ──私は早々に婚約者を見限った。

もともと、婚約者に愛情はなかった。信頼関係も……たった今綺麗サッパリ無くなった。おまけに暴力も振るわれたなら、何の問題も無く婚約解消─破棄できるだろう。
ジョアンヌ様だけはどうなるかは分からないが、後の2人の令嬢も、婚約解消に動いていると言っていた。そんな状況を、第二王子と3人の令息達はおそらく知らないのだろう。

はぁ──と、ジョアンヌ様が深くため息を吐いた後

「殿下、婚約解消に関しては私達2人だけではどうにもできませんから、殿下から国王陛下に願い出て下さい。宰相である父には、私から申し上げておきます。国王陛下がソレをお認めになれば、私は解消を受け入れますわ。」

「──え?」

「それと……確かに、そこの彼女が苛められているところを見掛けた事はありますが、私が直接彼女を苛めたり、誰かを使って苛めをさせた事はありませんわ。一度も。それを証明する事も可能ですから、証拠が必要と言う事でしたら……そうですわね……明後日には用意する事ができます。あ、勿論、今、暴力を受けたアドリーヌも、他の2人に関しても、苛めには一切関わっていない─と言う証拠も一緒に用意しますわ。」

「「「え!?」」」

3人の令息達の顔色も一瞬にして悪くなる。

「その証拠と共に、被害届けと3人の婚約解消の書類を調えますわ。」

「え?ちょっ────」

「アドリーヌ、大丈夫……じゃないわね。真っ赤に腫れてしまって……。学園ここからは私の邸が一番近いから、私の邸で手当をしましょう。」

ジョアンヌ様は、焦ったように声を出した私の婚約者を無視して私の方へと振り返り、痛まし気な顔をしながら私を気遣ってくれ、私の手を握り立たせてくれた後「それでは、失礼致します」とだけ言って、私の手をひいたままで、私達4人は生徒会室を後にした。

しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
幼い頃から天の声が聞こえるシラク公爵の娘であるミレーヌ。 この天の声にはいろいろと助けられていた。父親の命を救ってくれたのもこの天の声。 そして、進学に向けて騎士科か魔導科を選択しなければならなくなったとき、助言をしてくれたのも天の声。 ミレーヌはこの天の声に従い、騎士科を選ぶことにした。 なぜなら、魔導科を選ぶと、皇子の婚約者という立派な役割がもれなくついてきてしまうからだ。 ※完結しました。新年早々、クスっとしていただけたら幸いです。軽くお読みください。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜

嘉神かろ
恋愛
 魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。  妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。  これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

聖女の妹、『灰色女』の私

ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。 『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。 一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?

処理中です...