16 / 55
Two
8
しおりを挟む「岩瀬の言うとおり、おれは公平な立場だから。無理に家には送り返さないけど、岩瀬が今おれと一緒にいることは桜田先輩に伝えるよ。どんなケンカしたのかは知らないけど、また何も言わずに飛び出して来たんだろ?」
答える代わりに唇を真横に引き結ぶと、那央くんが指で眉間を指でさすりながら困ったように首を傾げた。
「で、今からどうする? ずっとここにいるわけにもいかないし。ファミレスでも行って時間潰すか?」
「お腹は空いてないよ。さっき、コース料理食べてきたとこだから」
「コース料理? あぁ、だから見慣れない格好してたのか」
「似合わないって言いたい?」
ムスッと顔をしかめると、那央くんがますます困ったように眉間を擦る。
「そうじゃないけど。妙に背伸びした、大人ぶった格好してんな、とは思った。まぁ、岩瀬は元々同世代の女子よりも大人っぽく見えるけどな」
「フォロー、ありがとうございます」
全く感情のこもっていない声でお礼を言うと、那央くんがふ、っと笑った。
「あ、もしかしてお前。彼氏とのデートの帰りが遅くなって、桜田先輩に怒られたのか?」
「違います」
まるで見当違いな那央くんの推理を即答で跳ね除けると、彼の笑顔が苦笑いに変わる。
どうせ、わかりにくいって思ってるんだろうな。わたしと違って、わかりやすく困っている那央くんの手を引っ張って、一緒に立ち上がるように促す。
「ねぇ那央くん。どっか連れてってくれるなら、ファミレスじゃなくて海がいいな」
「海?」
「うん、海。実はね、今日、わたしの誕生日なんだ」
「おめでとう。だけど、一緒にコース料理を食べてきた彼氏を差し置いて、おれなんかと海に行って大丈夫なのか?」
「一緒にお祝いしてくれた人は、彼氏ではないから」
那央くんから視線をはずしながら答えると、彼が綺麗な顔を複雑そうに歪めた。
「それって、岩瀬が家に帰りたくない理由と何か関係ある?」
真面目な顔で訊ねてくる彼は、きっとまた、見当違いなことを考えているんだろう。
わたしは彼を見つめて首を傾げると、曖昧に笑った。
1
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
僕《わたし》は誰でしょう
紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。
「自分はもともと男ではなかったか?」
事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。
見知らぬ思い出をめぐる青春SF。
※表紙イラスト=ミカスケ様
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる