【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

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11. 貿易会社『Stare』

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「こっちはダブリン公爵家のパーティーに参加したんだ。プリンストン派のファイフ伯爵の親戚のコーク伯爵にリークしてもらっておいた。あの2人はプライベートでもよく会ってるらしいから話は伝わってると思うよ」

 ジェラルドは父親に頼んでビクトールの悪評とターンブリー侯爵の財政への不安を煽ってもらった。

『優秀な嫡男がいたのに残っているのがアレではターンブリー侯爵家は心配ですな』

「コーク伯爵は父上が味方だと思ったらしくてブリックス子爵から聞いた話とかを教えてくれたらしい」



「お母様はアレイグル侯爵家のパーティーでターンブリー侯爵派のクルセルド伯爵夫人に話しておいたって」

『先日こんな噂を聞きましたのよ。悪影響が出ないうちにお調べになられた方がよろしいかと思いまして』



「ありがとう、これで取り敢えず第一歩だわ」

「ライラの事だから次の手も考えてるんでしょう?」

「うん、会社の方の調べを進めるつもりなの」

「会社!? もしかして腐ったパンって言ってたアレのことかい?」

「そう、それもタイミングを合わせて片付けるのが一番良いと思ってるの」


 両家が立ち上げた貿易会社『Stare』はは綿織物・絹織物・陶磁器などを輸出し香辛料や砂糖やお茶を輸入、各地の産物・商品の中継貿易でも利益を上げている事になっている。

(でもそれ以外にもっと利益を出してる秘密の売買。あれを早く何とかしなくちゃ)




 ハーヴィーがターンブリー侯爵家の資産の増え方に疑問を抱いたのがはじまりだった。

『貿易会社は確かに黒字経営だけど⋯⋯それだけにしては羽ぶりが良すぎるんだ。我が家は借金まみれだったのにって』

 ハーヴィーが2年生になったばかりの頃⋯⋯父親の執務室で偶々見つけてしまった裏帳簿に書かれていた数字と意味不明な記号の羅列。


『貿易会社が莫大な利益を上げているのは知ってる。我が家の収入は領地から上がる利益と役員報酬だけど、正直に言うと領地経営は赤字ギリギリなのを見栄を張って申告してたんだ。
貿易会社の設立にあたってプリンストン侯爵家から無利子で借りた借金が返済できたから、その分余裕ができたのかもと思ったりもしたんだけど。やっぱりそれだけじゃないらしい』

 その頃既に領地経営を任されていたハーヴィーは、将来の為に貿易会社の経営も勉強したいと言って学業の合間に会社に出入りする許可を得た。

 それから数ヶ月かけて少しずつ会社のあちこちを調べ回り、不審な船の運行記録に辿り着いた。

 その記録は当たり前のようにその他の運航記録と一緒に綴じ込んであり、意識してみていなければ気がつかなかっただろうと言っていた。

 季節や天候によって時折定期航路を離れて運行する船団があるのは普通だが、積荷が極端に少ない上に必ず決まった港に停泊しているのだと言う。

『季節による海流の変化に合わせているわけでもないしそこに商館を設立してもいないのに必ず同じ港に停泊するなんて絶対に何かあると思うんだ。
しかも普段は行きも帰りも荷物をギリギリまで満載しているのに、その港に停泊する船団だけは荷物が少ないなんてあり得ない。
途中で必ず停泊する港での取引の記録自体ないんだ』

『計上していない裏取引があるのは間違いなさそうね』

『ああ、以前見た裏帳簿をもう一度見る事ができれば何か分かるかもしれないんだけど、父上の執務室は常に鍵がかかっているし立ち入り禁止だと言われているから。
あの日は本当に珍しい事だったんだ』

 その日、侯爵夫人が在宅しているにも関わらずビクトールの母親が急に屋敷に押しかけてきたと言う。

『自分の商会でトラブルがあって急に大金が必要になったから、父上に援助して欲しいって押しかけてきたんだ。
ビクトールを引き取った後は手切れ金を払って縁を切ったって母上には話していたから父上は慌てたみたいで、鍵をかけ忘れた上にドアが半開きになってたから入り込めたんだ』



「会社か⋯⋯そうなると本格的に大人の力が必要じゃないかな。父上はいくらでも手伝うと言って下さったし、それにその」

 今回の噂のリークにも親の協力を願ったジェラルドが提案の途中で口籠もってしまった。

「うちの両親も手伝いたいって言ってるの。それにほら⋯⋯」

 言いにくそうにするジェラルドの脇腹をツンツンと突き、顔を覗き込んだミリセント。


「あの、実は⋯⋯ハーヴィーから頼まれている事もあるし」

「⋯⋯え?」

 意外な名前が出てきてライラは驚いた。ライラの気持ちを考慮してかハーヴィーの名前を口にしなかったジェラルドが⋯⋯。



「ライラに話しにくかったからってわけじゃないんだ。ハーヴィーと約束してたと言うか⋯⋯。
ライラはハーヴィーが亡くなった時の事とかって何か覚えてる?」

 ジェラルドが目を逸らしたまま言いにくそうにライラに聞いてきた。

「⋯⋯ハーヴィーの最後について誰かと話す勇気はまだなくて誰とも、その話したことはなくて」


「ほら、だからまだ早いって言っただろ?」

 ジェラルドが八つ当たりのようにミリセントにきつい言葉を使った。

「でもね、多分だけどとっても大切な事だと思うからライラは知るべきなの。もしこれがジェラルドと私の事だとしたら辛くても早く知りたいって思うんじゃないかって」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ライラ、その。無理はしなくて良いから少しだけ⋯⋯少しだけ話して良いかな」

 ジェラルドが口籠る様子を見てライラは俯いた。ジェラルドが何を話したいと思っているのか想像もつかないが聞くのがとても恐ろしい。

(それでも聞きたい気も⋯⋯聞かなくてはいけない気もする。2人で調べていたことに関係する何かかもしれないし)


「お嬢様、無理はなさらないで下さい。時間はまだいくらでもあるんですから。取り敢えず婚約者問題の目処が立ってからでも良くないですか?」

 ハーヴィーが亡くなった直後のライラの様子を知っているノアはジェラルドを睨みつけた。

(元気そうに見えてるだけなのに⋯⋯お嬢様はあれ以来剣に見向きもされないし馬にもお乗りにならない。ハーヴィー様との思い出にできる限り関わらないようにされてるんだ。
薄く皮が張ったばかりの傷口に指を突き刺すような行為はやめてくれ!)


「ノアの気持ちはすごくよくわかる。俺だって出来ればまだこんな事は話したくないんだ」

「で、でも話した方がいいと思ったんですよね」

「あ、うん。えっと、先ずはビクトールがあれ程愚かだと思ってなかったっていう話からなんだけど、父上から聞いた話で⋯⋯」

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