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4月9日 図書室にて
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私はようやく図書室についた。いつの間にか稲荷様はどこかへいなくなっていった。図書室では、私のクラスの学級委員二人がプリントや名簿を製作していた。夕日が少しだけ差した図書室。そこに二つの影が落ちる。小野くんと、由芽さん。小野くんが指示を受けたらしく、由芽さんが聞くとそれに答えていた。その答えの9割が「俺がやる」だったことに、少し笑ってしまった。やがて、二人の分担が決まったらしく静かになった。だんだん暗くなっていく図書室に、風の通る音だけが鳴る。私の行動は二人には伝わらないし聞こえない。一人だけ違う世界にいるという感覚が不思議で、くるくると回る。念じていなかったのでどん、と本棚にぶつかってしまった。私は一気に背筋が凍った。
どうしよう。
その動揺だけが私の脳内を満たした。ぱっと二人を見ると、小野くんは集中して全く気付いていない。由芽さんは丁度仕事が終わったらしく、本棚…ではなく窓を見つめた。風が吹いて、さらさらと二人の髪が揺れる。由芽さんは窓から目線を外し、小野くんを見つめた。瞳の奥に何かの感情を感じた。小野くんとの距離、数十センチ。なのに心の内で由芽さんが壁を作ってるようだった。視えた。彼女が考え感じていることが。
(「小野くんは、綺麗。私のように汚れた心じゃない」)
それは、情報屋としてたくさんの人の言葉に関わってきた由芽さんの、唯一の弱いところ。彼女はそんな様子を瞳に隠し、誰にも悟られないよう過ごしてきたのだと感じる。私には、どうすることも出来ない。
小野くんからは、恋の感情が見える。今は仕事に集中しているが、分担を決める時は夕日で見えずらかったが耳が赤くなっていた。
「へ!?」
数分経って、小野くんが由芽さんの視線に気付いて驚いたようで、椅子がガタンと鳴った。由芽さんも目を見開いていた。二人で目を見開くこと数秒。沈黙を破ったのは由芽さんの笑い声だった。由芽さんの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。瞳の奥に先ほどまでの弱さは消えていた。
由芽さんは大笑いしたことへのお詫びに飲み物を買ってくる、と図書室を後にした。
私はどっちにいようか迷って、由芽さんについて行った。階段の影で人に戻り、飲み物を買う由芽さんに偶然を装って話しかけた。
「あ、由芽さん」
「ん?あ、夕音ちゃん。まだ残ってたの?」
「うん、まぁね。由芽さんも?」
「うん、委員会の方でちょっと。そういえば霙に伝えてくれてありがと」
「あ、うん!どう致しまして」
「ん、じゃあまたね」
由芽さんは飲み物を二本買って、手を振った。私も手を振り返して由芽さんを見送った。
私もそろそろ帰るか、と鞄を取りに行った。
どうしよう。
その動揺だけが私の脳内を満たした。ぱっと二人を見ると、小野くんは集中して全く気付いていない。由芽さんは丁度仕事が終わったらしく、本棚…ではなく窓を見つめた。風が吹いて、さらさらと二人の髪が揺れる。由芽さんは窓から目線を外し、小野くんを見つめた。瞳の奥に何かの感情を感じた。小野くんとの距離、数十センチ。なのに心の内で由芽さんが壁を作ってるようだった。視えた。彼女が考え感じていることが。
(「小野くんは、綺麗。私のように汚れた心じゃない」)
それは、情報屋としてたくさんの人の言葉に関わってきた由芽さんの、唯一の弱いところ。彼女はそんな様子を瞳に隠し、誰にも悟られないよう過ごしてきたのだと感じる。私には、どうすることも出来ない。
小野くんからは、恋の感情が見える。今は仕事に集中しているが、分担を決める時は夕日で見えずらかったが耳が赤くなっていた。
「へ!?」
数分経って、小野くんが由芽さんの視線に気付いて驚いたようで、椅子がガタンと鳴った。由芽さんも目を見開いていた。二人で目を見開くこと数秒。沈黙を破ったのは由芽さんの笑い声だった。由芽さんの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。瞳の奥に先ほどまでの弱さは消えていた。
由芽さんは大笑いしたことへのお詫びに飲み物を買ってくる、と図書室を後にした。
私はどっちにいようか迷って、由芽さんについて行った。階段の影で人に戻り、飲み物を買う由芽さんに偶然を装って話しかけた。
「あ、由芽さん」
「ん?あ、夕音ちゃん。まだ残ってたの?」
「うん、まぁね。由芽さんも?」
「うん、委員会の方でちょっと。そういえば霙に伝えてくれてありがと」
「あ、うん!どう致しまして」
「ん、じゃあまたね」
由芽さんは飲み物を二本買って、手を振った。私も手を振り返して由芽さんを見送った。
私もそろそろ帰るか、と鞄を取りに行った。
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