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第8話 ウェールズの紅龍さんは、
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「ギョオ!ギョオオオオオ!!!」
「さあハカセちゃんやっちゃって!」
「マジでやるの?じゃあ、」
私はカナガシラと呼ばれるモンスターの頭部を覆う純金に手をかけ引き剥がしにかかる。その間カイリはカナガシラが逃げないように尾びれを両手で掴み脇に挟んで固定する。
「ギョオオオオオ!ギョオオオオオ!」
血涙を流しながら、もがき、叫び、懸命に逃れようとしているが瀕死の状態までボコボコに殴られたカナガシラではカイリの拘束を振りほどけない。
メリメリ!バキャ!バリバリ!
「ギョオオオオオ!ギョオオオオオ!」
子供好物のモンスターでも罪悪感半端ないな。
「カナガシラは生きている内に頭部の金を剥がないと『濁る』からな」
ゴキャア!メリメリ!メリメリメリメリ!
「キィ!キィィィ!キィィィィィィィ!!!」
アガトラムは瀕死でろくに動けないモスマンの首を足で踏みつけて靄の顔にペンチを突っ込み歯を一本一本抜いていく。
「ちっ、暴れんじゃねえよ」
アガトラムは今度はモスマンの粉砕骨折している腕を踏みつけて固定してペンチで爪を剥がし始める。
「キィィィィィィィィィィィ!!!」
お父様がブリドン王国は野蛮人の国と言っていたが・・・・うん、気持ちめっちゃ理解できる!!!モンスターを生きたまま爪や牙を抜いていく姿とか。
「仕方がないだろ。モスマンやカナガシラは死んだら品質が落ちるんだから」
これは研究の為だ、これは研究の為だ、これは研究の為だ、これは研究の為だからそんな目で私を見るなあああああ!!!
私は考えることを止め、作業に集中することにした。
モスマンは生きたまま、『爪』『牙』『肋骨』『翼』最後に『心臓』。カナガシラは『金』を剥がした後は生きたままバラバラに解体した。骨だけになったカナガシラがまだわずかにビクンビクンと動いてる。
「さて、取れた素材はここに置いておこうか」
「・・・・どうしたティア、行くぞ」
「う、うん」
二人はどんどん前に進んでいく。私は周囲を見渡す。
私の視界に『森』はもうない。あるのは『雷』と『暴風』によって抉られた大地。
アガトラムの一撃で森がなくなった。
燃え広がる森と襲い掛かってくるモンスターにアガトラムはいちいち相手してやるのが面倒だと天高く足を振り上げ、地面に向かって振り下ろす。
「【ケラウノス】」
その瞬間、荒れ狂う雷と風の竜巻が巻き起こり全てを飲み込んだ。
アガトラム(仮)〈一部情報開示〉
『資質』【フィッシャーキング(任意発動)】
魔法又は異能に追尾能力を与える。
『資質』【ぺラム(魔法)】
原因が特定できる病を治す。
『資質』【ノドンス】
唾液、汗、精液、尿など、体内外に分泌・排泄される様々な液体に回復効果小。
『資質』【ヘグニ(任意発動)】
癒えない傷を負わせる。
『資質』【ウルフズベイン】
体内に猛毒を宿す。爪又は牙から岩くらいなら簡単に溶かし、目に入ると失明してしまうほどの毒を放出できる。毒に対しても高い耐性を持つ。
『資質』【ネグレクト(常時発動)】
自身の体内にある毒や呪いや病などの状態異常の進行を遅らせる。
『資質』【エグザイル(常時発動)】
移動に伴う疲労を軽減する。旅先で幸福な出来事が起きやすくなる。
『資質』【ケラウノス(魔法)】
激しい雷と荒れ狂う風を操る魔法。
『能力』【不具の王(常時発動、解除不能)】
常に全身に激痛が襲う、引き換えに感覚を研ぎ澄ませる。
『能力』【エアフォース(魔法)】
空中を自由に飛び回わり戦闘を可能にする魔法。
『能力』【ドックファイト】
空中にいる敵へ与えるダメージが増加する。
『能力』【ヒミンヴァンガル(魔法)】
空を雷雲で覆い、その中心から極大の雷槍を落とす。雨を降らす事も可。
『能力』【シュトルム・ウント・ドラング(魔法)】
激しい風と荒れ狂い逆巻く波を操る。
「ほう、たいしたもんだ」
関所の砦が見えた。しかも森を消し飛んだ瞬間を目撃したであろうゴブリン達だが逃げ出さずに隊列を組んで迎撃準備を整えて待ち構えていた。
「学生の頃やったあれをやるか、カイリ、やれ」
「え~あれやるの~・・・・はい、任されよ!さあ!皆、僕を見てええええ!」
カイリがコートをガバッと開き、下着を着けずに縄で縛られただけの扇情的な姿をゴブリンへと晒す。
【カリギュラ】発動!!!
