その距離は、恋に遠くて

碧月あめり

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「岩瀬の言うとおり、おれは公平な立場だから。無理に家には送り返さないけど、岩瀬が今おれと一緒にいることは桜田先輩に伝えるよ。どんなケンカしたのかは知らないけど、また何も言わずに飛び出して来たんだろ?」

 答える代わりに唇を真横に引き結ぶと、那央くんが指で眉間を指でさすりながら困ったように首を傾げた。

「で、今からどうする? ずっとここにいるわけにもいかないし。ファミレスでも行って時間潰すか?」
「お腹は空いてないよ。さっき、コース料理食べてきたとこだから」
「コース料理? あぁ、だから見慣れない格好してたのか」
「似合わないって言いたい?」

 ムスッと顔をしかめると、那央くんがますます困ったように眉間を擦る。

「そうじゃないけど。妙に背伸びした、大人ぶった格好してんな、とは思った。まぁ、岩瀬は元々同世代の女子よりも大人っぽく見えるけどな」
「フォロー、ありがとうございます」

 全く感情のこもっていない声でお礼を言うと、那央くんがふ、っと笑った。

「あ、もしかしてお前。彼氏とのデートの帰りが遅くなって、桜田先輩に怒られたのか?」
「違います」

 まるで見当違いな那央くんの推理を即答で跳ね除けると、彼の笑顔が苦笑いに変わる。

 どうせ、わかりにくいって思ってるんだろうな。わたしと違って、わかりやすく困っている那央くんの手を引っ張って、一緒に立ち上がるように促す。


「ねぇ那央くん。どっか連れてってくれるなら、ファミレスじゃなくて海がいいな」
「海?」
「うん、海。実はね、今日、わたしの誕生日なんだ」
「おめでとう。だけど、一緒にコース料理を食べてきた彼氏を差し置いて、おれなんかと海に行って大丈夫なのか?」
「一緒にお祝いしてくれた人は、彼氏ではないから」

 那央くんから視線をはずしながら答えると、彼が綺麗な顔を複雑そうに歪めた。

「それって、岩瀬が家に帰りたくない理由と何か関係ある?」

 真面目な顔で訊ねてくる彼は、きっとまた、見当違いなことを考えているんだろう。
 わたしは彼を見つめて首を傾げると、曖昧に笑った。

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