銀腕のアガトラム

アカヤシ

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第9話 異変

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「・・・・ねえ、アガトラム?」

「どうしたハカセ?」

「ハカセって、はあ、もうハカセでいい」

ティアは辺りを見渡す。

ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸、ゴブリンの死骸。

・・・終わっちゃたよ!ピンチにすらならなかったよ!

あれだけいたゴブリンの上位個体も全滅。戦闘中、仕方がないので死なない程度に攻撃をくらってピンチを演出しようとするが攻撃をくらう前にアガトラムが助けてくれるので無理だった。完全に視覚外にいても助けてくれるので途中で諦めた。

ドンマイ私!チャンスはまだあるさ!

「こっちから嗅いだ事がない匂いがするな」

思考に耽る私を置いて歩き出すアガトラムに気付き、私は後を追う。

砦内は静かで聞こえるのは私達の足音だけ。戦闘が終える頃には日が沈み夜に、明かりは月明かりと私が手に持つ松明だけ。

・・・正直怖い!不気味なんですけど!

ハカセことティア=ケヒトは閉暗所恐怖症の彼女は暗闇が苦手であり出来れば砦の明かりを灯したいと心の中で考えていた。

・・・しがみついたら怒るかな?

ティアが恐怖のあまりちょっと乙女化し、しかし腕にしがみつくのは恥ずかしいので後ろから服の先をちょこっとだけ摘まんだ。一瞬だけアガトラムが歩みを止めかけるがそのまま怒りもせず無言で進み続ける。

そして砦の地下へ地下へと降りていく。明かりが松明だけ月明かりすら届かない真っ暗闇に羞恥心など吹き飛んで今では後ろから抱き締めてしまっている状態。アガトラムは文句を言わず外に置いてこず付いてくる事を止めはしなかったが顔だけは険しくなっていた。

アガトラムが顔を険しくしている原因はティアではない。

下へ下へ降りていくほど妙な匂いが気配が濃くなっていく。

その匂いと気配は生物かどうかすら判別できないでいた。嗅覚が麻痺してしまったのかと疑うほどに。

慎重に突き進む二人というかティアはすでに歩くのを放棄し背中におぶさっている。片手しかないアガトラムの片手は松明を持つのに塞がっているため、腕は首に足は腰に絡めて完全に身体を密着させている状態。はっきり言ってティアは完全にアガトラムの邪魔になっていた。

そして最下層らしき場所に到着した。

途中から階段がなくなり、掘られたかのような大穴に飛び込む事を繰り返しようやく目的の場所に着いた。

その階層は明るい。赤黒い光が階層を照らしているからだ。

部屋ではなく階層。

地下でありながら広く天井が高い。

地面には『文字』のようなものが一面に血のようなもので書かれており、階層の中心にはまるで人の心臓の形をした巨大な肉の塊が鎮座していた。

アガトラムとティア肉の塊に近付くが全く反応がない。

ここまで来るのに罠らしきものすらなかった。

ティアが恐る恐る肉の塊に触れてみる。

「これは人肉、かな?モンスターの肉も混じっているようだが人肉を押し固めて作った?」

「作った?つまり自然発生したのではないと」

「人肉も百や二百とかのレベルじゃない・・・万か、それ以上かもしれない」

「そんなにか」

「多分だけど、これは数年単位で作ったものじゃないかも。ゴブリンとは『別問題』かも。ん?心臓の中に何かある・・・!」

アガトラムとティアの会話は途中で打ち切られた。理由は二人が通ってきた穴から降ってきたからだ。

降ってきたのはゴブリンの死骸。しかもその死骸の破損状態を見てすぐにわかった。その死骸はアガトラム達が倒したものだと。

『■□★■%※§〒#△▲#%□◯¶§※▼▼』

何者かの言葉が階層に響く。その声に反応するかのように地面に描かれた文字は光る。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

常人では立っていられないほどの揺れが発生。

アガトラムはティアを抱き抱えるとその場から全力離脱。来るときにはなかったはずの罠があったがアガトラムの速度はそれらを『置き去り』にする。アガトラムの動きに罠の反応が追い付けず通り過ぎた後に発動するしまつ。

大穴を出て階段を駆け上がり砦の外へ、地上へ飛び出すアガトラム達。

「なんだコレは?」

ティア達の視界は一瞬で変わる。

「最下層?何でアガトラムは確かに転移の魔法?いや、そんな兆候なかったはず」

そこは最下層。ただしもうゴブリンの死骸も心臓もない。

ただし一匹のゴブリンらしき生物が立っていた。

額に第三の眼、その眼はただの眼ではなく紋様が浮かび上がっており魔眼の可能性がある。肌は緑色が徐々に変化し黒色に変わっていく。

メキメキッ!バキャ!バリバリバリ!

背中から黄金の四枚の翼が生えてきた。その黄金の翼は薄く光を放ち、その光からは神聖さすら感じるほどだった。

その生物の頭上に光が集まり輪を形成する。

目の前にいる生物に困惑するティア。アガトラムは黙ってその生物の変容を『観察』し続ける。

『※◯◯◯¶§□♯♯〒■%□○●●※□◆%♯♯〒¶§§§』

先程の声が再び階層内で聞こえてきた。どうやら目の前のゴブリンでもないようだ。

つまりまだ何かがいるかもしれない。
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