【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との

文字の大きさ
33 / 49

33.無駄に頭のいい人は

しおりを挟む
「念の為確認させていただきたいのですけれど⋯⋯お二人は、わたくしがそれらをするべきだと仰るのですね」

「するべきと申しますか⋯⋯」

 風向きが変わったのに気がついたセシリアとキャサリンが顔を見合わせた。


「ではしなくても良いと思ってくださるのかしら?」

「していただいてもいいのではないかと思ってはおりますが、ご不快だったならお許しください」

「いえ、不快と言うのではないわね。わたくしのところへいらした時点で『やるべきだ』と思われていたのかと思いましたの」

「それはまあ、あの。婚約者の方が購入された物の支払いですからお願いしても問題ないかなとは思いました」

 セシリアの発言を聞いたライラが合図をすると、ノアが2人の前にメモ用紙を置いた。

「後でわからなくならないようメモをお取りになってはいかがでしょうか?」

 冷ややかなノアがパチリと音を立ててペンを置いた。



「この後直ぐにビクトールの購入代金の立て替えをいたしましょう。但し、立て替え完了後直ちに閉店し商会の権利その他全ての査定をしていただくのが条件となります。
店舗・備品・商品等は評価額でわたくしが購入しますが、使用人は現時点ではそのままでも退職でも自由と致します」


 テーブルを『バン!』と叩いて立ち上がったキャサリンが大声で叫んだ。

「そんな! それってディステイト商会の乗っ取りじゃないですか!! まさか順調な経営の商会を乗っ取るつもりでこんな事を!?」


「冷静にお考えになられたらいかがかしら? この話を持ち込んだのはお二人ですわ」

「で、でも私達はただ⋯⋯じゃあ、なんであんな事を仰ったんですか?」


「ディステイト商会の方からお話しをお聞きしたわけではありませんので、ディステイト嬢とサルーン嬢からお聞きした内容だけでご説明します。
婚約者であれば立て替えるべきだと仰いましたが、ディステイト家のご令嬢は確かトマーソン子爵家の令息とご婚約しておられたはず。その方が購入したものであればなんでも立て替えるべきだとお思いになられますの?」

「あ、それは」


「わたくしの予想ではお二人の独断でわたくしの所へいらっしゃったのでしょうが、拒否された理由もわからないまま次の来店時の対応も考えておられない。勿論お断りする勇気もおありにならない。
そのような商会に立て替えなどすれば、今後また同じことが起きたから立て替えをと言われる可能性ができますでしょう?」

「それまでにビクトール様とお話ししていただければ」

「それでダメだった場合のリスクをわたくしに負えと仰っているのですよ?」

「そこまで考えていたわけではなくて、私達はただ」


「順調な経営をしている貿易会社の社長が商会の支払いを踏み倒したなんて外聞が悪すぎます。そんな事が公になれば会社の評価にも影響してしまうかもしれません⋯⋯でしたかしら? その言葉は脅迫罪に当てはまりますわ、お気をつけなさいませ」

「なんでそんな酷い事ばかり仰るのですか!?」

「家に帰られてお父様にお聞きになられてはいかがかしら。公にして欲しくなければ金を払えと仰ったのと同義語だと言われたのだけどと。まともな経営者ならご理解いただけるはずですわ」

「「⋯⋯」」


「家のご商売の事を心配しておられるお気持ちはよく分かりますが、先ずはご家族と相談された方が宜しいと思いますわ。
商会長自ら来られるならお手伝いできることがあればご相談に乗らせていただくこともあるかもしれません」