『『『『ギャギャギャギャア!!!!』』』』
その姿を見たゴブリン(特に雄)は異常な興奮状態になり、思考が低下。下半身を滾らせ鼻息を荒げる。同族であるはずのゴブリン雌が汚物をみるように白い目で見るほどの乱れっぷり。
「さあ、僕を捕まえてごら~ん!」
カイリが走り出すと魅力されたゴブリン達と魅力耐性を持たない一部の上位個体が隊列を崩して追い始めた。
「下位個体は全部アッチに行ったようだな。残りの上位個体を仕留めるぞ」
「かなりの数が行ったけど大丈夫?」
「むしろ自分の心配をした方がいいと思うがな」
ゴブリンやホブゴブリンはカイリを追いかけて行ったが上位個体はほとんど魅力が効かずこちらを睨んできている。主に私をだ。
「怖いなら下がっててもいいぞ」
「ッ!ふふふ、見くびってもらっては困るぞ!私を誰だと思ってる!ちょうどいいからゴブリンどもをまとめて実験台にしてくれる!」
『アガトラムがピンチになったら義手を使わせてやる!』
アガトラムは得物であるチェンソーを呼び出す。
ギュイイイイイィィィィィィィィン!!!
「さて、『ババア』の言っていた異変ってやつの原因はあの砦の中か?今まで嗅いだことがない奇妙なニオイがしやがる」
「ババア?」
「ウェールズのババアに頼まれてこの領地に来てたが、やれやれ、思ったより面倒そうだな。何が『お前なら大丈夫だろう?気が向いたら頼む。急ぎじゃないから』だよ」
「ウェールズの紅龍?ババア呼ばわりって・・・」
「学校の卒業試験で嫌がらせを受けたんだよ。平民の俺に一位を取らせないためか、実技試験で他の連中は現役の騎士連中だったが俺だけガーディアンだった。それ以来の付き合いだ。俺がどこにいても使い魔を送って手紙を送って来やがるし正直キモい」
「はははは、ババアにキモいとか本人に聞かれるとまずいんじゃないか?」
「いやいや、手紙の返事遅れたら催促しつこいし、たまには会いに来いって追放されてる俺に無茶な要求しやがるし、遠慮なく頼み事押し付けてくるし・・・・面倒なババアだぜ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
七年前、モツイラ騎士学校卒業試験で歴代最高得点を取った二人がいた。だが、中身は全然違っていた。
筆記も実技の試験も内容は公表されてはいないがアガトラムの試験だけ難度がはね上がっていた。アガトラムも筆記試験の最中におかしいとは思ったがどうせ貴族どもの嫌がらせと思い黙って受けた。何を言っても無駄だと思ったしアガトラムにとっては別に解けないほどの難解というほどでもないから。だが実際は嫌がらせではなく卒業試験とは別の『試験』だった。
実はアガトラムを弟子にとろうとしていた人物がいた。
それが『ウェールズの紅龍』だった。
彼女は、七年たった今でもあの卒業試験の事を鮮明に覚えているという。最初は彼女の知り合いである『とある男爵』から話を聞いて興味を持った。
彼女はエルフであり近接戦闘もこなすが、基本的には魔法をぶっぱなすタイプで、アガトラムは魔法より近接戦闘に才能があるのは明らかだったが、あまりにも勿体無いと思えた。
騎士学校に在籍していた彼を覗き見た。
とある授業で他の生徒は数人で組んでいる中で一人で汗だらけになりながら鍛練するアガトラムの姿があった。
『おい、またあいつ真面目にやってるぜ』
『まあ、平民は金を払ってわざわざ来てるんだからしょうがないだろ。けどあいつはその中でも異常だよな。必死こきすぎなんだよ』
ブリドン王国では貴族は学校に行くことは義務であり、平民にその義務はない。むしろ学業に勤しむ暇があるなら働いて税を納めろだ。あと貴族は多額の寄付を学校にしているのがほとんどで生徒の成績を上げることは出来ないが余程のことがない限りは退学にはならないし留年することもない。特に戦闘訓練は本気組とサボり組で明確に別れる。
『ははは、せいぜい退学にならないように頑張るんだな』
鍛練場に金属音が響き渡る。
アガトラムは金属の鎧を着た案山子相手に二刀のナイフで連撃をくり出していた。その速度は凄まじく周りの生徒は絶句している。
『・・・・まあ、そこそこはやるよな。ははは』
『ああ、あのくらい俺の兄貴なら簡単に出来るぜ!』
バコオオオオオオン!!!
