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21.アリシアの目論見
「サイラスとマイケルの行動次第ね。その2人に動きがなければパドラス附属学園を卒業するのが目標になるけれど・・エリーはマイケルの事を何か話したかしら?」
「エリーは何も知らないみたい。マイケルって言うのは偽名だけど本当の名前は分からないって言ってたから」
「そう、その方が彼の問題で一喜一憂せずに済むから良いのかも。今はパドラスに入学する事、入学して寮に入るのが最優先ですもの」
「勝手にエリーの結婚相手を見つけてくるとかないかしら?」
アリシアとマイラの最大の心配は、11歳でも婚約している貴族子女は少なくはないのでサイラスがエリーの婚約を決めてしまう事。
エリーが学園に行っていないと思っている間はまともな結婚相手は見つからないと思っているはずなので暫くは大丈夫だろうとは思うが警戒は怠れない。
「多分サイラスが考えてるとしたら今のところは修道院に入れるくらいね。将来的には下衆な輩に売り飛ばそうとするかもしれないけど」
「そんな事になる前に親権を奪ってしまいましょうよ。お母様は今回そうするおつもりだと思っていましたのに」
「勿論そうするつもりでしたとも。ただ、ちょっと状況が変わったのよ。
マイラはエリーがネックレスに通した指輪を見たかしら? あれがわたくしの見た通りのものだとしたらエリーの経歴に傷をつけずにいた方がいいはず」
エリーが持っていたのはただの指輪ではなく指輪型の印章。近年は識字率が上がりサインに取って代わられているが、貴族階級だけは未だに自身の家系を表す紋章が入った印章を使用している。
(あの印章に記されていた紋章はバルサザール帝国の・・)
「お馬鹿なサイラスでも勝手な事をすればわたくしが黙っていない事くらいはわかっているはずです。サイラスの生命線はわたくしからの援助金ですからね」
「それを上回るほどの美味しい話が見つからない限り大丈夫と言う事ね」
「普通ならこれ以上愚かな真似はしないと思うのだけど相手はサイラスやエドナでしょう。念の為監視の者は増やしておいたわ」
アリシアは複数の紡績工場や貿易会社などの利権を持っておりその収益の中からサイラスへの援助金を捻出している。
アリシアの遺言状には遺産の大半はマイラとエリーが受け取る事と、その残りの受取人には長年アリシアの元で働いている使用人の名前しか記載されていない。
エリーが成人していなかった場合の後見人はマイラでこの2人が受け取れない何らかの理由があった場合には幾つかの孤児院や修道院に寄付される。
「サイラスを受取人の1人に入れるのはわたくしには無理」
「ミリーやフレディが知ったら騒ぎそうよね」
「そうね、エリーの名前が遺言状に記載されているのだからあの2人には文句を言う権利はあるでしょうね」
アリシアの実子は長男のデイビッドと長女マイラのみ。
サイラスはアリシアの(亡くなった)夫である前コーンウォリス伯爵と愛人の間に生まれたが長男デイビッドが17歳で事故死するまで伯爵はサイラスを認知せず放置していた。
デイビッドが亡くなった途端伯爵家に連れてこられた14歳のサイラスはその当時既に今のような愚かな性格になっており矯正のしようもなかった。
「サイラスとエドナは似た者夫婦でしょう。ああいうのを割れ鍋に綴じ蓋って言うんですって」
「せめてお父様がサイラスにもう少し真面な妻を見つけてくだされば良かったのにね」
マイラは口を尖らせ大きな溜息をついた。
その後、アリシアとマイラはランブリュー侯爵夫人のサロンやその他の貴族との交流に勤しみ、エリーは部屋に篭りひたすら勉強に励んでいた。
「エリー、お天気が良いのでガーデン・スクエアでピクニックしない?」
朝から夜まで食事以外の時間は部屋に篭り勉強漬けの日々を送っているエリーにマイラが声をかけた。
「でも、試験まで後少しだと思うと不安で・・。未だにラテン語の格変化が苦手なんです」
ラテン語文法の特徴はその活用形の多さ。名詞・形容詞にはそれぞれに格変化があり、動詞には時制や人称に応じて様々な活用がある。
「確かに、ラテン文法を学ぶ時って変化形の複雑さがネックになるものね。あれは苦手だったから私は結局逃げ出したの」
マイラの顰めっ面を見たエリーが吹き出しペンを置いた。
「ガーデン・スクエアでピクニックの後デッサンも出来る? 窓から見える景色はいくつか描いたんだけど別のところからも描きたいって思ってたの。
