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第三章ー学園生活ー
穏やかな学園生活
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シェイラ=ペイトリン子爵令嬢は、とても優秀なようで、実力でAクラスに入れた。
この学園は100年前とは違って、ハッキリとした実力重視になっていた。各学年AクラスからDクラス迄あり、成績順にAクラスからDクラスに振り分けられている。そこに、身分は考慮されていない。
100年前も、表向きは成績順となってはいたが、平民や下位貴族の者がいくら優秀であっても、AクラスとBクラスに入る事はなかった。
そう。あの聖女は、成績はイマイチだったけど、“聖女”と言う理由で、第二王子達の居るAクラスに入っていたのだ。
『私には難しくて……』と、彼女が儚げに呟けば、『分からないところがあれば、教えてあげよう』と、周りの令息が手を差し伸べる──そう言った場面を目の当たりにする事がよくあったのを覚えている。
ー聖女と言うだけで持ち上げられて…可哀想にー
と、彼女の心配をしていたアドリーヌは、なんてお人好しで馬鹿だったのか……。
その裏では、『困っている彼女の近くに居ながら、何も助けてやらない嫌な女』と言われていたのだ。確かに、困っていたのは知っていたが、『教えて欲しい』『助けて欲しい』と、彼女から直接言われた事なんて、一度もなかった。彼女がいつも助けを求めたのは──第二王子やその側近達だけだった。
ーどっちが……悪女なのかー
「そうそう、彼女が私の助手のナディアだ。」
「あぁ、貴方が。宜しくお願いします。」
と、第三王子は何の躊躇いもなく、私に軽く頭を下げた。
王族に頭を下げられるとは─本当に心臓に悪い。ただ、学園内に関しては、教える側と教わる側となる為、これが正しい行動となるのだ。
「私はあくまでも助手ですが……こちらこそ、宜しくお願いします。」
ー血は繋がっているとしても、第二王子と第三王子は別人だ。勿論──聖女もー
ルシエント様を半ば囲むようにして、5人で楽しそうに話しているのを、私は一歩後ろから眺めていた。
入学式が行われた翌週から、1週間は午前中迄の授業で、その翌週から1日通しての通常の授業が始まった。
ルシエント様が講師として受け持っているのは、1年生の全4クラスと、2年生から4年生で魔法科を選択している(各学年一クラスずつの)3クラスの合計7クラス。
ルシエント様は、王城付き魔道士であり、王太子の側近でもある為、生徒達もかなりの意気込みで授業を受けている。魔道士は特に実力重視なところが強いせいか、魔法科ではイケメンなルシエント様に秋波を飛ばすような女生徒はいなかった。
寧ろ──
「ナディア先生!この魔法なんですけど…」
「ナディア先生、この魔法がうまくできなくて…」
「ナディア先生、一緒にお茶しませんか?」
と、何故か女生徒からは、私の方が好かれている。しかも、相手が侯爵令嬢であろうが、平民の私を侮ったりする事も全く無い。純粋に…慕ってくれていると言う感じだ。
「そりゃあ、魔道士を目指す者達は、実力がなければなれないと分かっているからね。それが、どれだけ大変なのかも分かっているだろうし。だから、彼女達は純粋にナディアの事を慕っているんだと思うよ。」
と、ルシエント様が言う通りなんだろう。
「それに、ナディアは本当に優秀な魔道士だから、もっと自信を持って良いと思うよ。」
なんて褒められると、その分より一層頑張ろ!と言う気持ちになる─なんとも単純な思考回路を持ってしまったものだ。
それとは反対に、1年生は──
やっぱり、私に敵対心?のようなモノを向けてくる令嬢が多い。勿論、ルシエント様に秋波を送る令嬢も多い。そのせいか、1年生の授業を終えた後のルシエント様の疲労感とイライラ度が半端無い。
見た目は普段と変わらず、爽やか笑顔のルシエント様だけど、何となく空気がピリピリとするのだ。女嫌い?なのも分かるけど、25歳ともなれば、そろそろ─本気で考えないとダメなんじゃないだろうか?