アガトラムが蹴りをくり出し金属の鎧の案山子の腹部が大きい穴ができ貫通している。
『・・・・うん、さて、ちょっとお腹痛くなったから保健室行ってくる』
『・・・・付き添ってやるよ』
アガトラムを見下していた連中はさっさと逃げて行った。
明らかに学生に域を越えている。
ボロボロになった鎧案山子を新しいものに代えようとして先生に止められていた。
『○○○○!何度言えばわかる!金属の鎧案山子は魔法の的専用で打撃は丸太の案山子を使えと言ってるだろ!お前のせいで的の数が不足気味なんだよ!!!』
『丸太じゃ物足りない、』
『言い訳するな!お前は終了チャイムがなるまで走ってろ!』
座学の授業にて、
『先生、そこの問いはこうすればもっとよくなると思い、』
『は?この問いの最適解は○○○先生が十年以上も研究してだしたものだ。間違いなんてありえない!一学生の、ましてや平民の下らん妄想で私の授業を中断させるな!○○○○!もうお前は聞かなくていい!廊下に立ってろ!』
『また立たされてるぜアイツ』
『ただ聞き流してりゃいいのに』
数週後にその教師は学会にてある発表をして定説を覆したとして有名になる。
その内容は○○○○が指摘したものだった。
彼を埋もれさせるには惜しい。私の弟子が嫌だと言うなら(言わせるつもりはないが)私でなくてもいい。『白獅子』か『雄牛』の脳筋共辺りに紹介するのも悪くない。
そして卒業試験実技テストで私は彼の相手を務めた。
私は本気の本気を出した。いや、本気で相手にしなければ『殺される』と思ったからだ。試験を評価するために居合わせた他の教師達も驚いていた。戦闘訓練時は多少荒れるが基本的には大人しく物静かで真面目な彼とは全く想像できない凶悪な笑みをうかべ、汚い言葉を発し、殺気を振り撒き教師陣をビビらせていた。
試験開始時は彼の戦い方は真面目だった。真っ直ぐな戦い方は好感が持てた。だがすぐに彼が豹変する。彼がいきなり狂喜に染みた高笑いし始めた。装備していた二刀のナイフを私に投げつけてきた。しかもガーディアンクラスの猛者でなければ即死レベル。
私はすぐに他の試験官達を『魔法』を使い避難させた。
『あひゃはははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!強者!猛者!剛者!古豪!豪傑!・・・・旨そう』
○○○○の姿が消えた瞬間、杖を持っていた左腕に激痛が発生。
左腕がなくなっていたのだ。
バキュ!バリバリ!バリバリ!グチュ!
音がする方向に視線をやると試験会場の端で私の腕を貪る○○○○がいた。
『お前、本当に獣人か?モンスターの類いじゃないだろうな?』
私は回復魔法を使う。私の回復魔法は肉体の欠損くらい治せるはずだが塞がるどころか傷口が紫色に変色しながらグズグズと溶け出した。
○○○○が低い四足前傾姿勢から圧倒的な脚力で飛び、体当たりしてきた。圧倒的な速度に回避も魔法を使った防御も間に合わず衝突し試験会場の反対側の端の壁まで吹き飛び、そのまま押さえ付けられ首元にかぶり付いてきた。私は抵抗するがビクともせず体を次々に喰われていく。
グギュルルル!!!
彼のお腹が鳴る。私はその時に何かに気付いた。その何かは七年たった今でも言い表せないがとにかく悟ったのだ。
私は優しく彼の頭を撫でながら自分の体を食べさせた。
彼は遠慮もなく彼女の状態など気にもせずに食べ続ける。その姿は捕食される憐れな獲物にも幼子に乳を与える母親にも見えた。
さすがの私も血を流し過ぎたからか意識が朦朧としてきたが下半身に痛みが走り体がほとんど動かせなかったので首だけ動かして痛みの原因を探るとあろうことか○○○○が私のアレにアレ挿入していたのだ。その、つまり、セックスしているのだ!!!痛みの原因は破血。私の処女膜が貫通したからだ。
恥ずかしながら私は・・・・歳はトップシークレット!!!だが長い年月を生きているとだけ言っておこう。私はエルフの王族で同種族からはまるで神様のような扱いを受けてきた。私がやめてくれと頼んでも私を見かければ両膝を地面に着け手を合わせてくるしまつ。男に言い寄られる経験なんぞ一度もない。さらに言えばエルフの性交は平均時間十秒程度すんでしまうものだ。
エルフは古代の原種からほぼ変化しておらず性交の時間は油断を生むとし短く済ませ、人種のように快楽に溺れるということもない生まれつき強い自制心を持って生まれる種族である。種を存続させるため弱い子供を生むより自身を生き残らせるために長命で老化しにくい肉体を手に入れたが、代わりに子供が出来にくく子供が出来た場合、母親の持つ7割以上の力が子に継承され母親の短命に陥り、9割の母親が30年以内に命を落とすという。
獣人は・・・確実に子を成そうと三時間から七時間を三日間繰り返し交尾を行う種族。
まあ、後のことは皆様の想像通りだ。
しかも一般的な獣人が三~七時間。絶倫と呼ばれる獣人は七~十五時間。○○○○は二十時間以上。
いくら自制心の強いエルフでも発狂してしまうレベルだよ!
会場に人が出入りできないように結界を展開しておいて良かった。私があんな情欲に溺れ乱れた姿を他の者に見せるわけにはいかなかったから。もし他のエルフが私が犯されている姿を見れば○○○○を殺すといいかねんからな。
後から聞いたが○○○○はほとんど覚えていなかった。
ぶっ殺すぞクソガキ!!!!
とにかく私に勝った?ので合格にしてやった。卒業後は騎士団に入団が決まったと本人には伝わっているだろうが、本当は私の権力を行使して私の側付きにしておいた。卒業後は常に私の側に置いて見張ることにした。あの試験から己を鍛え直した今の私ならけして後れをとらないと確信していた。
そして○○○○の騎士団配属日、私は普段全くしない化粧をして下ろし立てのローブと靴を身に付け待ち構える。その間仕事が手につかず姿鏡の前で服に皺ができてないか汚れてないかと鏡の前でクルッと回ったり、椅子に座れば手鏡に手がのび、髪が気になり何度も何度も確認していた。
って何はしゃいでるんだ私は!新人一人を迎えるだけだろうが!
