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第一章 新しい世界
精霊召喚
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唐突だが、精霊というものを知っているだろうか。
蓮は当然のことながら、知らない。いや、知ってはいるのだ。小説や漫画に登場する程度であれば。とはいえ、そういった創作ものに登場する精霊というものは、物語によってちょっとずつ違う。つまり、ある程度は知っているものの、実際にこの世界にいるという精霊については全く知らないというわけだ。
何が言いたいのかというと、
「精霊の仕業?」
朝水浸しになった部屋が一瞬で元通りになったのも、先ほど朝食の最中に食べたい果物をつぶやいた時に目の前に唐突に果物が現れたのも、今しがた蓮をにらんだ騎士が地面にはいつくばっているのも(これは現在進行形で蓮の目の前で地面とキスしている)、オーリによるとすべて精霊の仕業ということらしい。
「ええ、そうです。あなたはとても精霊に愛されているのですね」
「精霊……」
そういえば、ステータスにそういった記述が増えていた気がする。よくわからなかったのでスルーしたのは失敗だっただろうか。
「でも精霊って何か契約とか必要ないの?」
たいていの物語では、精霊の力を講師するには契約とか魔術的ななにかとか、召喚とか何かしら必要になったような気がする。ちょっとつぶやいただけで願いをかなえてくれる、むしろ何も考えなくても蓮に不快感を与えた人物を勝手に制裁するなど、そんなのありなのか。
「そうですね。精霊の力を行使するためには、精霊との親和力が必要で、契約もしなければなりません」
「親和力……」
そんなもの、あるのだろうか。少なくともステータスには表示されていなかった。それに、契約もした覚えがない。
「ふふ、レン様は精霊様によほど愛されているのでしょう。レン様の周囲に常にいる精霊様が多すぎて、私にはレン様のお姿がよく見えませんよ」
「ええ、ナニそれ!」
精霊なんて見えない蓮は、そんなことをいわれてもよくわからない。が、オーリはうそを言っているようには見えなかった。
「ただ、そのお力は強力すぎるので、制御できなければ今後困ったことになるかもしれませんね」
ちらりと、床にはいつくばっている騎士を見てオーリが困ったように言う。うん、こんな状況にした蓮が言うことでもないが、助けてあげようよ。
「困ったこと……制御ってどうすればいいの?」
少なくとも、今の蓮ではあの騎士を開放することもできそうにない。確かに、このままではいずれ大きなトラブルを呼び込みそうである。
「まずは、精霊様を視られるようにするのがよろしいかと。そのうえで、なるべく力の強い精霊様と契約するのが良いでしょう」
「なんで?」
「力の強い精霊様と契約することで、力の強い精霊様に小さな下級の精霊様を制限して頂くことができます」
「へえ、じゃあ何とか頑張ってみる。でも力の強い精霊がきてくれるかな‥‥…」
「ええ、それは全く問題ないかと。おそらく上級精霊様であれば問題なく契約できると思いますよ」
にこやかにそういって、オーリは精霊を視る方法を教えてくれる。
「すでに精霊様のご加護をお持ちのようですから、精霊が見たい、と念じるだけで見られるようになるでしょう」
「え~、めっちゃ適当じゃない。本当に大丈夫なの?」
驚くほど簡単な方法に、思わず疑いの目を向けてしまう。だがしかし、オーリはにこにこと笑っているだけで、うそをついているようには見えなかった。
「うーん、まあ物は試しだよね」
精霊が見たい、精霊が見たいと念仏のように唱えてみること数分、目の前に小さな何かがいるのが見えた。それはショッキングピンクの豚だったり、出目金だったりとさまざまな形をしていた。
「おお~、なんかバラエティ豊かでめっちゃカラフルだけど、これが精霊?」
『そうである!』
蓮の疑問に答えたのは、オーリではなく謎の生き物だった。それは美しい虹色の羽根を持っていた。一見すると妖精っぽいのだが、なぜか黒いタキシードを着て、シルクハットをかぶっている。顔にはモノクルをつけ、立派な口ひげをいじっている。右手にはステッキを持っている、ダンディなおじさんだ。とてもダンディだし、別にいけないわけではないが背中の虹色に輝く美しい羽根が壊滅的に似合っていない。もちろん、連の持っていた妖精像はガラガラと崩れてしまったのは言うまでもない。まあ、妖精像が崩れたのは別にこのおじさん妖精のせいだけではなく、カラフルな豚や出目金のせいでもあるのだが。うん、まあ、妖精ではなく精霊だった。どちらにしても、なんか納得できない蓮であったが。