叔母様は絵がお上手だから教えて頂けたら嬉しい」
「じゃあ、早速準備開始ね」
「エリーは何も知らないみたい。マイケルって言うのは偽名だけど本当の名前は分からないって言ってたから」
「そう、その方が彼の問題で一喜一憂せずに済むから良いのかも。今はパドラスに入学する事、入学して寮に入るのが最優先ですもの」
「勝手にエリーの結婚相手を見つけてくるとかないかしら?」
アリシアとマイラの最大の心配は、11歳でも婚約している貴族子女は少なくはないのでサイラスがエリーの婚約を決めてしまう事。
エリーが学園に行っていないと思っている間はまともな結婚相手は見つからないと思っているはずなので暫くは大丈夫だろうとは思うが警戒は怠れない。
「多分サイラスが考えてるとしたら今のところは修道院に入れるくらいね。将来的には下衆な輩に売り飛ばそうとするかもしれないけど」
「そんな事になる前に親権を奪ってしまいましょうよ。お母様は今回そうするおつもりだと思っていましたのに」
「勿論そうするつもりでしたとも。ただ、ちょっと状況が変わったのよ。
マイラはエリーがネックレスに通した指輪を見たかしら? あれがわたくしの見た通りのものだとしたらエリーの経歴に傷をつけずにいた方がいいはず」
エリーが持っていたのはただの指輪ではなく指輪型の印章。近年は識字率が上がりサインに取って代わられているが、貴族階級だけは未だに自身の家系を表す紋章が入った印章を使用している。
(あの印章に記されていた紋章はバルサザール帝国の・・)
「お馬鹿なサイラスでも勝手な事をすればわたくしが黙っていない事くらいはわかっているはずです。サイラスの生命線はわたくしからの援助金ですからね」
「それを上回るほどの美味しい話が見つからない限り大丈夫と言う事ね」
「普通ならこれ以上愚かな真似はしないと思うのだけど相手はサイラスやエドナでしょう。念の為監視の者は増やしておいたわ」
アリシアは複数の紡績工場や貿易会社などの利権を持っておりその収益の中からサイラスへの援助金を捻出している。
アリシアの遺言状には遺産の大半はマイラとエリーが受け取る事と、その残りの受取人には長年アリシアの元で働いている使用人の名前しか記載されていない。
エリーが成人していなかった場合の後見人はマイラでこの2人が受け取れない何らかの理由があった場合には幾つかの孤児院や修道院に寄付される。
「サイラスを受取人の1人に入れるのはわたくしには無理」
「ミリーやフレディが知ったら騒ぎそうよね」
「そうね、エリーの名前が遺言状に記載されているのだからあの2人には文句を言う権利はあるでしょうね」
アリシアの実子は長男のデイビッドと長女マイラのみ。
サイラスはアリシアの(亡くなった)夫である前コーンウォリス伯爵と愛人の間に生まれたが長男デイビッドが17歳で事故死するまで伯爵はサイラスを認知せず放置していた。
デイビッドが亡くなった途端伯爵家に連れてこられた14歳のサイラスはその当時既に今のような愚かな性格になっており矯正のしようもなかった。
「サイラスとエドナは似た者夫婦でしょう。ああいうのを割れ鍋に綴じ蓋って言うんですって」
「せめてお父様がサイラスにもう少し真面な妻を見つけてくだされば良かったのにね」
マイラは口を尖らせ大きな溜息をついた。
その後、アリシアとマイラはランブリュー侯爵夫人のサロンやその他の貴族との交流に勤しみ、エリーは部屋に篭りひたすら勉強に励んでいた。
「エリー、お天気が良いのでガーデン・スクエアでピクニックしない?」
朝から夜まで食事以外の時間は部屋に篭り勉強漬けの日々を送っているエリーにマイラが声をかけた。
「でも、試験まで後少しだと思うと不安で・・。未だにラテン語の格変化が苦手なんです」
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「確かに、ラテン文法を学ぶ時って変化形の複雑さがネックになるものね。あれは苦手だったから私は結局逃げ出したの」
マイラの顰めっ面を見たエリーが吹き出しペンを置いた。
「ガーデン・スクエアでピクニックの後デッサンも出来る? 窓から見える景色はいくつか描いたんだけど別のところからも描きたいって思ってたの。
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「じゃあ、早速準備開始ね」
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