はっ!そういえば一昨日が騎士学校の卒業式だったな。まさか卒業式定番の告白をされてないだろうな。まさか、つ、つ、付き合ったりしてないだろうな!ううっ、ピチピチの若い女の子じゃとうのたった私みたいなババアは勝てない・・・て違うだろうがああああ!
自制心の強いはずのエルフである私の心をここまで掻き乱すとは。
それから三時間後、
『来ない・・・配属初日から遅刻とはあのガキ、いや、最初は優しく』
更に二時間後、
『・・・・もうすぐお昼か、そうだ!料理!寝坊で遅刻だとしたら食べてこれない可能性が高いな。まあ初日だし歓迎会を兼ねて私の手料理を馳走してやろう』
五時間後、料理が完全に冷めきり舞い上がっていたテンションも谷底に突き落とされるかの落ちよう。
『配属日、間違ってた?もしかして、騎士団じゃなくて私の側付きになることがバレて転属手続きをしてるんじゃないだろうな。まあ全力で阻止はするが、え?バレて来ないなら・・・拒絶されたってこと、』
私は確認するため部屋に部下を呼びつける。その話を聞かされた部下の顔が真っ青になっていく。
『あの、導師様、まさか、お聞きになっておられないのですか?あの者は公爵家の令嬢を襲い怪我を負わせた罪により捕縛され、その、現在、バルツァッリ監獄に投獄されて、』
『バルツァッリ監獄』は最高ランクの犯罪者達が入れられるような場所だ。面会はゆるされないし、私物を持ち込みなど勿論許されない。犯した罪によって違いはあるが監獄内最低ランクでも一週間二十二時間労働休憩三十分で、休日は一ヶ月に一日、一日一食一汁一菜、怪我や病気でも治療せず放置が当たり前。最高ランクは更に酷い。
狭い牢屋に五・六人が押し込まれベッドもトイレも設置されておらず労働時間以外は出ることはできない。牢にある物を外に持ち出すことは許されない。牢の内で殺し合いが行われ牢内で死人がでても死体を外に出すことも許されないのだ。月に一回の休日のゴミ出し日のみ許されている。
月に一回の休日のみ運動場が開放されるが、そこでは監獄内で出来たグループ同士による抗争、殺し合いが行われることがほとんどで看守は何人死のうが止めない。寧ろ看守同士でどっちが生き残るか等の賭け事の対象にされる。運動場の端では男性同士で絡み合っている姿もあるらしい。死にたくない連中は休日だろうが基本的には牢から一歩もでない。
私は何度もバルツァッリ監獄に護送の任などで訪れたことはある。
その時に熱烈に歓迎されたのを思い出す。
『よくもぶちこんでくれたなくそアマ!犯してやるからコッチこいやあああ!』
『女だ女だ!気持ちよくしてやるからコッチにこいよ!』
『必ずここから抜け出して復讐してやるからな!』
『『『『死ーね!死ーね!死ーね!死ね!死ね!』』』』
私が手を出さないことを知っているためよく罵声を飛ばしてきていたな。
私は魔法を使いバルツァッリ監獄へ向かった。
『・・・・おかしい、静か過ぎる。何が起きてる?』
いつもは工場や工事現場の騒音や囚人達の叫び声や泣き声で騒がしい監獄が静寂に包まれていた。門番すら立っておらず馬車が出入りが激しかったはずだ。
その後、看守室に向かうと怯えきった看守達を見つけた。
『ウェールズ様!』
~~~~~♪♪♪
看守達は私の姿を見ると安堵した表情を浮かべ歓喜の雄叫びを上げるが、静まり返った監獄内にどこからか鼻歌が響いてくると再び恐怖に変わり震え出す。
事情を聞こうとするがほとんどの看守は錯乱状態に陥る。なんとか正気を保っていた看守を見つけ事情を聞いた。
少し前に片腕の獣人が収容された。
その獣人の手によって囚人のほとんどが殺害されて監獄内の仕事が回らなくなったという。僅かに生き残った囚人達は目をつけられないように大人しく騒がず息を潜めているらしい。世界中に名を轟かせるような犯罪者しか入れられないようなこの監獄で。
その獣人は一番最下層に鎖で繋ぎ放置していて、恐ろしくて近付きたくなくて食事を与えられていないらしい。
私は最下層へ向かった。薄暗い廊下を進む。彼の鼻歌と私の足音が廊下にやけに響く。到着し彼の繋がれた牢の前に立つ。
『たしか、エルフの罪人は里に強制送還されそこで裁きを受けると聞いたことがあるが、アンタ、何をしてここに来た。いや、一人か脱獄、なわけないか。その赤髪、エルフの王族か?なんでこんなところに?』
どうやら理性を保っているようだが、私のことは忘れているのか?私の初めてを奪っておいて薄情な奴だな。
『何故公爵家の令嬢を襲った?』
彼は私の言葉を聞いて。
『あ~、え~・・・・それは、ムラムラしたから?』
・・・・もっとマシな嘘つけよ!!!しかも疑問!!!
