26 / 51
26 この世界で
しおりを挟む
「まさか、セオ君がこの世界の人だったとは…思わなかった…。」
「俺だって、翠がこの世界の人で、その上イーレンの王女様だとは思わなかった…。」
しかも、お姉様の想い人がセオ君とか…。
「ひょっとして、日本に来たのはお姉様絡みで?」と訊くと、「翠に隠す意味もないから」と言って、何故日本来る事になったのかを教えてくれた。
やっぱり、日本に来る事になったのは媚薬事件が理由だった。媚薬を盛ったとされる使用人が自殺した事で幕を閉じた騒動だったけど、その媚薬がイーレンで作られた物だと言う事は判明していたそうで、秘密裏にセオ君サイドが動いていたそうだ。その間、セオ君の安全を守る為と、気分転換に─と、日本に送られたと言う事だった───んだけど……
「え?何?その……“気分転換にちょっとそこまで行っておいで”的なノリは…。そんな簡単に異世界を行き来する事なんて出来ないよね?」
召喚や召還には大量の魔力が必要になる。魔法使いのお姉様だって、魔力を込めた魔石を大量に使ったと聞いた。それも、2度3度などできないと。
「うん。だから、母は……規格外のチートな魔法使いなんだ。母は……余裕で笑顔で俺を日本に送り出したし、こっちに還って来る時も、母が魔力を込めたブレスレット一つだけで還ってこれたんだ。」
「──マジですか?」
「──マジです。」
ーあんな小柄な体のどこに、魔力があるんだろうか?ー
なんでも、ハルさん自身も一度日本に還った事があるそうだ。そして、日本からこっちの世界に戻って来る時に、大聖女のミヤ様を連れて戻って来たらしい。
ー凄すぎませんか!?ー
「なら、ハルさんが居れば、日本とこっちと行き来し放題だね?」と言えば、そうではないらしい。何でも、異世界を行き来できる魔力はあっても、行き来する度に体に掛かる負担が大きくなるようで、ハルさんとミヤ様も3度目の異世界転移後は、体中が軋むような痛みに襲われたそうで、もし、また異世界転移する事があれば、転移後の生死は分からないらしい。
「なら、私もセオ君も、また日本に行けたとしても、その時は、この世界には無事に戻って来る事はできないって事だね。」
なら、私はもう日本に行く事はないだろう。
「翠は…日本に戻りたい?」
私の手をギュッと握って、困った様な顔をしているセオ君に、フルフルと首を左右に振る。
「小南さん達にまた会えるなら会いたいとは思うけど…セオ君がこの世界に居るなら、私もこの世界で…セオ君と一緒に生きて行きたいな─と……思って…ます……。」
ー私、今、凄い事言っちゃったよね!?ー
恥ずかし過ぎてポンッと、顔が熱を帯びるのと同時に、セオ君は嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「俺も、この世界で、翠と一緒に生きて行きたいと思ってる。俺は、ただの騎士でしかないけど…それでも良い?」
「私だって、王女とは名ばかりの…無能な…ただの吉岡翠だから。私を選んでくれても、何の後ろ盾もあげる事はできないけど…それでも良い?」
実際、魔力持ちではあったけど、王族としては何の役にも立っていなかったし、つい最近までは異世界で一般市民としての生活を送っていたのだ。私からセオ君にあげられるモノは…何もない。
「何も要らない。翠だけが居れば他は要らないし、何か要るモノがあれば自分で手に入れるから。翠は、その身一つで俺の処に来てくれたら良いから。」
「──ありがとう。」
ーそう言ってくれるなら、私が進む路は一つだー
「あ、シルヴィもこっちに戻って来てる?」
「戻って…って、セオ君は、シルヴィが魔獣だって…気付いてたの!?」
「多分そうだろうな─と。日本で見た時に、少し違和感があったから。」
ー凄いなぁ……私は全く気付かなかったのにー
「おとなしいとは言え、魔獣は魔獣だから、私の部屋でお留守番してるの。また後で会いに行く?シルヴィって、私よりセオ君に懐いていたから、会ったら喜ぶと思う。」
「うん。また落ち着いたら会わせてもらうよ。」
