神様自学

天ノ谷 霙

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4月9日 帰り道

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帰りの支度を終え、学校を出る。今、図書室では何をしているのだろうか。由芽さんが買って来た飲み物を飲みながら休憩でもしているのかな、なんて考えながら一年通い慣れた帰り道を歩く。
「はぁ…」
溜め息を一つ。空が暗くなるのと同じように、自分の気分も沈んでいった。
何故?
私は今日、嫌なことなんて無かった。昔のことも思い出していないのに。段々と、暗い気持ちが重しのように私にのしかかり、ずきずきと奥の方が痛んだ。筋肉に緊張が走る。足取りも重くなり、帰るのがおっくうになる。おかしなくらいの疲労感。まぶたが下がって来る。
どうして?
私の足は、すっかり暗くなった空に混じった、黒く、赤くそびえ立つ鳥居の前で止まった。
ふらふらと中に入り、巫女さんの前を通り過ぎる。落ち葉を掃く音が遠くに聞こえる。
「いなり、さま…」
私は、このままでは倒れてしまうと思い、僅かな体力を使って念じながら腕を振り下ろした。
「……う……!!」
誰かの声と下駄のような足音が聞こえたが、抵抗むなしく、私はそっと目を閉じた。

「………ん…」
「おや、起きたか夕音」
頭に冷たさを感じてゆっくりと目を開けた。目の前には稲荷様。
あれ、私、どうして。
「……稲荷様…?」
「身体が重いか?感じすぎたようだな」
「…感じ…?」
むくり、と体を起こす。稲荷様はそっと私の頭を撫でた。
「夕音が感じていた疲労感、緊迫感は多分、お主が見ていた二人の奥じゃ」
「お、く…?」
今は大分、すっきりしている。
「ああ。お主の記憶を辿らせてもらったが、二人にいろいろあったらしい。女の方が手違いで閉じ込められ、男が必死に探していた。女はとても怖がっていた。多分、その感覚を感じ取り、体調に出てしまったのだろう」
「そ、っか…。でも、今、凄く嬉しい…」
「ならば、”晴れ”たのだろうな」
「多分、そう…」
私は”晴れ”たという言葉に何の違和感も感じずに意味を読み取った。”晴れ”というのは二人が結ばれたということだと。
「あ、今…何時!?」
「ん?羊…人間で言うところの、19時だ」
「あ、ありがとうございます。じゃあ、帰らなくちゃ…」
「そうか、お大事にの。丁度迎えも来たようだぞ」
「迎え…?」
何のことだろうと思いながら、深くお辞儀をして元の姿に戻る。そして、鳥居が見えた時、月明かりに照らされる見慣れた姿を見つけた。
「ら、羅樹!?」
「あ、夕音!やっぱりここにいた」
制服姿のまま、立っている。荷物を持っていないことから、一度帰った後だと推測できる。
「お母さんが『あれ?夕音ちゃんは?』って言っていたから、探しに来たんだ」
「あ、そ、そっか。……ごめん」
「何で謝るのー?まぁ、いっか。帰ろう」
「うん、…ありがとう」
あんまりお礼を言うのは得意では無いが、探しに来てくれた事には感謝しないといけないと思った。言った後に、頬が熱を帯びるのを感じた。
「どういたしまして!」
月明かりの下、私の方をまっすぐ見て笑う羅樹。その姿に、私の鼓動が速くなる。それを誤魔化すように会話を続けながら、少しでも長くこの時間が続けば良いのに、と考えながら歩いていた。
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