『ぶふふ、あははは!思春期の男の子だからしょうがないか』
私は自分の権力をフルに使い彼を釈放させ、彼の噂が出回るのを最小限に抑えた。まあ実際には人の口には戸は立てられない。そこそこには流れてしまった。
『今日から私が君の保護観察者だ。よろしく○○○○』
『その名は捨てる』
「さあハカセちゃんやっちゃって!」
「マジでやるの?じゃあ、」
私はカナガシラと呼ばれるモンスターの頭部を覆う純金に手をかけ引き剥がしにかかる。その間カイリはカナガシラが逃げないように尾びれを両手で掴み脇に挟んで固定する。
「ギョオオオオオ!ギョオオオオオ!」
血涙を流しながら、もがき、叫び、懸命に逃れようとしているが瀕死の状態までボコボコに殴られたカナガシラではカイリの拘束を振りほどけない。
メリメリ!バキャ!バリバリ!
「ギョオオオオオ!ギョオオオオオ!」
子供好物のモンスターでも罪悪感半端ないな。
「カナガシラは生きている内に頭部の金を剥がないと『濁る』からな」
ゴキャア!メリメリ!メリメリメリメリ!
「キィ!キィィィ!キィィィィィィィ!!!」
アガトラムは瀕死でろくに動けないモスマンの首を足で踏みつけて靄の顔にペンチを突っ込み歯を一本一本抜いていく。
「ちっ、暴れんじゃねえよ」
アガトラムは今度はモスマンの粉砕骨折している腕を踏みつけて固定してペンチで爪を剥がし始める。
「キィィィィィィィィィィィ!!!」
お父様がブリドン王国は野蛮人の国と言っていたが・・・・うん、気持ちめっちゃ理解できる!!!モンスターを生きたまま爪や牙を抜いていく姿とか。
「仕方がないだろ。モスマンやカナガシラは死んだら品質が落ちるんだから」
これは研究の為だ、これは研究の為だ、これは研究の為だ、これは研究の為だからそんな目で私を見るなあああああ!!!
私は考えることを止め、作業に集中することにした。
モスマンは生きたまま、『爪』『牙』『肋骨』『翼』最後に『心臓』。カナガシラは『金』を剥がした後は生きたままバラバラに解体した。骨だけになったカナガシラがまだわずかにビクンビクンと動いてる。
「さて、取れた素材はここに置いておこうか」
「・・・・どうしたティア、行くぞ」
「う、うん」
二人はどんどん前に進んでいく。私は周囲を見渡す。
私の視界に『森』はもうない。あるのは『雷』と『暴風』によって抉られた大地。
アガトラムの一撃で森がなくなった。
燃え広がる森と襲い掛かってくるモンスターにアガトラムはいちいち相手してやるのが面倒だと天高く足を振り上げ、地面に向かって振り下ろす。
「【ケラウノス】」
その瞬間、荒れ狂う雷と風の竜巻が巻き起こり全てを飲み込んだ。
アガトラム(仮)〈一部情報開示〉
『資質』【フィッシャーキング(任意発動)】
魔法又は異能に追尾能力を与える。
『資質』【ぺラム(魔法)】
原因が特定できる病を治す。
『資質』【ノドンス】
唾液、汗、精液、尿など、体内外に分泌・排泄される様々な液体に回復効果小。
『資質』【ヘグニ(任意発動)】
癒えない傷を負わせる。
『資質』【ウルフズベイン】
体内に猛毒を宿す。爪又は牙から岩くらいなら簡単に溶かし、目に入ると失明してしまうほどの毒を放出できる。毒に対しても高い耐性を持つ。
『資質』【ネグレクト(常時発動)】
自身の体内にある毒や呪いや病などの状態異常の進行を遅らせる。
『資質』【エグザイル(常時発動)】
移動に伴う疲労を軽減する。旅先で幸福な出来事が起きやすくなる。
『資質』【ケラウノス(魔法)】
激しい雷と荒れ狂う風を操る魔法。
『能力』【不具の王(常時発動、解除不能)】
常に全身に激痛が襲う、引き換えに感覚を研ぎ澄ませる。
『能力』【エアフォース(魔法)】
空中を自由に飛び回わり戦闘を可能にする魔法。
『能力』【ドックファイト】
空中にいる敵へ与えるダメージが増加する。
『能力』【ヒミンヴァンガル(魔法)】
空を雷雲で覆い、その中心から極大の雷槍を落とす。雨を降らす事も可。
『能力』【シュトルム・ウント・ドラング(魔法)】
激しい風と荒れ狂い逆巻く波を操る。
「ほう、たいしたもんだ」
関所の砦が見えた。しかも森を消し飛んだ瞬間を目撃したであろうゴブリン達だが逃げ出さずに隊列を組んで迎撃準備を整えて待ち構えていた。
「学生の頃やったあれをやるか、カイリ、やれ」
「え~あれやるの~・・・・はい、任されよ!さあ!皆、僕を見てええええ!」
カイリがコートをガバッと開き、下着を着けずに縄で縛られただけの扇情的な姿をゴブリンへと晒す。
【カリギュラ】発動!!!