それからも、誰かが呼びに来るまで、その庭園のベンチに座ってセオ君と色んな話をした。何より興味を惹かれたのは──
「媚薬の緩和─解毒のポーションを作ったのが…ハルさん!?」
「俺の母が魔法使いって事は極秘事項で、一部の者にしか知られてはいないんだけど、薬師としては有名な程、優秀な薬師なんだ。」
「まさか…ウォーランド王国のポーションのレベルが上がったのって…」
「うん。母のお陰だな。」
ー恐るべし、ハル=カルザインー
「えっと…ハルさんって、凄過ぎない?失礼かもしれないけど、見た目とは……全然違うね?こう…護ってあげたくなるような…可愛らしい小動物なのに…。私、初めてセオ君とハルさんが一緒に居る所を目にした時……てっきりセオ君の婚約者かと思ったり……」
「婚約者………」
「ハルさん、見た目が…若いから──」
「翠、それ、冗談でも、絶対に……絶対に父の前では言わないようにして欲しい。母の為に──。」
「え?う…うん、分かった。言わない。」
“何で?”─とは、訊けなかった。セオ君が、あまりにも真剣な顔をしていたから。
その理由は、数日後に知る事になるのだけど、そんな事はその時の私には分からなかった事である。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(。˃ ᵕ ˂ )و♪
「俺だって、翠がこの世界の人で、その上イーレンの王女様だとは思わなかった…。」
しかも、お姉様の想い人がセオ君とか…。
「ひょっとして、日本に来たのはお姉様絡みで?」と訊くと、「翠に隠す意味もないから」と言って、何故日本来る事になったのかを教えてくれた。
やっぱり、日本に来る事になったのは媚薬事件が理由だった。媚薬を盛ったとされる使用人が自殺した事で幕を閉じた騒動だったけど、その媚薬がイーレンで作られた物だと言う事は判明していたそうで、秘密裏にセオ君サイドが動いていたそうだ。その間、セオ君の安全を守る為と、気分転換に─と、日本に送られたと言う事だった───んだけど……
「え?何?その……“気分転換にちょっとそこまで行っておいで”的なノリは…。そんな簡単に異世界を行き来する事なんて出来ないよね?」
召喚や召還には大量の魔力が必要になる。魔法使いのお姉様だって、魔力を込めた魔石を大量に使ったと聞いた。それも、2度3度などできないと。
「うん。だから、母は……規格外のチートな魔法使いなんだ。母は……余裕で笑顔で俺を日本に送り出したし、こっちに還って来る時も、母が魔力を込めたブレスレット一つだけで還ってこれたんだ。」
「──マジですか?」
「──マジです。」
ーあんな小柄な体のどこに、魔力があるんだろうか?ー
なんでも、ハルさん自身も一度日本に還った事があるそうだ。そして、日本からこっちの世界に戻って来る時に、大聖女のミヤ様を連れて戻って来たらしい。
ー凄すぎませんか!?ー
「なら、ハルさんが居れば、日本とこっちと行き来し放題だね?」と言えば、そうではないらしい。何でも、異世界を行き来できる魔力はあっても、行き来する度に体に掛かる負担が大きくなるようで、ハルさんとミヤ様も3度目の異世界転移後は、体中が軋むような痛みに襲われたそうで、もし、また異世界転移する事があれば、転移後の生死は分からないらしい。
「なら、私もセオ君も、また日本に行けたとしても、その時は、この世界には無事に戻って来る事はできないって事だね。」
なら、私はもう日本に行く事はないだろう。
「翠は…日本に戻りたい?」
私の手をギュッと握って、困った様な顔をしているセオ君に、フルフルと首を左右に振る。
「小南さん達にまた会えるなら会いたいとは思うけど…セオ君がこの世界に居るなら、私もこの世界で…セオ君と一緒に生きて行きたいな─と……思って…ます……。」
ー私、今、凄い事言っちゃったよね!?ー
恥ずかし過ぎてポンッと、顔が熱を帯びるのと同時に、セオ君は嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「俺も、この世界で、翠と一緒に生きて行きたいと思ってる。俺は、ただの騎士でしかないけど…それでも良い?」
