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Seven
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しおりを挟む那央くんは「今日だけ助けて」と言ったけれど、今日だけじゃない。求めてくれるなら、わたしは明日も明後日も明明後日もずっと。那央くんのことを助けてあげたい。
那央くんが動けなくなったら駆け付けるなんてエラそうなことを言ったくせに、いつのまにかわたしのほうが、彼に囚われて動けなくなってしまっている。
「帰る?」
わたしを引っ張って立ち上がった那央くんの、黒い傘が揺れる。これじゃ、どっちが助けられているのかわからない。
腕で顔を隠しながら頷くと、那央くんが笑って、わたしの上に傘を翳してくれた。
車に乗り込むと、那央くんは雨で濡れたフロントガラスワイパーで綺麗にしてから深呼吸した。まだ霧のような小雨が降りやまないせいで、水滴をはらったフロントガラスが細かな雨の雫で再び濡れていく。
「このまま岩瀬の家まで送ってくな」
フロントガラスから顔をそらした那央くんが、ハンドルに手をのせて少しひきつった顔で話しかけてくる。那央くんの手は震えていないし、顔だって前のように青ざめてはいなかったけれど、小雨でも緊張することには変わりないんだろう。
「那央くんちまでで大丈夫だよ。そこからは、電車で帰る。勝手に待ってたのはわたしだし。それにもし、わたしと別れたあとに雨が強くなったら困るから」
「……ありがとう」
ひきつっていた那央くんの表情が僅かに和らいだような気がして嬉しくなる。
「今日も歌ってあげようか?」
カバンからスマホを取り出して、わたしの好きな男性アーティストのバラードを流す。
短いイントロのあとに流れてくる歌声に合わせて歌い出そうとすると、那央くんがクッと吹き出した。
「前も思ったけど、岩瀬って意外に歌下手だよな」
「耳障りだった? 余計気が散る?」
慌ててスマホの音量を下げると、那央くんがククッと笑いながら、ギアをドライブに入れ替える。
「いや、大丈夫。その、絶妙な下手さ具合がちょうどいい」
「なにそれ」
ムッと頬を膨らませると、那央くんが左手を伸ばしてわたしの頭をグシャリと撫でてきた。
「好きなように歌ってて。岩瀬の歌ってる声、なんか落ち着く」
那央くんの左手がハンドルに移動しても、わたしの頭にはいつまでも触れられた余韻が残る。
「ずるいな、ほんともう」
那央くんがゆっくりと慎重に車を発進させるのを待ってから、わたしは口の中で小さくつぶやいた。
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