『『『『ギャギャギャギャア!!!!』』』』
その姿を見たゴブリン(特に雄)は異常な興奮状態になり、思考が低下。下半身を滾らせ鼻息を荒げる。同族であるはずのゴブリン雌が汚物をみるように白い目で見るほどの乱れっぷり。
「さあ、僕を捕まえてごら~ん!」
カイリが走り出すと魅力されたゴブリン達と魅力耐性を持たない一部の上位個体が隊列を崩して追い始めた。
「下位個体は全部アッチに行ったようだな。残りの上位個体を仕留めるぞ」
「かなりの数が行ったけど大丈夫?」
「むしろ自分の心配をした方がいいと思うがな」
ゴブリンやホブゴブリンはカイリを追いかけて行ったが上位個体はほとんど魅力が効かずこちらを睨んできている。主に私をだ。
「怖いなら下がっててもいいぞ」
「ッ!ふふふ、見くびってもらっては困るぞ!私を誰だと思ってる!ちょうどいいからゴブリンどもをまとめて実験台にしてくれる!」
『アガトラムがピンチになったら義手を使わせてやる!』
アガトラムは得物であるチェンソーを呼び出す。
ギュイイイイイィィィィィィィィン!!!
「さて、『ババア』の言っていた異変ってやつの原因はあの砦の中か?今まで嗅いだことがない奇妙なニオイがしやがる」
「ババア?」
「ウェールズのババアに頼まれてこの領地に来てたが、やれやれ、思ったより面倒そうだな。何が『お前なら大丈夫だろう?気が向いたら頼む。急ぎじゃないから』だよ」
「ウェールズの紅龍?ババア呼ばわりって・・・」
「学校の卒業試験で嫌がらせを受けたんだよ。平民の俺に一位を取らせないためか、実技試験で他の連中は現役の騎士連中だったが俺だけガーディアンだった。それ以来の付き合いだ。俺がどこにいても使い魔を送って手紙を送って来やがるし正直キモい」
「はははは、ババアにキモいとか本人に聞かれるとまずいんじゃないか?」
「いやいや、手紙の返事遅れたら催促しつこいし、たまには会いに来いって追放されてる俺に無茶な要求しやがるし、遠慮なく頼み事押し付けてくるし・・・・面倒なババアだぜ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
七年前、モツイラ騎士学校卒業試験で歴代最高得点を取った二人がいた。だが、中身は全然違っていた。
筆記も実技の試験も内容は公表されてはいないがアガトラムの試験だけ難度がはね上がっていた。アガトラムも筆記試験の最中におかしいとは思ったがどうせ貴族どもの嫌がらせと思い黙って受けた。何を言っても無駄だと思ったしアガトラムにとっては別に解けないほどの難解というほどでもないから。だが実際は嫌がらせではなく卒業試験とは別の『試験』だった。
実はアガトラムを弟子にとろうとしていた人物がいた。
それが『ウェールズの紅龍』だった。
彼女は、七年たった今でもあの卒業試験の事を鮮明に覚えているという。最初は彼女の知り合いである『とある男爵』から話を聞いて興味を持った。
彼女はエルフであり近接戦闘もこなすが、基本的には魔法をぶっぱなすタイプで、アガトラムは魔法より近接戦闘に才能があるのは明らかだったが、あまりにも勿体無いと思えた。
騎士学校に在籍していた彼を覗き見た。
とある授業で他の生徒は数人で組んでいる中で一人で汗だらけになりながら鍛練するアガトラムの姿があった。
『おい、またあいつ真面目にやってるぜ』
『まあ、平民は金を払ってわざわざ来てるんだからしょうがないだろ。けどあいつはその中でも異常だよな。必死こきすぎなんだよ』
ブリドン王国では貴族は学校に行くことは義務であり、平民にその義務はない。むしろ学業に勤しむ暇があるなら働いて税を納めろだ。あと貴族は多額の寄付を学校にしているのがほとんどで生徒の成績を上げることは出来ないが余程のことがない限りは退学にはならないし留年することもない。特に戦闘訓練は本気組とサボり組で明確に別れる。
『ははは、せいぜい退学にならないように頑張るんだな』
鍛練場に金属音が響き渡る。
アガトラムは金属の鎧を着た案山子相手に二刀のナイフで連撃をくり出していた。その速度は凄まじく周りの生徒は絶句している。
『・・・・まあ、そこそこはやるよな。ははは』
『ああ、あのくらい俺の兄貴なら簡単に出来るぜ!』
バコオオオオオオン!!!
