ガチャで大当たりしたのに、チートなしで異世界転生?

浅野明

文字の大きさ
5 / 9
第一章 新しい世界

ステータス確認

しおりを挟む
思ったよりもふかふかのベッドでゆっくり休息をとり、異世界あるあるな微妙な料理ではなく、調味料をしっかり使った美味しい料理をしっかり食べて夜もゆっくり眠ったおかげで、翌日はスッキリ目が覚めた。

しかし、やはり夢ではないようだ。目が覚めても彼女がいたのは昨夜泊まった広い部屋であり、日本の自宅ではなかったからだ。

ここがどこかはよくわからないが、結局のところ帰ることができないのならここでなんとか暮らしていけるようにするしかない。今日のところは神殿が保護してくれているが、今後はどうなるかわからないから、暮らしていけるだけの収入がある仕事を見つけるのは急務といえるだろう。

よくわからない組織にずっと頼りっぱなしというわけにはいかないし、蓮は教会という組織にそもそも馴染みがない。そのうえ、これまで読んでいた小説なんかを参考にしたところ、あまり教会という組織にいい印象がないのだ。

今のところ良くしてくれるとはいえ、不安定すぎるし、依存度が高まるのは良くない。とはいえ、いきなりあれもこれもは無理というもの。まずはできることからしなければならないだろう。

「うーん、爽快な目覚めだね。今日は何しようかな‥‥?」

ちょっと悩んだが、結局ステータスを確認することにした。やはり、身体能力やスキルがよくわからないままでは不安が募る。まずはできることとできないことを確認しておくことが大切である。

蓮はガラガラで大当たりをしたのだ。実感はなくても、大当たりなのである。ということは、昨日は少ししか見なかったステータスをより詳しく確認すれば、蓮だってラノベにあるあるなチートを持っているかもしれない。この部屋には今は誰もいないし、確認するのはいまだろう。

「よし、ステータス」

だれもいなくても結局恥ずかしいので、声は小さくなってしまう。

名前:篠宮蓮
年齢:12歳
職業:なし
称号:異世界からの漂流者 幸運の使者 神のいたずらに巻き込まれたもの 精霊に愛されしもの
スキル:アイテムボックス
持ち物:幸運のアイテム袋 スキルブック

前回ステータスを表示したときと同じような、青い窓が眼前に現れた。これはいったいどういった原理で浮いているのだろうか。とても気になる。

「・・・あれ?なんかちょっと違う?」

はっきりとは覚えていないが、称号欄が増えているような気がする。前回は「精霊に愛されしもの」なんて称号はなかったような…。いとはいえ、はっきりと覚えているわけではないから何とも言えないのだが。

「うーん、まあいいや、考えても思い出せないしな~」

そもそも、なぜ今更半分以上忘れかけていたゲームのキャラっぽい感じになっているのかもよくわからない。いくらハマっていたとはいえ、そんな昔プレイしていたゲームってどうなっているのだと問い詰めたい。

どうせなら、今現在プレイしているゲームにしてくれればよかったのに。まあ、キャラが似ているというだけで別に、ゲームのキャラの能力を持っているわけではないのだが。・・・・いや、どうだろう。持っているかどうかすらよくわからないのが問題ではないだろうか。

「うーん、ゲームの魔法はどうだっただろうか」

確か、ごく普通の魔法だった気がする。火魔法なら初級が「ファイア」、水魔法なら「ウォーター」みたいな。一般的かつ分かりやすい名称だったはずだ。

「とりあえず試すなら火は危険だから水魔法かな」

ほかにも土や風などの魔法もあるが、室内では火と同じくらい使い勝手が悪いだろう。その他にも空間やら時やら木やらいろいろあった気もするが、うろ覚えすぎて使うのは怖い。

「細かいところが全然覚えてないなあ」

やはり、10年は長いと思う。とはいえ、試してみないことにはどうしょうもない。

「ウォーター」

大きな声では使えなかった時が恥ずかしいので、小さく呟いて両手を前に突き出す。すると、手のひらから水があふれてきた。

「わっ、どうしよう、とまって!」

水が勢いよくあふれて部屋中が水浸しだ。慌てて止まれと念じると、水が嘘のようにぴたりと止まった。

「止まった‥‥?もしかして念じるだけで魔法使えたりするのかな?」

いくらなんでもそれはないか、と蓮は首を横に振る。

「ははは、‥‥でも一応念のために確認は必要だよね?」

誰にともなくつぶやいて、心の中でウォーターと唱え、水がさっきみたいに出ればいいなあ、と考えてみる。

「げ、とまって~!」

とたんに両手から勢いよく水が噴き出し、蓮は慌てて止まれと念じた。

「は~、びっくりした。まさかのラノベあるある、異世界ロマンだな」

やはり、異世界チート魔法といえば無詠唱といえるだろう。まさか蓮にも使えるとは、うれしい誤算である。

「はあ、それよりどうしようかな、この部屋。元通りにならないかな?」

つぶやくと、室内なのに爽やかな風が吹き抜け、一瞬で水浸しだった部屋が元通りになった。

「はあ?」

少なくとも、さっき魔法を使ったときには魔力(たぶん)がほんの少しとはいえ減った感覚があったのに、今回は何も減っていない気がする。なのに、部屋は元通りになっているとはこれいかに。

