【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との

文字の大きさ
22 / 49

22.嘘は言ってないから問題なし

しおりを挟む
「ハーヴィーから聞いていた事があると申しましたけど、それは⋯⋯」

「行かなかったんだ。そう、行くって約束したけど行かなかった。学園を辞めた僕は入れないからね」

「抜け道がありますでしょう? 遅刻した生徒が利用しているアレが」

「えっ? なんでそれを知ってる⋯⋯⋯⋯ああ、もう⋯⋯僕は見てただけなんだ。怖くて⋯⋯分かるでしょう、誰だってあんなの見たら逃げ出すに決まってるよ」

「家族で屋敷に閉じこもって犯罪を見ないフリして罪が有耶無耶になるのを待っている。ジェラルドまたはメイヨー公爵家から口封じされるのを恐れておられるのかしら?⋯⋯そう言えば、マーシャル伯爵はどんな顔で王宮に出仕されているのか気になりますわね。
息子が横領して友達を見殺しにしたことはご存じかしら?
娘は不貞をして不正に手に入れた高額なプレゼントを隠し込んでいる事は?
夫人はそれらを承知していながら就職の斡旋を頼めるような方だと知っておられるのかしら?」

「しゅ、主人は関係ないの。だから⋯⋯」

「それはどうかしら? わたくしの関与する問題ではございませんし、興味もありませんわ。
冷たいとお思いになる? マーシャル夫人の息子さんと同じ事をしているのかもしれませんわね。見捨てて知らん顔⋯⋯わたくしの場合命がかかっているわけではありませんけれどね。



「ルシンダがいただいたプレゼントの代金はお返しします。だからどうか⋯⋯」

「それはどうぞお好きになさいませ。横領されたのは学園のお金⋯⋯慈善家からの寄付金ですから。とやかく言う権利はその方達の特権ですわ」

「そんな! 寄付しておられるのは貴族の方々なのに⋯⋯ああ、我が家はもうお終いだわ」

(今更気づいたなんてお可哀想な方。学園に寄付をしているのは王族と高位貴族。彼等を敵に回してどうなるか今まで気づいていなかった方が驚きだわ)



「こ、ここで話した事は全部出鱈目だし、どこで何を言っても何も喋らないからな!」

「まあ、それもお好きにどうぞ。証拠なら架空請求の請求書とお二人のサインがありますし、証拠として十分なくらいに手元に揃っております。それにここで話した事は全てこちらの方に記憶していただきましたから、裁判での証言者としても十分ですわ」

「⋯⋯護衛だろ? 自分とこの使用人なんて証人になれるもんか」

「ひとりは確かにわたくしの護衛ですけれど」




「ご挨拶が遅れました。第三騎士団団長のマックス・ファイフと申します」



 マーシャル伯爵家に来る前に寄り道したのは第三騎士団。

『何度もお時間をいただいて申し訳ありません』

『いえ、また何かありましたか?』

『実はこの後横領と殺人の被害者を見捨てた人を追い詰めに参りますので、同行していただけないかと思いますの』

『⋯⋯は?』


『数ヶ月前学園で侯爵令息が事故死した件をご存知ですかしら?』

『ええ、かなりの騒ぎになりましたから』

『今朝屋敷に持ち帰った書類の中に横領の証拠が入っておりましたの。彼の死については時間がなくて証拠固めができていないのですけれど、事故ではないと確信を持っております。
今朝の襲撃事件はその資料を奪おうとして計画されたものですの。
それがありましたから早めに手を打たなくては次の犯罪が起きてしまいそうで』



 ライラ達だけでは言い逃れされる可能性もあるが騎士団長の前で自白を引き出せれば、後から否認してもどうにもならないはず。

(今朝、団長と副団長の人柄は確認済みだったからどちらかについていって貰えば話がスムーズに進むわ)

 ジェラルドがウェインに手を出して罪の全てを押し付ける前に身柄を確保したいライラは団長に着替えて貰い護衛の振りをしてついて来てもらった。

 マーシャル伯爵家ではわざと紹介しなかった。護衛だと嘘をつかなくても貴族令嬢の後ろに立っているのは護衛だと相手は勝手に思い込むし、護衛の事など気にしない貴族の方が多い。