アガトラムが蹴りをくり出し金属の鎧の案山子の腹部が大きい穴ができ貫通している。
『・・・・うん、さて、ちょっとお腹痛くなったから保健室行ってくる』
『・・・・付き添ってやるよ』
アガトラムを見下していた連中はさっさと逃げて行った。
明らかに学生に域を越えている。
ボロボロになった鎧案山子を新しいものに代えようとして先生に止められていた。
『○○○○!何度言えばわかる!金属の鎧案山子は魔法の的専用で打撃は丸太の案山子を使えと言ってるだろ!お前のせいで的の数が不足気味なんだよ!!!』
『丸太じゃ物足りない、』
『言い訳するな!お前は終了チャイムがなるまで走ってろ!』
座学の授業にて、
『先生、そこの問いはこうすればもっとよくなると思い、』
『は?この問いの最適解は○○○先生が十年以上も研究してだしたものだ。間違いなんてありえない!一学生の、ましてや平民の下らん妄想で私の授業を中断させるな!○○○○!もうお前は聞かなくていい!廊下に立ってろ!』
『また立たされてるぜアイツ』
『ただ聞き流してりゃいいのに』
数週後にその教師は学会にてある発表をして定説を覆したとして有名になる。
その内容は○○○○が指摘したものだった。
彼を埋もれさせるには惜しい。私の弟子が嫌だと言うなら(言わせるつもりはないが)私でなくてもいい。『白獅子』か『雄牛』の脳筋共辺りに紹介するのも悪くない。
そして卒業試験実技テストで私は彼の相手を務めた。
私は本気の本気を出した。いや、本気で相手にしなければ『殺される』と思ったからだ。試験を評価するために居合わせた他の教師達も驚いていた。戦闘訓練時は多少荒れるが基本的には大人しく物静かで真面目な彼とは全く想像できない凶悪な笑みをうかべ、汚い言葉を発し、殺気を振り撒き教師陣をビビらせていた。
試験開始時は彼の戦い方は真面目だった。真っ直ぐな戦い方は好感が持てた。だがすぐに彼が豹変する。彼がいきなり狂喜に染みた高笑いし始めた。装備していた二刀のナイフを私に投げつけてきた。しかもガーディアンクラスの猛者でなければ即死レベル。
私はすぐに他の試験官達を『魔法』を使い避難させた。
『あひゃはははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!強者!猛者!剛者!古豪!豪傑!・・・・旨そう』
○○○○の姿が消えた瞬間、杖を持っていた左腕に激痛が発生。
左腕がなくなっていたのだ。
バキュ!バリバリ!バリバリ!グチュ!
音がする方向に視線をやると試験会場の端で私の腕を貪る○○○○がいた。
『お前、本当に獣人か?モンスターの類いじゃないだろうな?』
私は回復魔法を使う。私の回復魔法は肉体の欠損くらい治せるはずだが塞がるどころか傷口が紫色に変色しながらグズグズと溶け出した。
○○○○が低い四足前傾姿勢から圧倒的な脚力で飛び、体当たりしてきた。圧倒的な速度に回避も魔法を使った防御も間に合わず衝突し試験会場の反対側の端の壁まで吹き飛び、そのまま押さえ付けられ首元にかぶり付いてきた。私は抵抗するがビクともせず体を次々に喰われていく。
グギュルルル!!!
彼のお腹が鳴る。私はその時に何かに気付いた。その何かは七年たった今でも言い表せないがとにかく悟ったのだ。
私は優しく彼の頭を撫でながら自分の体を食べさせた。
彼は遠慮もなく彼女の状態など気にもせずに食べ続ける。その姿は捕食される憐れな獲物にも幼子に乳を与える母親にも見えた。
さすがの私も血を流し過ぎたからか意識が朦朧としてきたが下半身に痛みが走り体がほとんど動かせなかったので首だけ動かして痛みの原因を探るとあろうことか○○○○が私のアレにアレ挿入していたのだ。その、つまり、セックスしているのだ!!!痛みの原因は破血。私の処女膜が貫通したからだ。
恥ずかしながら私は・・・・歳はトップシークレット!!!だが長い年月を生きているとだけ言っておこう。私はエルフの王族で同種族からはまるで神様のような扱いを受けてきた。私がやめてくれと頼んでも私を見かければ両膝を地面に着け手を合わせてくるしまつ。男に言い寄られる経験なんぞ一度もない。さらに言えばエルフの性交は平均時間十秒程度すんでしまうものだ。
エルフは古代の原種からほぼ変化しておらず性交の時間は油断を生むとし短く済ませ、人種のように快楽に溺れるということもない生まれつき強い自制心を持って生まれる種族である。種を存続させるため弱い子供を生むより自身を生き残らせるために長命で老化しにくい肉体を手に入れたが、代わりに子供が出来にくく子供が出来た場合、母親の持つ7割以上の力が子に継承され母親の短命に陥り、9割の母親が30年以内に命を落とすという。
獣人は・・・確実に子を成そうと三時間から七時間を三日間繰り返し交尾を行う種族。
まあ、後のことは皆様の想像通りだ。
しかも一般的な獣人が三~七時間。絶倫と呼ばれる獣人は七~十五時間。○○○○は二十時間以上。
いくら自制心の強いエルフでも発狂してしまうレベルだよ!
会場に人が出入りできないように結界を展開しておいて良かった。私があんな情欲に溺れ乱れた姿を他の者に見せるわけにはいかなかったから。もし他のエルフが私が犯されている姿を見れば○○○○を殺すといいかねんからな。
後から聞いたが○○○○はほとんど覚えていなかった。
ぶっ殺すぞクソガキ!!!!
とにかく私に勝った?ので合格にしてやった。卒業後は騎士団に入団が決まったと本人には伝わっているだろうが、本当は私の権力を行使して私の側付きにしておいた。卒業後は常に私の側に置いて見張ることにした。あの試験から己を鍛え直した今の私ならけして後れをとらないと確信していた。
そして○○○○の騎士団配属日、私は普段全くしない化粧をして下ろし立てのローブと靴を身に付け待ち構える。その間仕事が手につかず姿鏡の前で服に皺ができてないか汚れてないかと鏡の前でクルッと回ったり、椅子に座れば手鏡に手がのび、髪が気になり何度も何度も確認していた。
って何はしゃいでるんだ私は!新人一人を迎えるだけだろうが!
