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Two
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しおりを挟む「わたし、ここで待ってる」
無理やり口角を引き上げて笑うと、健吾くんがほっとしたように頬を緩めた。
「わかった。すぐ戻るから」
健吾くんが、寄りかかったままでいたわたしの肩をそっと押しやる。その力は控えめで優しかったけれど、なんとなく突き放されたようで胸が痛んだ。
わたしから離れた健吾くんが、コンビニに向かうために道路を渡る。その背中がコンビニのドアの向こうに消えるのを確認すると、わたしは駅に向かって一目散に駆け出した。
靴擦れも、足が痛くて歩けないというのも健吾くんの気を惹くための嘘だったけど、さすがにヒールの高い慣れない靴ではうまく走れない。
靴が脱げないようにつま先に力を入れたら、駅に着く頃には本当に靴擦れを起こして足が痛くなってしまった。特に、足の小指の横が痛い。
痛みに耐えながらなんとか電車に乗り込んで、空いている座席によたよたと倒れ込むように腰を下ろす。
咄嗟に逃げてきてしまったけれど、健吾くんはもうとっくにわたしがいなくなったことに気が付いているだろう。
一時的に目の前から逃げたって、どうせ家で顔を合わすことになるのに。バカなことをした。
逃げたこともだし、うっかり「好き」だなんて口にしかけたことだってよくなかった。
そもそも「誕生日にオシャレなレストランで食事がしたい」なんて欲を出さなければよかった。
項垂れてため息を吐いたとき、膝にのせたショルダーバッグの中でスマホが震えた。きっと、健吾くんからだ。
迷いながらバッグからスマホを取りだすと、思ったとおり健吾くんから所在を確かめるラインが届いていた。駅まで夢中で走ったせいで気付かなかったけれど、ラインの前に着信もきている。
わたしの気持ちには気付かないフリをするくせに、心配だけはしてくれるのか。
わたしが母の娘だから……?
健吾くんの優しさは、今のわたしには残酷だ。
健吾くんからのラインをしばらく見つめたあと、彼には返信せずに唯葉にラインを送る。
『今、何してる?』
このまま真っ直ぐ家に帰りたくはなかった。黙って逃げ出した言い訳もできそうにないし、健吾くんと顔を合わすのも気まずい。
唯葉に連絡がつけば今夜だけ泊めてもらおうと思ったけど、彼女からの応答はなかった。
どうしよう。急に連絡して頼れそうな友達は、唯葉以外に思い付かない。
迷っているうちに、自宅の最寄り駅を乗り過ごす。けれど電車が次の駅に到着する直前、わたしの脳裏に、ふっとある人の顔が思い浮かんだ。
一度思い浮かぶと、頼るべき人はその人以外に考えられなくなってしまって。次の駅に到着するとすぐに、わたしは電車から飛び降りた。
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