「なにこれ、何があったの・・・・」

部屋が元通りになったのは喜ばしいことではあるが、理由がわからない力は蓮に不安を与えた。

「もしかしてステータスに関連しているのかな」

とりあえずステータスを開いてみると、ステータスにはまったく変化がない。

名前:篠宮蓮
年齢:12歳
職業:なし
称号:異世界からの漂流者 幸運の使者 神のいたずらに巻き込まれたもの 精霊に愛されしもの
スキル:アイテムボックス 
持ち物:幸運のアイテム袋 スキルブック

魔法が使えるのに、スキルに魔法が増えていないのも謎である。

「うーん、そういえばこのアイテムって何だろう」

手持ちには、これといった荷物はない。ということは、スキルのアイテムボックスの中に入っているのだろうか。これも異世界あるあるの便利スキルなのか、気になるところではある。

「えっと、アイテムボックス?」

そっと呟いてみると、目の前に黒い小さな穴が開いた。

「え、ナニコレ、ちょっと怖い」

この黒い穴に手を突っ込めということだろうか。手を入れたとたんに向こう側から引っ張られたりとか、手首の先がちょん切れたりとかないよね。正直、怖くて手を入れるのには勇気がいると思うのだ。これはないな。どうしよう。こうなれば確認は後回しにしてしまうか。

「いやいや、仕事もそうだけど後回しにしてもいいことないからね」

とはいえ、いきなり手を入れるのはハードルが高い。

ひとまず、近くにあったコップを穴に投げ入れてみる。

コップは穴に吸い込まれるようにして、消えた。

「お、おお~」

コップが消えると、目の前のステータスウィンド?の上部にタブが現れた。タブにはアイテムボックスと記載されている。タッチしてみると画面が切り替わり、ゲームでよく見るようなアイテムボックスがでてきた。画面が小さな四角に区切られていて、四角のなかにはアイテムの絵?が描かれている。

「アイテムボックスの中にコレが入ってるってこと?」

赤い液体が入ったフラスコのような絵をタッチすると、「治癒ポーションを取り出しますか?YES/NO」と表示がでてくる。絵の下に999と数字が書いてあるのは、保管されている数だろうか。結構色々なアイテムが入っている。食べ物や飲み物から服や小物まで、一通り揃っているようだ。

もしかして、画面右上の数字はお金だろうか?一生暮らしていけそうな金額が記載されているのだか。

ガチャで当たった「幸運のアイテム袋」ってコレのこと?

画面を下の方にスクロールすると、さっき穴に入れたコップもあった。

「ほほ~なるほど。さすが金色のガチャ(笑)」

一応金色のガチャ(笑)にも意味はあったらしい。これはぜひ入っている食べ物を確認しなくては、と意気込んで気になる料理を取り出そうとしたところで、部屋の外から声をかけられた。蓮は慌ててステータス画面を消して、返事をしたのだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

光属性が多い世界で光属性になりました

はじめ
ファンタジー
転生先はかつて勇者、聖女のみが光属性を持つ世界だったが、 勇者が残した子孫が多すぎて光属性持ちが庶民、貴族当たり前の世界。むしろ貴族ならば属性二個持ち以上は当たり前の世界になっていた。 そんな中、貴族で光属性のみで生まれたアデレイド 前世の記憶とアイデアで光属性のみの虐げられる運命を跳ね除けられるのか。

神様の人選ミスで死んじゃった!? 異世界で授けられた万能ボックスでいざスローライフ冒険!

さかき原枝都は
ファンタジー
光と影が交錯する世界で、希望と調和を求めて進む冒険者たちの物語 会社員として平凡な日々を送っていた七樹陽介は、神様のミスによって突然の死を迎える。そして異世界で新たな人生を送ることを提案された彼は、万能アイテムボックスという特別な力を手に冒険を始める。 平穏な村で新たな絆を築きながら、自分の居場所を見つける陽介。しかし、彼の前には隠された力や使命、そして未知なる冒険が待ち受ける! 「万能ボックス」の謎と仲間たちとの絆が交差するこの物語は、笑いあり、感動ありの異世界スローライフファンタジー。陽介が紡ぐ第二の人生、その行く先には何が待っているのか——?

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜

三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」 「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」 「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」 「………無職」 「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」 「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」 「あれ?理沙が考えてくれたの?」 「そうだよ、一生懸命考えました」 「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」 「陽介の分まで、私が頑張るね」 「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」 突然、異世界に放り込まれた加藤家。 これから先、一体、何が待ち受けているのか。 無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー? 愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。 ──家族は俺が、守る!

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

処理中です...