「私だって、王女とは名ばかりの…無能な…ただの吉岡翠だから。私を選んでくれても、何の後ろ盾もあげる事はできないけど…それでも良い?」
実際、魔力持ちではあったけど、王族としては何の役にも立っていなかったし、つい最近までは異世界で一般市民としての生活を送っていたのだ。私からセオ君にあげられるモノは…何もない。
「何も要らない。翠だけが居れば他は要らないし、何か要るモノがあれば自分で手に入れるから。翠は、その身一つで俺の処に来てくれたら良いから。」
「──ありがとう。」
ーそう言ってくれるなら、私が進む路は一つだー
「あ、シルヴィもこっちに戻って来てる?」
「戻って…って、セオ君は、シルヴィが魔獣だって…気付いてたの!?」
「多分そうだろうな─と。日本で見た時に、少し違和感があったから。」
ー凄いなぁ……私は全く気付かなかったのにー
「おとなしいとは言え、魔獣は魔獣だから、私の部屋でお留守番してるの。また後で会いに行く?シルヴィって、私よりセオ君に懐いていたから、会ったら喜ぶと思う。」
「うん。また落ち着いたら会わせてもらうよ。」
それからも、誰かが呼びに来るまで、その庭園のベンチに座ってセオ君と色んな話をした。何より興味を惹かれたのは──
「媚薬の緩和─解毒のポーションを作ったのが…ハルさん!?」
「俺の母が魔法使いって事は極秘事項で、一部の者にしか知られてはいないんだけど、薬師としては有名な程、優秀な薬師なんだ。」
「まさか…ウォーランド王国のポーションのレベルが上がったのって…」
「うん。母のお陰だな。」
ー恐るべし、ハル=カルザインー
「えっと…ハルさんって、凄過ぎない?失礼かもしれないけど、見た目とは……全然違うね?こう…護ってあげたくなるような…可愛らしい小動物なのに…。私、初めてセオ君とハルさんが一緒に居る所を目にした時……てっきりセオ君の婚約者かと思ったり……」
「婚約者………」
「ハルさん、見た目が…若いから──」
「翠、それ、冗談でも、絶対に……絶対に父の前では言わないようにして欲しい。母の為に──。」
「え?う…うん、分かった。言わない。」
“何で?”─とは、訊けなかった。セオ君が、あまりにも真剣な顔をしていたから。
その理由は、数日後に知る事になるのだけど、そんな事はその時の私には分からなかった事である。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(。˃ ᵕ ˂ )و♪
142
あなたにおすすめの小説
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
母を亡くした公爵令嬢は、虐げられないが、今日も願いが叶わない
春風由実
恋愛
「何故お前が生きた?」
それは怪我をして長く眠っていたエルリカが、目覚めた直後に父親である公爵から掛けられた言葉だった。
「お前こそが、女神の元に行くべきだった!」
父親から強い口調で詰られたエルリカ。
普通の令嬢は、ここで泣くか、その後立ち直れなくなるという。
けれどエルリカは違った。
「あなたこそ、何をのうのうと元気にしているのですか?」
そうしてこの日父娘は、それぞれに絶縁を宣言した。
以来、母方の祖父母に引き取られ、侯爵領で過ごしてきたエルリカ。
ところが公爵は、いつまでもエルリカを除籍する手続きを実行しなかった。
おかげで名ばかりの公爵令嬢のまま、エルリカが王都へと戻る日がやって来てしまう──。
そんな世界なら滅んでしまえ
キマイラ
恋愛
魔王を倒す勇者パーティーの聖女に選ばれた私は前世の記憶を取り戻した。貞操観念の厳しいこの世界でパーティーの全員と交合せよだなんてありえないことを言われてしまったが絶対お断りである。私が役目をほうきしたくらいで滅ぶ世界なら滅んでしまえばよいのでは?
そんなわけで私は魔王に庇護を求めるべく魔界へと旅立った。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる