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25.イライザVSヒューゴ バトル開始
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グレイソンの抵抗虚しく? マルフォー前伯爵夫人のイライザがメイドを従えて応接室に入ってきた。
ソファの近くまでズンズンと巨体を揺らしながらやって来たイライザは、右手に持った扇子を左手にピシリピシリと打ちつけて、不快感を表している。
後ろには相変わらずオドオドとした様子のローマンが青い顔で付き従っている。
(ソファにどうぞと言って欲しいってか?)
ソファにふんぞり帰って座るヒューゴとイライザの睨み合いがはじまった。
折りたたみ式の扇子は大きく分けると3種類。
扇面を折りたたむ「プリーツ式」は、紙・レース・シルクなどで作られ扇面全体に様々な絵が描かれている。
薄板の素材をリボンや細紐でつなげた「ブリゼ式」は、ゴージャスな技法を施した仕様。骨と呼ばれる土台には様々な素材が使われ、金属が使われる事もある。
円形に扇面が開く「コケード式」は、孔雀の羽などの珍しい素材が使われる事も多く折り畳んで持ち運べるようになっている。
勿論、マルフォー前伯爵夫人が使う扇子は骨に金属を使用したブリゼ式。
自己防衛の為ではなく、気に入らない使用人の(本人曰く)躾の為に利用する。ルーシーもこれに何度もやられている。
ヒューゴがイライザを大嫌いだと公言する理由の一つだ。
「マルフォー前伯爵夫人がどういったご用件で?」
「・・成り上がりは挨拶も、使用人の躾も出来ないのね。情けないことね」
「無理矢理乗り込んできた無礼者を歓待するような被虐趣味は持ち合わせておりませんので」
「ぶっ無礼者ですって! お前こそ不敬罪で切り捨ててやるわ」
「遠慮なくどうぞ、
『執事を無視して応接室に乗り込んだら無礼者と言われたので切り捨てました』
と、官警の前で仰ってみては如何ですかな?」
「・・相変わらずの無法者ぶりね。それより、ルーシーを連れて来なさい」
「何の為に? 武器を持つ方の前に大事な娘を連れてくるなど恐ろしすぎて・・あり得ませんな」
ヒューゴはイライザの手元を睨みつけたが、イライザはヒューゴの視線に全く気付かず扇子をパチリパチリと打ち付け続けている。
「か弱いレディを前に訳の分からない事を。兎に角ルーシーをさっさと呼びなさい。
あれは我が家の嫁です。
言って聞かせなければならない事があるのですから」
勝手にソファに座るイライザとその横に小さくなって座るローマン。
(全く、礼儀知らずの親子だな。しかも『か弱い』ときた)
(このおっさんが喋るの聞いたこと・・ねえわ)
「離婚を言い出したのは其方の方。これから話し合いがはじまるところなので、ルーシーを合わせる訳にはいきませんな。
また扇子の餌食にされては困りますし」
「離婚は取り止め。いつまで拗ねているのやら、これだから成り上がりは嫌われるのです。
自身の立場も理解できず情けないこと」
「成り上がりは世襲貴族に嫌われている。正におっしゃる通りですなあ。
その理由は? 成り上がり者は世襲貴族と違って色々なものを持っている。
金・商才・知恵・根性、将来を見通す目も自分を律する謙虚さも。
羨ましがられても仕方ないと言えば仕方ないですな」
大袈裟に肩をすくめるヒューゴ。
「巫山戯たことを! お前のような猿と話をするつもりはありません。
さっさとルーシーを連れていらっしゃい!」
ガチン! と鈍い音を立てて扇子がテーブルに振り下ろされた。
イライザの隣でローマンが「ひっ!」と飛び上がりテーブルを見つめている。
「このテーブルは御影石で出来ておりますが、ご覧になられた事は?」
「・・何が言いたいの?」
ソファの近くまでズンズンと巨体を揺らしながらやって来たイライザは、右手に持った扇子を左手にピシリピシリと打ちつけて、不快感を表している。
後ろには相変わらずオドオドとした様子のローマンが青い顔で付き従っている。
(ソファにどうぞと言って欲しいってか?)
ソファにふんぞり帰って座るヒューゴとイライザの睨み合いがはじまった。
折りたたみ式の扇子は大きく分けると3種類。
扇面を折りたたむ「プリーツ式」は、紙・レース・シルクなどで作られ扇面全体に様々な絵が描かれている。
薄板の素材をリボンや細紐でつなげた「ブリゼ式」は、ゴージャスな技法を施した仕様。骨と呼ばれる土台には様々な素材が使われ、金属が使われる事もある。
円形に扇面が開く「コケード式」は、孔雀の羽などの珍しい素材が使われる事も多く折り畳んで持ち運べるようになっている。
勿論、マルフォー前伯爵夫人が使う扇子は骨に金属を使用したブリゼ式。
自己防衛の為ではなく、気に入らない使用人の(本人曰く)躾の為に利用する。ルーシーもこれに何度もやられている。
ヒューゴがイライザを大嫌いだと公言する理由の一つだ。
「マルフォー前伯爵夫人がどういったご用件で?」
「・・成り上がりは挨拶も、使用人の躾も出来ないのね。情けないことね」
「無理矢理乗り込んできた無礼者を歓待するような被虐趣味は持ち合わせておりませんので」
「ぶっ無礼者ですって! お前こそ不敬罪で切り捨ててやるわ」
「遠慮なくどうぞ、
『執事を無視して応接室に乗り込んだら無礼者と言われたので切り捨てました』
と、官警の前で仰ってみては如何ですかな?」
「・・相変わらずの無法者ぶりね。それより、ルーシーを連れて来なさい」
「何の為に? 武器を持つ方の前に大事な娘を連れてくるなど恐ろしすぎて・・あり得ませんな」
ヒューゴはイライザの手元を睨みつけたが、イライザはヒューゴの視線に全く気付かず扇子をパチリパチリと打ち付け続けている。
「か弱いレディを前に訳の分からない事を。兎に角ルーシーをさっさと呼びなさい。
あれは我が家の嫁です。
言って聞かせなければならない事があるのですから」
勝手にソファに座るイライザとその横に小さくなって座るローマン。
(全く、礼儀知らずの親子だな。しかも『か弱い』ときた)
(このおっさんが喋るの聞いたこと・・ねえわ)
「離婚を言い出したのは其方の方。これから話し合いがはじまるところなので、ルーシーを合わせる訳にはいきませんな。
また扇子の餌食にされては困りますし」
「離婚は取り止め。いつまで拗ねているのやら、これだから成り上がりは嫌われるのです。
自身の立場も理解できず情けないこと」
「成り上がりは世襲貴族に嫌われている。正におっしゃる通りですなあ。
その理由は? 成り上がり者は世襲貴族と違って色々なものを持っている。
金・商才・知恵・根性、将来を見通す目も自分を律する謙虚さも。
羨ましがられても仕方ないと言えば仕方ないですな」
大袈裟に肩をすくめるヒューゴ。
「巫山戯たことを! お前のような猿と話をするつもりはありません。
さっさとルーシーを連れていらっしゃい!」
ガチン! と鈍い音を立てて扇子がテーブルに振り下ろされた。
イライザの隣でローマンが「ひっ!」と飛び上がりテーブルを見つめている。
「このテーブルは御影石で出来ておりますが、ご覧になられた事は?」
「・・何が言いたいの?」
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