「お父様は学生に相談なんてしないわ」

「それであれば商会をあれほど成功させておられるお父様のお力をお信じになられたら宜しいのではないでしょうか?」

「人の話を聞くふりをして粗探しだなんて最低!」


 シクシクと泣きながら肩を落としたセシリアを守るように引き寄せたキャサリンが捨て台詞を吐いて立ち上がった。

「セシ、行きましょう。ライラ様って噂通りの方だったわ!」



 遠ざかる後ろ姿を見送りながらライラはため息をついた。

「私ってどんな噂が立ってるのかしら?」

「見ぬが仏、聞かぬが花と言うやつですね」

「やっぱり、ろくでもない噂ばかりよね。それにしても、キャサリン・サルーン男爵令嬢の真面目さは方向が少し危なっかしいわね」


 友人を守りたい気持ちが強すぎて暴走したのだろうとは思うが、冷静な判断力がない上に承認欲求が強い気がして不安になった。

 承認欲求の中でも、自分で自分のことを認めたいと考える自己承認ならば問題は少ないが、他人から認められたいと望む他者承認は問題が起きることが多い。

「どちらもほどほどでないと問題になるのは同じだけどサルーン嬢は明らかに後者だわ」

 ライラから注目され評価を意識しすぎ言動が過激になっていた。良く言えば、富・名声・権利に満足できていない家庭環境で頑張ってきた反動だったのかもしれないが、ライラからすれば迷惑そのものでしかない。

「関わらないつもりだったのに、サルーン嬢と縁ができるなんて⋯⋯このままでは終わってくれそうにないわね。サルーン嬢は頭の回転が無駄に早そうだから、愚かな事を考えなければいいんだけど」

 予想外の出来事で昼休憩が終わりどっと疲れたライラは教室へ戻った。





 セシリアの肩を抱きしめたキャサリンは震えるほどの怒りを必死になって耐えていた。

(あんな人だなんて最低だわ。噂はあれこれ聞いていたけどあそこまで高飛車で傲慢な人だなんて! ライラ様が冷酷で自分勝手な人だからビクトール様が恋人を渡り歩いてるって言うのは本当だったんだわ)

「セシ、役に立てなくてごめんね」

「ううん、こっちこそごめんね。ライラ様の仰る通り私が口を出すべきじゃなかったんだわ」

「そんなことない! 家族が困ってたら助けたいって思うのは当然だもの。その程度の事も理解できないあの人が間違ってる!」

「でもほら、自分だったら立て替えるかって聞かれて気付いたの。バカなこと考えてたなぁって」

「それがあの人のやり方なの。セシは純粋だから騙されたのね。だって、ライラ様にしてみればほんの端金のはずよ? それをケチって恐喝罪だとかって脅すなんて、人として有り得ない」

「訴えられたらどうしよう。プリンストン侯爵家になんて勝てないよぉ」


「私だってプリンストンの血が流れてるのよ。同じ舞台に立ってたら負けなかったのに⋯⋯セシ、心配しないで。あの人にごめんなさいって言わせて見せるから。ううん、セシが泣いたのと同じくらい泣かせてやるわ!!」

(遠いと言っても血の繋がった親戚だから相談に乗ってくださいって言えば話を聞いてくれると思ったけど。
同じプリンストンの血が流れてるのにこっちは苦労させられてばっかりで⋯⋯向こうはあんなイケメンに傅かれて贅沢三昧してるなんて理不尽すぎるわ⋯⋯あんな人、大勢の前で赤っ恥でもかけばいいんだわ。
人前に出られないくらい恥をかいて⋯⋯そうよ、私がセシを泣かせた仕返ししてやれば⋯⋯)

「セシ、いいこと思いついちゃったから楽しみにしててね」

(政略だから婚約破棄されたら困るでしょう? だったら泣いて縋るしかないものねえ)

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

捨てられた私は遠くで幸せになります

高坂ナツキ
恋愛
ペルヴィス子爵家の娘であるマリー・ド・ペルヴィスは来る日も来る日もポーションづくりに明け暮れている。 父親であるペルヴィス子爵はマリーの作ったポーションや美容品を王都の貴族に売りつけて大金を稼いでいるからだ。 そんな苦しい生活をしていたマリーは、義家族の企みによって家から追い出されることに。 本当に家から出られるの? だったら、この機会を逃すわけにはいかない! これは強制的にポーションを作らせられていた少女が、家族から逃げて幸せを探す物語。 8/9~11は7:00と17:00の2回投稿。8/12~26は毎日7:00に投稿。全21話予約投稿済みです。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし

さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。 だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。 魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。 変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。 二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。

処理中です...