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Three
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しおりを挟む「那央くん、この人の曲知ってる?」
わたしは検索欄に最近流行っている男性アーティスト名前を入れると、出てきた曲のリストの中から数ヶ月前に配信されたばかりの最新曲を選んで再生した。
ギターで始まるイントロのあとに入ってくる、優しく甘い伸びのある声。運命的に出会った人への、ほろ苦くて切ない、伝えられなかった恋心を歌う曲だった。
聴き方によっては失恋の歌のようにも思えるし、未来で恋が成就する歌のようにも思える。そんな歌詞と流れるような綺麗なメロディーが、共感を呼んで心を揺らす。
しばらく聞き入っていると、そこに「あぁ、曲名わかんないけど聞いたことあるな」という那央くんの声が混ざった。
「これの何曲か前に出してたやつがすごいバズったんだっけ? 最近、若者のあいだで流行ってるみたいだよな」
「若者、って」
綺麗な顔をして、那央くんがオジサンみたいなことを言うのがちょっと可笑しい。
「岩瀬もこの人の曲、よく聴くんだ?」
「うん、わりと。全部好きだけど、最近出したこの曲が一番好きかな」
「いい曲だよな」
「この曲ね、ある約束をしたまま、突然好きな人に会えなくなってしまったっていう彼の実話が元になってるんだって。会えなくなった大切な人がどこかで聴いてくれていることを願って、気持ちを届けてるんだって。配信で言ってた」
「へぇー」
「わたしもこんなふうに、自分のことをすごく好きになってくれる人に出会いたかったな」
「何言ってんだ。岩瀬はまだまだこれからだろ」
那央くんが、ふ、っと、少しだけ唇の端を引き上げる。その横顔が、わたしのことを「子どもだ」とからかっているような気がして胸がザラつく。
これから、なのかな。健吾くんも那央くんも、わたしの『今』がどれだけ真剣なのか全然わかってない。
無言で、オーディオの音量をあげる。わたしは海に着くまで、流れてくる音楽に浸っているフリをした。
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