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20.誤魔化せてラッキーなミリー
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「私はこの部屋で休みたいの。エリーの部屋なんて落ち着かない」
「ミリー、一晩くらいいいじゃん。レバントの宿に比べたらエリーの部屋の方がよっぽどマシだろ?」
「お兄様は黙ってて! お父様お願い、私は自分のお部屋で休みたいの」
ミリーが涙目で可愛くおねだりしたがサイラスも部屋の汚さに辟易していたのでエドナに同調してしまいミリーは諦めざるを得なかった。
「では明日の仕事が減るように夜のうちに少しでも荷物を纏めさせて頂きます。勿論明日の朝奥様にご確認頂くまでは部屋から持ち出したりいたしませんので」
「後の事はジェームズと相談してくれ。食事の途中だったと言うのにとんでもない事になったな。さあ食堂に戻って食事の続きだ」
物事を深く考える事も真偽を確かめる気もないサイラス達のおかげでミリーは非難される事を免れた。
(エリーの物を取り返されるのは悔しいけどおねだりして新しく買って貰えばいいわ。みんな私には甘いんだもの)
ミリーの誤算は破れたり壊れたりした物が想像以上に多かった事で、エリーの荷物を持ち出した後ミリーの部屋の荷物はほんの僅かしか残っていなかった。
「あら、ミリーのドレスってこれだけしかないの?」
「お母様、私のドレスやアクセサリーまでエリーに持たせたのね!」
「いいえ、ドレスは刺繍しておいたイニシャルを確認させたしアクセサリーはエメラルドの物だけを持たせたのだから間違いはないわ。大急ぎで仕立て屋と宝石商を呼ばなくては伯爵家として恥ずかしいわね」
ミリーは、深く物事を考えない母親のお陰で新しいドレスとアクセサリーを手に入れる事が出来そうだとほくそ笑んだ。
荷物を全てサロニカ王国のアリシアのタウンハウスに運んで来たチャールズは居間で状況報告をしていた。
「エリーの暮らしぶりがそれほど酷かったのならもっと早く手を打つべきだったわ。サイラスにはもう一度お仕置きが必要ね」
報告を聞いたアリシアは淹れたての紅茶を飲みながら溜息をついた。
「あの日辞めたメイド2人はリューゼルのお屋敷で雇い入れました。必要な時にはエリー様の過ごされていた状況を証言すると申しておりますし、1人は男爵家の出なので証拠としてかなり有効だと思われます」
裁判になった時平民の証言は軽んじられるが、低位であっても貴族の証言であれば重要視される。
「証言が必要になるのは数年先の話になる可能性があるから早いうちに正式な調書をとっておいて頂戴。昔の記憶だからなんて言われたら面倒だわ」
「畏まりました」
アリシアはサイラス達が前回のようにエリーを取り戻そうとしてきたりエリーの生活に関わろうとしてきたら裁判で親権を取り上げるつもりでいる。
「サイラスへの援助金を2か月後から3割減額するわ。手紙は認めておいたから屋敷に戻ったら郵便でコーンウォリスの屋敷に送っておいて」
前回エリーを引き取る前にもアリシアはサイラスへの援助金を暫くの間2割減額し、それを元に戻すのを条件にエリーを手元に引き取った。
「兄妹を平等に扱うとサイラスが確約した一年前の念書と、今回のメイド2人の証言があればサイラスから親権を奪う事は出来るけれどそれは最後の手段だわ」
アリシアが今まで行動に出ていないのは親権をサイラスから奪ってしまうとエリーの身分が平民になってしまう為だったが、これ以上サイラスが愚かな行動に出るなら親権を取り上げた上でエリーを然るべき貴族家と養子縁組させるつもりでいる。
「バルサザール帝国の騒動について調べておいて。あまり深入りせず慎重に」
「目立たないようにと言う事でしょうか?」
「絶対にバレないようによ」
チャールズが一礼して応接室を退出した後アリシアは部屋に戻りエリーの家庭教師から届いた報告書に目を通した。
エリーの成績はアリシアの予想通りで余程のことがない限りパドラスへ入学出来るだろうとの事。附属学園は6年で大学は殆どの学科が4年から6年。
アリシアがこれからの予定を考えながら手紙を認めているとドアがノックされ娘のマイラが入ってきた。
「お母様今良いかしら」
アリシアはペンを置きマイラと共にソファに腰掛けチャールズが報告してくれた内容を話した。
「サイラスへの手紙にはパドラスの事は伏せておいたから少なくとも一年は猶予があるわ。援助金を3割減額にしたからあれこれ言ってくるとは思うけど」
「3割も? 領地経営危ないんじゃないかしら」
「わたくしは今回チャールズに話を聞いてもっと減額しても良かったと思っているの。何一つ約束を守ってなかったのだから援助金そのものをなくしても構わない位だわ。愚か者に搾取されるだけの領地なら返上してしまった方が良いのだし」