はっ!そういえば一昨日が騎士学校の卒業式だったな。まさか卒業式定番の告白をされてないだろうな。まさか、つ、つ、付き合ったりしてないだろうな!ううっ、ピチピチの若い女の子じゃとうのたった私みたいなババアは勝てない・・・て違うだろうがああああ!
自制心の強いはずのエルフである私の心をここまで掻き乱すとは。
それから三時間後、
『来ない・・・配属初日から遅刻とはあのガキ、いや、最初は優しく』
更に二時間後、
『・・・・もうすぐお昼か、そうだ!料理!寝坊で遅刻だとしたら食べてこれない可能性が高いな。まあ初日だし歓迎会を兼ねて私の手料理を馳走してやろう』
五時間後、料理が完全に冷めきり舞い上がっていたテンションも谷底に突き落とされるかの落ちよう。
『配属日、間違ってた?もしかして、騎士団じゃなくて私の側付きになることがバレて転属手続きをしてるんじゃないだろうな。まあ全力で阻止はするが、え?バレて来ないなら・・・拒絶されたってこと、』
私は確認するため部屋に部下を呼びつける。その話を聞かされた部下の顔が真っ青になっていく。
『あの、導師様、まさか、お聞きになっておられないのですか?あの者は公爵家の令嬢を襲い怪我を負わせた罪により捕縛され、その、現在、バルツァッリ監獄に投獄されて、』
『バルツァッリ監獄』は最高ランクの犯罪者達が入れられるような場所だ。面会はゆるされないし、私物を持ち込みなど勿論許されない。犯した罪によって違いはあるが監獄内最低ランクでも一週間二十二時間労働休憩三十分で、休日は一ヶ月に一日、一日一食一汁一菜、怪我や病気でも治療せず放置が当たり前。最高ランクは更に酷い。
狭い牢屋に五・六人が押し込まれベッドもトイレも設置されておらず労働時間以外は出ることはできない。牢にある物を外に持ち出すことは許されない。牢の内で殺し合いが行われ牢内で死人がでても死体を外に出すことも許されないのだ。月に一回の休日のゴミ出し日のみ許されている。
月に一回の休日のみ運動場が開放されるが、そこでは監獄内で出来たグループ同士による抗争、殺し合いが行われることがほとんどで看守は何人死のうが止めない。寧ろ看守同士でどっちが生き残るか等の賭け事の対象にされる。運動場の端では男性同士で絡み合っている姿もあるらしい。死にたくない連中は休日だろうが基本的には牢から一歩もでない。
私は何度もバルツァッリ監獄に護送の任などで訪れたことはある。
その時に熱烈に歓迎されたのを思い出す。
『よくもぶちこんでくれたなくそアマ!犯してやるからコッチこいやあああ!』
『女だ女だ!気持ちよくしてやるからコッチにこいよ!』
『必ずここから抜け出して復讐してやるからな!』
『『『『死ーね!死ーね!死ーね!死ね!死ね!』』』』
私が手を出さないことを知っているためよく罵声を飛ばしてきていたな。
私は魔法を使いバルツァッリ監獄へ向かった。
『・・・・おかしい、静か過ぎる。何が起きてる?』
いつもは工場や工事現場の騒音や囚人達の叫び声や泣き声で騒がしい監獄が静寂に包まれていた。門番すら立っておらず馬車が出入りが激しかったはずだ。
その後、看守室に向かうと怯えきった看守達を見つけた。
『ウェールズ様!』
~~~~~♪♪♪
看守達は私の姿を見ると安堵した表情を浮かべ歓喜の雄叫びを上げるが、静まり返った監獄内にどこからか鼻歌が響いてくると再び恐怖に変わり震え出す。
事情を聞こうとするがほとんどの看守は錯乱状態に陥る。なんとか正気を保っていた看守を見つけ事情を聞いた。
少し前に片腕の獣人が収容された。
その獣人の手によって囚人のほとんどが殺害されて監獄内の仕事が回らなくなったという。僅かに生き残った囚人達は目をつけられないように大人しく騒がず息を潜めているらしい。世界中に名を轟かせるような犯罪者しか入れられないようなこの監獄で。
その獣人は一番最下層に鎖で繋ぎ放置していて、恐ろしくて近付きたくなくて食事を与えられていないらしい。
私は最下層へ向かった。薄暗い廊下を進む。彼の鼻歌と私の足音が廊下にやけに響く。到着し彼の繋がれた牢の前に立つ。
『たしか、エルフの罪人は里に強制送還されそこで裁きを受けると聞いたことがあるが、アンタ、何をしてここに来た。いや、一人か脱獄、なわけないか。その赤髪、エルフの王族か?なんでこんなところに?』
どうやら理性を保っているようだが、私のことは忘れているのか?私の初めてを奪っておいて薄情な奴だな。
『何故公爵家の令嬢を襲った?』
彼は私の言葉を聞いて。
『あ~、え~・・・・それは、ムラムラしたから?』
・・・・もっとマシな嘘つけよ!!!しかも疑問!!!
『ぶふふ、あははは!思春期の男の子だからしょうがないか』
私は自分の権力をフルに使い彼を釈放させ、彼の噂が出回るのを最小限に抑えた。まあ実際には人の口には戸は立てられない。そこそこには流れてしまった。
『今日から私が君の保護観察者だ。よろしく○○○○』
『その名は捨てる』
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