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9.見守り人
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「え、お姉さん?」
「そ、姉」
「弥生くんって、お姉さんいるんだ……」
新しい本を本棚に入れ終え、空になったダンボールを畳む。ダンボールは読書スペースのテーブルに置いておけば、酒井先生が回収してくれるらしい。
まさか、僕が姉といるところを見て、僕のことが好きだと自覚したなんて。姉にこき使われる場面だったのに。思わず笑ってしまうと、晴人は拗ねたような顔をした。
「仲良いんだなって、思って、嫉妬した…お姉さんか……」
「フッ……あれは、姉に郵便物が届くから、親に見つからないように、ポストから出して、姉の部屋に入れとけっていう命令をされてたところ。僕が委員会の仕事があるって言っても、『私よりは早く帰るよね?』って圧かけてきた。姉には逆らえないんだよね」
姉・葉月に逆らうと碌なことがない。小学生の時、来客用にと用意していたお菓子を食べたことも、壁に落書きしたことも、僕じゃないのに、姉の手口が巧妙で、僕がしたことになっていた。姉が僕に罪をなすりつけてきたのは、姉のお願いを叶えていなかった時だ。小学生の頃は可愛いものだったが、今逆らったら、何の罪を被せられるか……考えただけでも恐ろしい。
「でも、良かった、お姉さんで……幼なじみとかだったら嫉妬しつくしてた」
「……まあ、姉には一応感謝だな。姉が命令しに来たおかげで、晴人とこうなったし」
「感謝感謝だ……ってか、早く帰んなくて大丈夫? お姉さんの郵便物の件で」
「ああ、大丈夫。親が帰ってくるのは、早くても6時とかだから。それまでに帰れば大丈夫」
図書室の時計を見ると、まだまだ時間はある。家までの移動時間を考えても、まだ全然急がなくて良い。
「そっか……んじゃ、もうちょっと一緒にいられるな」
晴人は照れたように、そして嬉しそうに、そう言った。僕は晴人に近づき、両手で包むように晴人の頬に添えると、晴人は目を閉じた。僕のしようとしていることを察したらしい。顔を近づけ、キスをした。僕は目を開けたまま。実は1度目の時も、僕は目を開けたままキスした。その事実を、晴人は知らない。照れてる晴人、可愛い。
コンコンコン
「大崎くん、小山くん、いるー?」
図書室のドアをノックされた瞬間、僕たちはパッと身体を離した。酒井先生が、用事を終えてきてくれたみたいだ。
「は、はい」
晴人は急いで内側の鍵を開けた。
「もう、終わったところです」
「あら、そう。ありがとう。お疲れ様……大崎くん、顔赤くない?」
「え! いや、なんか……あはは」
晴人は笑って誤魔化そうとしてるが、笑って誤魔化せることではないと思う。酒井先生はダンボールを回収するためか、図書室に入ってくる。酒井先生と目が合った。
「小山くんもお疲れ様……小山くんも顔赤いわね。図書室暑かった?」
「いえ……」
あ、なんか回答間違えた。図書室が暑かったで良いじゃないか。閉め切った状態だったのだから、暑かったで誤魔化せたかもしれない。
「あ、分かった!」
酒井先生は明るい声でそう言った。ニヤニヤとからかうような顔をしている。
え、何が分かったの。酒井先生って勘が良さそうだし。まさか僕たちがしていたことを察して……
「恋バナでもしてたんでしょう? 先生も聞きたいな~、この学校の王子たちの恋バナ♡」
良かった、バレてない。そもそも、バレるわけがない。先生は見ていないのだから。
「え~、先生には教えらんないっすよ~」
酒井先生の誤解にのっかり、誤魔化すことにした。
______
この2人、ようやく、くっついたのかしら。笑ってごまかそうとしている2人を見ながら、そんなことを思う。
小山くんが大崎くんを見る目も、大崎くんが小山くんを見る目も、好きな子を見ている目だったから、さっさとくっつけば良いのにと思っていた。踏み込んだことを生徒に言うことはないし、これからも言うつもりはないのだが、生徒たちの恋事情は面白い。
私、この2人の邪魔しちゃったかしら。もっと遅くくれば良かったと反省した。
「じゃ、俺たち、帰るから」
「さよなら」
「ええ、さようなら。気をつけて帰るのよ」