「で、今後の予定は?」
「ミリー、一晩くらいいいじゃん。レバントの宿に比べたらエリーの部屋の方がよっぽどマシだろ?」
「お兄様は黙ってて! お父様お願い、私は自分のお部屋で休みたいの」
ミリーが涙目で可愛くおねだりしたがサイラスも部屋の汚さに辟易していたのでエドナに同調してしまいミリーは諦めざるを得なかった。
「では明日の仕事が減るように夜のうちに少しでも荷物を纏めさせて頂きます。勿論明日の朝奥様にご確認頂くまでは部屋から持ち出したりいたしませんので」
「後の事はジェームズと相談してくれ。食事の途中だったと言うのにとんでもない事になったな。さあ食堂に戻って食事の続きだ」
物事を深く考える事も真偽を確かめる気もないサイラス達のおかげでミリーは非難される事を免れた。
(エリーの物を取り返されるのは悔しいけどおねだりして新しく買って貰えばいいわ。みんな私には甘いんだもの)
ミリーの誤算は破れたり壊れたりした物が想像以上に多かった事で、エリーの荷物を持ち出した後ミリーの部屋の荷物はほんの僅かしか残っていなかった。
「あら、ミリーのドレスってこれだけしかないの?」
「お母様、私のドレスやアクセサリーまでエリーに持たせたのね!」
「いいえ、ドレスは刺繍しておいたイニシャルを確認させたしアクセサリーはエメラルドの物だけを持たせたのだから間違いはないわ。大急ぎで仕立て屋と宝石商を呼ばなくては伯爵家として恥ずかしいわね」
ミリーは、深く物事を考えない母親のお陰で新しいドレスとアクセサリーを手に入れる事が出来そうだとほくそ笑んだ。
荷物を全てサロニカ王国のアリシアのタウンハウスに運んで来たチャールズは居間で状況報告をしていた。
「エリーの暮らしぶりがそれほど酷かったのならもっと早く手を打つべきだったわ。サイラスにはもう一度お仕置きが必要ね」
報告を聞いたアリシアは淹れたての紅茶を飲みながら溜息をついた。
「あの日辞めたメイド2人はリューゼルのお屋敷で雇い入れました。必要な時にはエリー様の過ごされていた状況を証言すると申しておりますし、1人は男爵家の出なので証拠としてかなり有効だと思われます」
裁判になった時平民の証言は軽んじられるが、低位であっても貴族の証言であれば重要視される。
「証言が必要になるのは数年先の話になる可能性があるから早いうちに正式な調書をとっておいて頂戴。昔の記憶だからなんて言われたら面倒だわ」
「畏まりました」
アリシアはサイラス達が前回のようにエリーを取り戻そうとしてきたりエリーの生活に関わろうとしてきたら裁判で親権を取り上げるつもりでいる。
「サイラスへの援助金を2か月後から3割減額するわ。手紙は認めておいたから屋敷に戻ったら郵便でコーンウォリスの屋敷に送っておいて」
前回エリーを引き取る前にもアリシアはサイラスへの援助金を暫くの間2割減額し、それを元に戻すのを条件にエリーを手元に引き取った。
「兄妹を平等に扱うとサイラスが確約した一年前の念書と、今回のメイド2人の証言があればサイラスから親権を奪う事は出来るけれどそれは最後の手段だわ」
アリシアが今まで行動に出ていないのは親権をサイラスから奪ってしまうとエリーの身分が平民になってしまう為だったが、これ以上サイラスが愚かな行動に出るなら親権を取り上げた上でエリーを然るべき貴族家と養子縁組させるつもりでいる。
「バルサザール帝国の騒動について調べておいて。あまり深入りせず慎重に」
「目立たないようにと言う事でしょうか?」
「絶対にバレないようによ」
チャールズが一礼して応接室を退出した後アリシアは部屋に戻りエリーの家庭教師から届いた報告書に目を通した。
エリーの成績はアリシアの予想通りで余程のことがない限りパドラスへ入学出来るだろうとの事。附属学園は6年で大学は殆どの学科が4年から6年。
アリシアがこれからの予定を考えながら手紙を認めているとドアがノックされ娘のマイラが入ってきた。
「お母様今良いかしら」
アリシアはペンを置きマイラと共にソファに腰掛けチャールズが報告してくれた内容を話した。
「サイラスへの手紙にはパドラスの事は伏せておいたから少なくとも一年は猶予があるわ。援助金を3割減額にしたからあれこれ言ってくるとは思うけど」
「3割も? 領地経営危ないんじゃないかしら」
「わたくしは今回チャールズに話を聞いてもっと減額しても良かったと思っているの。何一つ約束を守ってなかったのだから援助金そのものをなくしても構わない位だわ。愚か者に搾取されるだけの領地なら返上してしまった方が良いのだし」
「で、今後の予定は?」
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