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8.好き
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放課後である。俺のクラスの帰りのホームルームは、担任の、たぬきエピソードで長引いた。生徒が授業を受けている時間に外に出たところ、たまたま、たぬきに遭遇したらしく、話したくて仕方がなかったそうだ。そこから、生徒が次々と、SNSで見たポンコツたぬきエピソードを話していった。面白かったけど、なんで今日なんだ。今日は新しい本を並べるという、図書委員会の仕事があるのに。図書室の鍵は、俺が持っている。弥生くんを待たせてしまうじゃないか。俺は急いで図書室に向かっている。
あとは階段を降りればすぐに図書室というところまで来た。階段を降りて行くと、図書室が視界に入る。図書室のドアの前に、2人いるのが見え、階段の途中で思わず足を止める。1人は弥生くん、もう1人は長い髪の毛を下ろした女子。靴紐の色から、3年であることが分かる。弥生くんが図書委員会の人以外と一緒にいるところを、俺は初めて見た。
「じゃ、弥生、よろしく」
「分かったよ……」
そんな会話が聞こえ、弥生くんと話していた女子が去って行く。弥生くんが先輩にタメ口だなんて。よっぽど仲の良い先輩なのだろう。
あれ?
なんで、こんなモヤモヤしてるんだろう?
「あ、晴人」
弥生くんは俺がいることに気がつき、右手を上げた。そこでハッと意識を戻し、階段を下りた。
「始めるかぁ」
「そうだな」
図書室の鍵を開け、2人で図書室に入った。ドアを閉め、荷物をドア付近に置く。
「鍵、閉めた方が良いかな? 大げさだよな」
「その方が良いだろ。なんか、閉めなかったら先輩たち怖そうだし。一応俺たちを心配してくれてるし」
「それもそうか……」
弥生くんは、図書室の内側の鍵を閉めた。カウンター席に置いていたダンボール二箱を空の本棚に運ぶ。新しい本が入ると、まずは、この本棚に並べるらしい。ここにあった本たちは、先輩たちが移動させてくれたため、俺たちは本を入れるだけだ。この棚はジャンルごとに分けず、見栄えが良かったらいいらしい。
ダンボールを開け、本を取り出す。手に取った本は、見覚えのあるタイトルのミステリー小説だった。
「あ、この本、気になってたんだよね。ラッキー」
「ああ、それ、面白かったよ」
「読んだことあるんだ、さすが」
「感想言いたいんだけど、なんか全部ネタバレになるから言えない……! だから早く読んで」
語りたいけど、言えなくて、もどかしいらしい。
「ハハ、分かった。もう借りちゃおうかな。図書当番特権で」
「うん。そうして」
弥生くんは、よっぽど語りたいらしい。読むのが楽しみだ。弥生くんに促され、作業を抜けて本を借りる手続きをした。それを終え、また作業に戻る。俺たちは黙々と本棚に本を入れる。
黙々と作業をしていると、さきほど見た光景が頭に浮かんだ。弥生くんと、3年の女子が一緒にいたところ。顔はよく見えなかったけど、知らない先輩だった。また、心がモヤモヤで埋まっていく。心がモヤモヤしていても、手は止めない。
弥生くんとあの先輩は、どういう関係? そして、なんで俺は、こんなに気になるんだろう。別に、仲の良い女子の先輩がいても、おかしくないはずなのに。なんで、こんなにモヤモヤして……なんで?
なんで俺は、嫉妬してるんだ?
仲の良い友人が、例えば慎吾が女子と仲良さそうに話していても、何も思わないのに。なんで弥生くんだと……
ああ、そうか……これが……
「弥生くん」
俺が手を止めて名前を呼ぶと、弥生くんも手を止めてこちらを見る。
「ん?」
「俺、弥生くんのこと好きだわ」
「え」
弥生くんは、俺の言葉に目を丸くした。初めて見る表情だ。可愛い。
「恋愛的な意味で、弥生くんが好き」
弥生くんの顔は、赤くなっていった。これもまた初めて見る表情だ。可愛い。弥生くんへの気持ちを自覚したからか、弥生くんが可愛く見えて仕方がない。いや、自覚してなかっただけで、前から可愛いと思っていたのかもしれない。
「れ……恋愛的な好きが分かんないんじゃなかったの……?」
自分の顔が、徐々に熱くなるのを感じる。
「さっき…っていうか、今、分かった」
「今!?」
弥生くんの、こんな大きい声、初めて聞いた。可愛い。もうなんか、弥生くんが何しても可愛い気がする。弥生くんに、触りたい気持ちをグッと抑え、口を開く。
「弥生くんは、俺のこと、どう思ってる?」
自分の心臓の音がうるさい。これだけ鳴るのは初めてだ。自分の想いを伝えるのは、こんなにも緊張するものなのか。弥生くんが口を開くまでの時間が、ものすごく長く感じる。
「僕も……晴人が好き」
その言葉を聞いた瞬間、こんなにも嬉しいことがあるのかと、感激した。弥生くんの手を取り、握った。
「フッ……嬉しい」
握った手から、弥生くんの体温を感じる。弥生くんは握り返してくれた。握った手を見て喜びを噛み締めていると、弥生くんは握っている方と違う方の手を、俺の頬に添えた。弥生くんと視線が交わる。
「ねえ、晴人……キスして良い?」
「え」
「だめ?」
弥生くんは、眉毛を下げてそう言った。なんかその顔ずるい。その顔でお願いされたら、何でも言うことを聞いてしまいそうだ。
「だめじゃない……俺もしたい」
弥生くんは「フッ」と嬉しそうに笑って顔を近づけてくる。目を瞑ると、唇が重なった。人の唇って、こんなに柔らかいんだなって、キスの感想No. 1みたいなことを思った。唇は一瞬で離れ、おでこを合わせる。
「鍵、閉めて正解だったな」
「そうだな」
また自然と目を瞑って、もう一度キスをした。
あとは階段を降りればすぐに図書室というところまで来た。階段を降りて行くと、図書室が視界に入る。図書室のドアの前に、2人いるのが見え、階段の途中で思わず足を止める。1人は弥生くん、もう1人は長い髪の毛を下ろした女子。靴紐の色から、3年であることが分かる。弥生くんが図書委員会の人以外と一緒にいるところを、俺は初めて見た。
「じゃ、弥生、よろしく」
「分かったよ……」
そんな会話が聞こえ、弥生くんと話していた女子が去って行く。弥生くんが先輩にタメ口だなんて。よっぽど仲の良い先輩なのだろう。
あれ?