2人で並んで遠ざかって行く背中を見送った。
「そ、姉」
「弥生くんって、お姉さんいるんだ……」
新しい本を本棚に入れ終え、空になったダンボールを畳む。ダンボールは読書スペースのテーブルに置いておけば、酒井先生が回収してくれるらしい。
まさか、僕が姉といるところを見て、僕のことが好きだと自覚したなんて。姉にこき使われる場面だったのに。思わず笑ってしまうと、晴人は拗ねたような顔をした。
「仲良いんだなって、思って、嫉妬した…お姉さんか……」
「フッ……あれは、姉に郵便物が届くから、親に見つからないように、ポストから出して、姉の部屋に入れとけっていう命令をされてたところ。僕が委員会の仕事があるって言っても、『私よりは早く帰るよね?』って圧かけてきた。姉には逆らえないんだよね」
姉・葉月に逆らうと碌なことがない。小学生の時、来客用にと用意していたお菓子を食べたことも、壁に落書きしたことも、僕じゃないのに、姉の手口が巧妙で、僕がしたことになっていた。姉が僕に罪をなすりつけてきたのは、姉のお願いを叶えていなかった時だ。小学生の頃は可愛いものだったが、今逆らったら、何の罪を被せられるか……考えただけでも恐ろしい。
「でも、良かった、お姉さんで……幼なじみとかだったら嫉妬しつくしてた」
「……まあ、姉には一応感謝だな。姉が命令しに来たおかげで、晴人とこうなったし」
「感謝感謝だ……ってか、早く帰んなくて大丈夫? お姉さんの郵便物の件で」
「ああ、大丈夫。親が帰ってくるのは、早くても6時とかだから。それまでに帰れば大丈夫」
図書室の時計を見ると、まだまだ時間はある。家までの移動時間を考えても、まだ全然急がなくて良い。
「そっか……んじゃ、もうちょっと一緒にいられるな」
晴人は照れたように、そして嬉しそうに、そう言った。僕は晴人に近づき、両手で包むように晴人の頬に添えると、晴人は目を閉じた。僕のしようとしていることを察したらしい。顔を近づけ、キスをした。僕は目を開けたまま。実は1度目の時も、僕は目を開けたままキスした。その事実を、晴人は知らない。照れてる晴人、可愛い。
コンコンコン
「大崎くん、小山くん、いるー?」
図書室のドアをノックされた瞬間、僕たちはパッと身体を離した。酒井先生が、用事を終えてきてくれたみたいだ。
「は、はい」
晴人は急いで内側の鍵を開けた。
「もう、終わったところです」
「あら、そう。ありがとう。お疲れ様……大崎くん、顔赤くない?」
「え! いや、なんか……あはは」
晴人は笑って誤魔化そうとしてるが、笑って誤魔化せることではないと思う。酒井先生はダンボールを回収するためか、図書室に入ってくる。酒井先生と目が合った。
「小山くんもお疲れ様……小山くんも顔赤いわね。図書室暑かった?」
「いえ……」
あ、なんか回答間違えた。図書室が暑かったで良いじゃないか。閉め切った状態だったのだから、暑かったで誤魔化せたかもしれない。
「あ、分かった!」
酒井先生は明るい声でそう言った。ニヤニヤとからかうような顔をしている。
え、何が分かったの。酒井先生って勘が良さそうだし。まさか僕たちがしていたことを察して……
「恋バナでもしてたんでしょう? 先生も聞きたいな~、この学校の王子たちの恋バナ♡」
良かった、バレてない。そもそも、バレるわけがない。先生は見ていないのだから。
「え~、先生には教えらんないっすよ~」
酒井先生の誤解にのっかり、誤魔化すことにした。
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この2人、ようやく、くっついたのかしら。笑ってごまかそうとしている2人を見ながら、そんなことを思う。
小山くんが大崎くんを見る目も、大崎くんが小山くんを見る目も、好きな子を見ている目だったから、さっさとくっつけば良いのにと思っていた。踏み込んだことを生徒に言うことはないし、これからも言うつもりはないのだが、生徒たちの恋事情は面白い。
私、この2人の邪魔しちゃったかしら。もっと遅くくれば良かったと反省した。
「じゃ、俺たち、帰るから」
「さよなら」
「ええ、さようなら。気をつけて帰るのよ」
2人で並んで遠ざかって行く背中を見送った。
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