(それを逆手にとっただけ。嘘はついてないから問題なしね)



 護衛だと思っていた男のひとりが第三騎士団団長だと知ったウェインがテラスに向かって逃げ出したが、追いかけたマックスにあっさり捕まりグスグスと泣き言を言いだした。

「ねえ、本当にごめんなさい。謝るから見逃して⋯⋯母上、助けて」


 マーシャル夫人は気絶してソファに倒れ込み役に立たないし、捕まったウェインは泣き言を言っているのを見たルシンダがそっとソファから腰を上げて⋯⋯。

「やだ、私は関係ないもん。お兄様がジェラルドを連れて来たから悪いんだもん⋯⋯プ、プレゼントだって私が可愛いからって⋯⋯お兄様だってパーティーの服作ったりしてたじゃん。あれは返さないのに私だけ返せなんて狡い。
暗い家の中で我慢してあげてたのに。助けてくれてもいいじゃん⋯⋯ライラってお金持ちなんでしょ。なんでも持ってるんだからいいじゃん、酷いよ!」

 応接室の入り口で聞き耳を立てていた執事はとっくにいなくなっている。真面な使用人なら王宮に知らせに走っているだろうし、そうでなければ目ぼしい貴金属を抱えて逃げ出しているだろう。


「ジェラルドが助けてくれる。だってジェラルドの為にやったんだし⋯⋯そうだよ。ハーヴィーの事なんて見てないよって言ったら大丈夫⋯⋯メイヨー公爵家が⋯⋯外聞が」



 離れたところで待機していたハンター副団長が部下と共に馬車でやってきて拘束したウェインを乗せた。

「貴族に手を出したと問題になりませんか?」

「大丈夫だと思います。逃亡の恐れがあったことと証拠隠滅の為に害される可能性があったからと言っておきます。今朝の襲撃がこの件に関連している可能性があったと言えば文句は出ないでしょう」

「ありがとうございます。で、この後って⋯⋯」

「乗りかかった船ってやつですね。手伝いますよ」

「それではこの後の予定は⋯⋯」



 マックス団長と打ち合わせを済ませたライラ達は屋敷に戻り横領の証拠を手に第三騎士団に舞い戻った。

「まさか1日に3回も来ることになるなんて思わなかったわ」



 第三騎士団の団長室にはハンター副団長と同じくらい大柄な男性が眉間に皺を寄せて立っていた。

「こちらは第二騎士団団長のグレッグ・モートンだが、今回は流石に第二騎士団に出張ってもらわんと無理そうなんで来てもらったんだ」

 マックス団長の紹介で、ハンター副団長と並んで立っていた男性が僅かに頭を下げた。

「勝手に話を広げて申し訳なかったが相手が相手なだけに、第三騎士団では握りつぶされてしまう可能性があるんでね」

「ありがとうござい⋯⋯」



 ライラがグレッグ団長に挨拶をしかけた時、陰から騎士服を纏った女性がひょっこりと顔を出した。

「はーい、元気だったかしら?」




「ターニャ様、どうしてここに?」

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

捨てられた私は遠くで幸せになります

高坂ナツキ
恋愛
ペルヴィス子爵家の娘であるマリー・ド・ペルヴィスは来る日も来る日もポーションづくりに明け暮れている。 父親であるペルヴィス子爵はマリーの作ったポーションや美容品を王都の貴族に売りつけて大金を稼いでいるからだ。 そんな苦しい生活をしていたマリーは、義家族の企みによって家から追い出されることに。 本当に家から出られるの? だったら、この機会を逃すわけにはいかない! これは強制的にポーションを作らせられていた少女が、家族から逃げて幸せを探す物語。 8/9~11は7:00と17:00の2回投稿。8/12~26は毎日7:00に投稿。全21話予約投稿済みです。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし

さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。 だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。 魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。 変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。 二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。

処理中です...