ー他人の心配をする程、自分もその辺はダメダメなんだけどー
それでも、相手は15歳のお子様で、私は前世合わせて39歳で、結構凄い体験の持ち主なせいか、敵対心を向けられても蔑まれても…意外と平気だったりする。
私にとっての地雷は、“聖女”だけなのかもしれない。後は、100年前のような事が起こらないように──祈るのみだ。
不安だった学園生活も、令嬢達からの敵意の目を向けられる以外は特に問題も無く、忙しいながらも穏やかな日々を送る事がでた。
学園も季節と一緒に区切りがあり、翠の候が1学期、朱の候が2学期、白の候が3学期となるが、今日、その1学期が無事終了したのだった。
この学園は100年前とは違って、ハッキリとした実力重視になっていた。各学年AクラスからDクラス迄あり、成績順にAクラスからDクラスに振り分けられている。そこに、身分は考慮されていない。
100年前も、表向きは成績順となってはいたが、平民や下位貴族の者がいくら優秀であっても、AクラスとBクラスに入る事はなかった。
そう。あの聖女は、成績はイマイチだったけど、“聖女”と言う理由で、第二王子達の居るAクラスに入っていたのだ。
『私には難しくて……』と、彼女が儚げに呟けば、『分からないところがあれば、教えてあげよう』と、周りの令息が手を差し伸べる──そう言った場面を目の当たりにする事がよくあったのを覚えている。
ー聖女と言うだけで持ち上げられて…可哀想にー
と、彼女の心配をしていたアドリーヌは、なんてお人好しで馬鹿だったのか……。
その裏では、『困っている彼女の近くに居ながら、何も助けてやらない嫌な女』と言われていたのだ。確かに、困っていたのは知っていたが、『教えて欲しい』『助けて欲しい』と、彼女から直接言われた事なんて、一度もなかった。彼女がいつも助けを求めたのは──第二王子やその側近達だけだった。
ーどっちが……悪女なのかー
「そうそう、彼女が私の助手のナディアだ。」
「あぁ、貴方が。宜しくお願いします。」
と、第三王子は何の躊躇いもなく、私に軽く頭を下げた。
王族に頭を下げられるとは─本当に心臓に悪い。ただ、学園内に関しては、教える側と教わる側となる為、これが正しい行動となるのだ。
「私はあくまでも助手ですが……こちらこそ、宜しくお願いします。」
ー血は繋がっているとしても、第二王子と第三王子は別人だ。勿論──聖女もー
ルシエント様を半ば囲むようにして、5人で楽しそうに話しているのを、私は一歩後ろから眺めていた。
入学式が行われた翌週から、1週間は午前中迄の授業で、その翌週から1日通しての通常の授業が始まった。
ルシエント様が講師として受け持っているのは、1年生の全4クラスと、2年生から4年生で魔法科を選択している(各学年一クラスずつの)3クラスの合計7クラス。
ルシエント様は、王城付き魔道士であり、王太子の側近でもある為、生徒達もかなりの意気込みで授業を受けている。魔道士は特に実力重視なところが強いせいか、魔法科ではイケメンなルシエント様に秋波を飛ばすような女生徒はいなかった。
寧ろ──
「ナディア先生!この魔法なんですけど…」
「ナディア先生、この魔法がうまくできなくて…」
「ナディア先生、一緒にお茶しませんか?」
と、何故か女生徒からは、私の方が好かれている。しかも、相手が侯爵令嬢であろうが、平民の私を侮ったりする事も全く無い。純粋に…慕ってくれていると言う感じだ。
「そりゃあ、魔道士を目指す者達は、実力がなければなれないと分かっているからね。それが、どれだけ大変なのかも分かっているだろうし。だから、彼女達は純粋にナディアの事を慕っているんだと思うよ。」
と、ルシエント様が言う通りなんだろう。
「それに、ナディアは本当に優秀な魔道士だから、もっと自信を持って良いと思うよ。」
なんて褒められると、その分より一層頑張ろ!と言う気持ちになる─なんとも単純な思考回路を持ってしまったものだ。
それとは反対に、1年生は──
やっぱり、私に敵対心?のようなモノを向けてくる令嬢が多い。勿論、ルシエント様に秋波を送る令嬢も多い。そのせいか、1年生の授業を終えた後のルシエント様の疲労感とイライラ度が半端無い。
見た目は普段と変わらず、爽やか笑顔のルシエント様だけど、何となく空気がピリピリとするのだ。女嫌い?なのも分かるけど、25歳ともなれば、そろそろ─本気で考えないとダメなんじゃないだろうか?
ー他人の心配をする程、自分もその辺はダメダメなんだけどー
それでも、相手は15歳のお子様で、私は前世合わせて39歳で、結構凄い体験の持ち主なせいか、敵対心を向けられても蔑まれても…意外と平気だったりする。
私にとっての地雷は、“聖女”だけなのかもしれない。後は、100年前のような事が起こらないように──祈るのみだ。
不安だった学園生活も、令嬢達からの敵意の目を向けられる以外は特に問題も無く、忙しいながらも穏やかな日々を送る事がでた。
学園も季節と一緒に区切りがあり、翠の候が1学期、朱の候が2学期、白の候が3学期となるが、今日、その1学期が無事終了したのだった。
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