【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

との

文字の大きさ
6 / 93

6.久しぶりのイリスを堪能

しおりを挟む
 二人してマナーぎりぎりの速さで廊下を抜けセアラの先導で校舎の南側に立つ図書館の裏にやって来た。昨日入寮した後に地図を片手に学園内を散策して見つけたここはあまり人が来ないようで高い木に覆われて落ち葉が積もっている。塗装の剥げたベンチが隅にあるのでイリスとの密会に都合がよさそうだと目をつけていた。

「セアラ、久しぶり。元気そうだけど眉間に皺が寄ってるわよ」

「⋯⋯せっかくの再会なのにごめんなさい」

「セアラが気にすることないわ。ああいう人ってどこにでもいるもの。あの二人は確かレトビア公爵と同じ派閥の家の方ね」

「ええ、それに私の監視役だわ」

 制服が痛みそうだから持ってきたのと言いながらセアラが鞄から出したタオルをベンチに敷いて二人で腰を下ろした。

「昨日ここを見つけておいたの。ここなら誰にも見つからないと思ったんだけど、まさかこんなに早く利用することになるとは思わなかったわ」

「監視役をつけるなんて普段どんな生活をしてたの?」

「部屋から出たのは3回だけ。24時間メイドが監視してたわ。ようやくその二人と離れられたと思ったんだけど、次の監視役はちゃんと準備してあったのね」


 セアラは昨夜執務室に呼び出された時にレトビア公爵から言われた言葉を思い出した。



『学園での言動には気をつけろ。学園内でお前が付き合う者はレトビア公爵家に相応しい者でなくてはならん。勝手なことはするな。わかったな』


「それがあの二人ってことね。やっぱりレトビア公爵は真面じゃないわ」

「公爵家には間違いなく何かあるわ。公爵家に着いて10日くらい経った時にね、図書室に行きたいって言ってみたの。その日のうちに部屋に外から鍵をつけられたわ」

「さいてー! もう怪しいですって宣言してるようなもんじゃない。入学前にライルに会って話をしたのよ。すっごく心配してたし今回の事すごく怒ってた。
彼は今、領地に帰らずお友達の屋敷にいるわ」


 イリスは母親と相談して入学試験前に王都へやって来てライルに連絡をとった。ライルは卒業後すぐに領地に帰る予定だったがイリスからセアラがレトビア公爵家の養女になった事を聞き王都に残って調べると言ってくれた。

「領地にいる間は調べても大したことはわからなかったけど、ライルと一緒に王立図書館に行ってこの国の歴史とかレトビア家の事とか調べてみたの。
まだ大したことはわかってないけどライルも絶対おかしいって言ってたわ」

「亡くなったお祖母様が仰ってたのを思い出したのだけど、お祖母様のお母様がレトビアから輿入れしてこられたのは10歳の時だったって。あまりにも早い輿入れは【レトビアの呪い】から逃れるためだったのかもしれないって」

「ライルも知ってるかしら? 念の為ライルに手紙で伝えておくわね。ねえ、屋根裏部屋に住んでたとか食事抜きなんてことはなかったんでしょうね」

「それは大丈夫。豪華な客間に娘達のお古のドレスがいっぱいあって髪飾りとかのアクセサリーが入った宝石箱も置いてあるの。食事も3食部屋に運ばれてきたわ。専属のメイドだって二人も⋯⋯。
立派な部屋で何不自由なく暮らさせていますって言えるだけの状況はちゃんと作ってあったのよ。
但し、サイズが合わないドレスは部屋から出られないから不要だし宝石箱には鍵がかかってるけどね。
専属メイドは私にお茶を入れることはないけど毎日ソファで優雅なお茶会を開いているし、毎日私の代わりにお風呂に入って薔薇の香りをさせてたけどね」

「想像以上に姑息な奴だわ。ライルがね、屋根裏部屋に押し込まれてたりしたらすぐにでも連れ戻せるって言ってたのに」

「レトビア公爵はその辺抜け目がないわ。何度かレトビア公爵のご友人の方やご親戚の方がお部屋に来られたことがあるの。皆さん、『慈善事業の一環で養女にした娘にここまで手厚くされてるなんて流石はレトビア公爵様』だって仰ってた。
その方々に見せつけて確認させる為じゃなければメイドにクローゼットの中を開けて見せるよう目配せしたり、わざわざ宝石箱を目につくとこに置いたりしないわ」

「逃げられないよう状況だけは揃えてるのね。私、あの蛇みたいなネッチョリした目が大嫌いなの」


「明日から時間を見つけて図書館に行って見るつもりだからきっと何か見つかると思うの。ううん、見つけてみせるわ」




 翌日から授業がはじまった。予習と復習をしておかなければついていけなくなりそうな授業もありSクラスの生徒は皆青息吐息だった。

「今年は学習要項を見直したんだって」

「生徒達の成績不振が問題になってるせいだとか」

「やばい、次の試験では絶対Aクラス落ちだよ」


 休憩時間や放課後はシャーロット達が常にセアラの側を離れないのでセアラはイリスと話す時間も一人で図書館に行く時間も取れなかった。

 セアラの寮の部屋は王族や高位貴族の集まる棟で子爵令嬢のイリスの部屋とは別の棟になる。防犯のためと称して今年度から棟の行き来が禁止され夜こっそり会う事もできない。
 朝と夜は寮にある食堂で食事をとるがセアラの周りにはシャーロットかグレイスが必ず数人の取り巻きを連れて側に座る。

(見張りでもおいてるのかしら、まるで私を孤立させるために全力を尽くしてる感じだわ。トイレまでついてくるなんて!)


 イリスは入学当初シャーロットとグレイスの取り巻きから虐めを受けていたようだが最近はシャーロット達に反発する人達と仲良くなりいつも何人かで行動するようになった。

 学園に入学して3ヶ月経っても一人で図書館に足を踏み入れることさえ出来ていないセアラは次第に焦りの色を浮かべはじめた。

(このまま3年間監視して、公爵家に戻ったらまた部屋に閉じ込めるつもりかしら)



 その日もセアラは周りを取り囲むシャーロット達から食堂に昼食をとりに行こうと声をかけられているところだった。

「あの、今日は別の方とお昼をいただきたいと思っていますの。どうかわたくしのことはお気になさらず皆様でいらっしゃって下さいませ」

しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語 母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・? ※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

処理中です...