なんで、こんなモヤモヤしてるんだろう?
「あ、晴人」
弥生くんは俺がいることに気がつき、右手を上げた。そこでハッと意識を戻し、階段を下りた。
「始めるかぁ」
「そうだな」
図書室の鍵を開け、2人で図書室に入った。ドアを閉め、荷物をドア付近に置く。
「鍵、閉めた方が良いかな? 大げさだよな」
「その方が良いだろ。なんか、閉めなかったら先輩たち怖そうだし。一応俺たちを心配してくれてるし」
「それもそうか……」
弥生くんは、図書室の内側の鍵を閉めた。カウンター席に置いていたダンボール二箱を空の本棚に運ぶ。新しい本が入ると、まずは、この本棚に並べるらしい。ここにあった本たちは、先輩たちが移動させてくれたため、俺たちは本を入れるだけだ。この棚はジャンルごとに分けず、見栄えが良かったらいいらしい。
ダンボールを開け、本を取り出す。手に取った本は、見覚えのあるタイトルのミステリー小説だった。
「あ、この本、気になってたんだよね。ラッキー」
「ああ、それ、面白かったよ」
「読んだことあるんだ、さすが」
「感想言いたいんだけど、なんか全部ネタバレになるから言えない……! だから早く読んで」
語りたいけど、言えなくて、もどかしいらしい。
「ハハ、分かった。もう借りちゃおうかな。図書当番特権で」
「うん。そうして」
弥生くんは、よっぽど語りたいらしい。読むのが楽しみだ。弥生くんに促され、作業を抜けて本を借りる手続きをした。それを終え、また作業に戻る。俺たちは黙々と本棚に本を入れる。
黙々と作業をしていると、さきほど見た光景が頭に浮かんだ。弥生くんと、3年の女子が一緒にいたところ。顔はよく見えなかったけど、知らない先輩だった。また、心がモヤモヤで埋まっていく。心がモヤモヤしていても、手は止めない。
弥生くんとあの先輩は、どういう関係? そして、なんで俺は、こんなに気になるんだろう。別に、仲の良い女子の先輩がいても、おかしくないはずなのに。なんで、こんなにモヤモヤして……なんで?
なんで俺は、嫉妬してるんだ?
仲の良い友人が、例えば慎吾が女子と仲良さそうに話していても、何も思わないのに。なんで弥生くんだと……
ああ、そうか……これが……
「弥生くん」
俺が手を止めて名前を呼ぶと、弥生くんも手を止めてこちらを見る。
「ん?」
「俺、弥生くんのこと好きだわ」
「え」
弥生くんは、俺の言葉に目を丸くした。初めて見る表情だ。可愛い。
「恋愛的な意味で、弥生くんが好き」
弥生くんの顔は、赤くなっていった。これもまた初めて見る表情だ。可愛い。弥生くんへの気持ちを自覚したからか、弥生くんが可愛く見えて仕方がない。いや、自覚してなかっただけで、前から可愛いと思っていたのかもしれない。
「れ……恋愛的な好きが分かんないんじゃなかったの……?」
自分の顔が、徐々に熱くなるのを感じる。
「さっき…っていうか、今、分かった」
「今!?」
弥生くんの、こんな大きい声、初めて聞いた。可愛い。もうなんか、弥生くんが何しても可愛い気がする。弥生くんに、触りたい気持ちをグッと抑え、口を開く。
「弥生くんは、俺のこと、どう思ってる?」
自分の心臓の音がうるさい。これだけ鳴るのは初めてだ。自分の想いを伝えるのは、こんなにも緊張するものなのか。弥生くんが口を開くまでの時間が、ものすごく長く感じる。
「僕も……晴人が好き」
その言葉を聞いた瞬間、こんなにも嬉しいことがあるのかと、感激した。弥生くんの手を取り、握った。
「フッ……嬉しい」
握った手から、弥生くんの体温を感じる。弥生くんは握り返してくれた。握った手を見て喜びを噛み締めていると、弥生くんは握っている方と違う方の手を、俺の頬に添えた。弥生くんと視線が交わる。
「ねえ、晴人……キスして良い?」
「え」
「だめ?」
弥生くんは、眉毛を下げてそう言った。なんかその顔ずるい。その顔でお願いされたら、何でも言うことを聞いてしまいそうだ。
「だめじゃない……俺もしたい」
弥生くんは「フッ」と嬉しそうに笑って顔を近づけてくる。目を瞑ると、唇が重なった。人の唇って、こんなに柔らかいんだなって、キスの感想No. 1みたいなことを思った。唇は一瞬で離れ、おでこを合わせる。
「鍵、閉めて正解だったな」
「そうだな」
また自然と目を瞑って、もう一度キスをした。
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