巻き込まれではなかった、その先で…

みん

文字の大きさ
15 / 51

15 兄としての守り方

しおりを挟む
ー滅茶苦茶知ってますー

不思議な事に、同じタイミングで魔法陣が展開していたのにも関わらず、清水さんの方が1週間程早くイーレンにやって来ていたらしい。その為、私の召還には失敗したと思っていた─と。

「私を召還したのは……お姉様…ですか?なら…私を異世界に飛ばしたのも、お姉様ですか?私が無能だったから?要らない子だったから?それなら何故……今更私を……呼び戻したりしたんですか!?」

私の事を勝手に棄てておいて、今更………もう、イーレンここには二度と戻って来たくなんてなかったのに。

「ブルーナ、落ち着いてくれ……。ブルーナ……すまない!お前を異世界に飛ばしたのは………私なんだ………。」
「───え?」

ーお兄様が?何故?お兄様は……私の味方だと……ー

「お兄様も……お兄様にとっても、私は……無能な恥さらしな…要らない子だったんですね……」
「それは違う!私は……、ブルーナを助ける為には…異世界へ飛ばすしかない─と思ったんだ……。」


──私が日本に飛ばされる前日の夜の事だ。珍しくマトモな食事が出て、その上デザートも出て来て、喜んで食べると───体中が痺れ出したのだ。「助けて」と言う言葉さえ出す事もできず、その痺れから来る痛みに耐えていると、お姉様とフライアが嗤いながらやって来て『この痺れの効果がいつまで続くか、記録しなきゃね。』と、苦しんでいる私を見下ろしたまま、そう呟いたのだ。
それは、お姉様が試作したポーションの実験だったのだ。もともと弱っていた体に、どんな物かも分からない毒が流れ込んだのだ。もう、限界がきていた事は…自分が一番よく分かっていた。

ーこれで…私もようやく自由に…なれる?ー

と思った事を覚えている。それが、ブルーナとしての最後の記憶だった。


「私がブルーナの異変に気付いた時には…ブルーナは既に危ない状態で……それでも、私は、お前を助けたくて…でも………あの時の私には、何の力も無くて……」


15年前のお兄様は、王太子ではあったものの、魔法使いである妹の前では何もできない存在だった。父である国王が、ヒューゴ王太子よりもニコル魔法使いを優遇していたから。父は妻を殺した無能な私を娘と認めた事は無く、お姉様が私にしている事は、どんな事でも黙認していた。それで私が死んだとしても……お姉様を咎める事はしなかっただろうし、寧ろ喜んだのではないだろうか?

「兎に角…誰も助けてくれないのであれば……一縷の望みを賭けて、ブルーナを異世界に飛ばす事にしたんだ。その魔法陣に、“ブルーナを護ってくれる者の元へ”と…刻み込んで………。」

もともと、私を助ける為に準備をしていたらしく、お兄様も魔力を溜めた魔石を持っていたそうだ。


“ブルーナを護ってくれる者の元へ”



ーあぁ、だからー



お兄様のお陰だったのか。優しい両親ができて、他人ひとの優しさと温もりを知る事ができた。優しく見守ってくれる上司にも出会えた。

「だから、ブルーナを疎んでいた訳ではないんだ。」

それと、私が何処に行ったのか痕跡を辿られる事がないように、私へと繋がる痕跡を綺麗に消したそうだ。
暫くの間は、お姉様も私を探していたけど、それから1週間後には“第二王女は持病が悪化した為療養の為、王都を離れた”と言う事になったそうだ。

「本当に……すまな───」
「お兄様、謝らないで下さい。寧ろ……私を飛ばしてくれて、ありがとうございました。私……飛ばされた世界で……とても…幸せな時間を過ごす事ができたんです。」

それから私は、飛ばされてからの話をした。暫くの間記憶を失っていた事、優しい両親ができた事も。軽く……初恋をした事も。ネックレスはその人から貰った物だと伝えると「そうか……」と、優しく笑ってくれた。そして……清水渚沙との関係も説明した。「──そうか…」と、今度は苦虫を噛み潰したような顔をされた。まぁ…それは仕方無い。ある意味、清水さんはお姉様属性だから。

「だから……ニコルとナギサは馬が合うのかも知れないな。」

どうやら、この1週間程で2人はお互いを名前で呼び合う程うまくやっているそうで、聖女との関係が良好になればなる程、問題児扱いされていたお姉様への見方が好転していきつつあるらしい。

ーやっぱり、この国の貴族はおかしいー

確かに、聖女とは有り難い存在だし、召喚したのはこちら側の都合だから、敬意を持って接するのは悪い事ではない。だからと言って、その聖女とうまく関係を築いているから─と言う理由で、お姉様のが帳消しになる事はないのだ。

「お兄様も……苦労しますね………」
「ありがとう……ブルーナ。理解者が増えて嬉しいよ。いや………ブルーナが元気で居てくれて、私は本当に嬉しい。独り善がりなのは分かってはいるが……またこうして会えて、話ができて、私は本当に嬉しい。」
「お兄様………」

お兄様に会えた事は嬉しいけど……イーレンここに戻って来た事については…微妙なところな訳で……私は、素直に「私も会えて嬉しいです」とは言えなかった。








❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(*ˊᗜˋ*)و✧*。✧*。


しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

母を亡くした公爵令嬢は、虐げられないが、今日も願いが叶わない

春風由実
恋愛
「何故お前が生きた?」 それは怪我をして長く眠っていたエルリカが、目覚めた直後に父親である公爵から掛けられた言葉だった。 「お前こそが、女神の元に行くべきだった!」 父親から強い口調で詰られたエルリカ。 普通の令嬢は、ここで泣くか、その後立ち直れなくなるという。 けれどエルリカは違った。 「あなたこそ、何をのうのうと元気にしているのですか?」 そうしてこの日父娘は、それぞれに絶縁を宣言した。 以来、母方の祖父母に引き取られ、侯爵領で過ごしてきたエルリカ。 ところが公爵は、いつまでもエルリカを除籍する手続きを実行しなかった。 おかげで名ばかりの公爵令嬢のまま、エルリカが王都へと戻る日がやって来てしまう──。

そんな世界なら滅んでしまえ

キマイラ
恋愛
魔王を倒す勇者パーティーの聖女に選ばれた私は前世の記憶を取り戻した。貞操観念の厳しいこの世界でパーティーの全員と交合せよだなんてありえないことを言われてしまったが絶対お断りである。私が役目をほうきしたくらいで滅ぶ世界なら滅んでしまえばよいのでは? そんなわけで私は魔王に庇護を求めるべく魔界へと旅立った。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

処理中です...