「あ、あそう」
何とも返事をしづらく、とりあえずうなずく。
『なぜそんなに微妙な顔をしているのかね?吾輩は中級精霊である。この高貴な姿を見て何とも思わないのかね?』
なんとも……いや、イメージめっちゃ崩れているけどね。なんとも思わないわけないけどね。
『わかったのなら吾輩と契約するのである』
「どうされました?」
精霊の言葉にかぶるように、オーリが蓮に問いかけてきたので、1体の中級精霊が契約したがっていることを告げると、首を振られてしまった。
「できれば上級以上の精霊様が望ましいです」
「どうして?」
「レン様に集まっている精霊様の数が多すぎて、中級の精霊様では対処しきれいないでしょうから」
特に同格の精霊が来た場合には、どうしようもないのだという。基本的に一人が契約できる精霊は1体だけといわれているため、なるべく力が強い精霊を召喚してから契約するのが良いだろうとのこと。目の前の中級精霊は非常に不満そうではあるが、同格の精霊が来た場合どうしようもないだろうというオーリの予想には、渋い顔をしただけで何も言わなかった。
「うーん、なるほど?」
とりあえず、オーリに召喚の仕方を教えてもらうことにした。
「精霊様を召喚するには、この精霊の粉を使います」
懐から小さな袋を取り出して、蓮に渡してくれる。袋の中には、キラキラ輝く粉が詰められていた。
「この粉を周囲に振りまき、精霊様に来ていただくようお祈りしてください」
「……それだけ?」
「それだけです」
めちゃめちゃ簡単だった。後から聞いたところによると、精霊の粉はとても効果らしく、だれでも召喚ができるというわけではないようだ。そのうえ、いくら精霊の粉を使って呼び掛けても、精霊に好かれる体質でないと精霊は召喚できないらしい。
「ふーん、まあ頑張ってみるよ」
精霊が見られるようになったのはいいけれど、さまざまな形・色の精霊がさっきから常に視界をうろうろしていて、正直めまいがしそうだ。後、あれこれ言ってきてめっちゃうるさい。これを何とか出来るなら、といった彼女の切実な思いが届いたのか、精霊はすぐに召喚された。しかも2体も。
『ちょっとう、召喚に先に応じたのワタシよう』
青く、長い髪の美しい女性がそういうと、もう一人の燃えるような赤い髪を持つ男性が嫌そうに顔をしかめる。
『うるせえな、大して変わんねえじゃねえか』
『いやよう、変わるわよう。この子はワタシのものよう』
『ああ?ふざけんじゃねえ!こいつは俺のものだ!!』
いや、どっちのものでもないからね。
「こまったな、もう一回試した方がいいのかな?」
喧嘩ばかりされても、連にも選べない。というわけでオーリに問いかけたのだが、彼はぽかんと口を開けて二人の精霊を視ている。
「せ、精霊王様?!」
「ん?」
今なんか不穏な言葉が聞こえた気がした。王様とか、いらないんですよ?
よくよく見れば、うっとうしいほどに群がっていた小さな精霊たちもいなくなっている。残っているのは先ほどのおじさんな精霊くらいのものである。なんとなく、とても嫌な予感がするのは、蓮の気のせいではないだろう。……見なかったことにして別の精霊を召喚してはだめだろうか。
とはいえ、問題の先送りは良くないだろう。胃が痛い。蓮はため息をついて、いまだに喧嘩をしている2体の精霊について詳しい話を、唯一残ったおじさんの精霊に聞くことにしたのであった。
蓮は当然のことながら、知らない。いや、知ってはいるのだ。小説や漫画に登場する程度であれば。とはいえ、そういった創作ものに登場する精霊というものは、物語によってちょっとずつ違う。つまり、ある程度は知っているものの、実際にこの世界にいるという精霊については全く知らないというわけだ。
何が言いたいのかというと、
「精霊の仕業?」
朝水浸しになった部屋が一瞬で元通りになったのも、先ほど朝食の最中に食べたい果物をつぶやいた時に目の前に唐突に果物が現れたのも、今しがた蓮をにらんだ騎士が地面にはいつくばっているのも(これは現在進行形で蓮の目の前で地面とキスしている)、オーリによるとすべて精霊の仕業ということらしい。
「ええ、そうです。あなたはとても精霊に愛されているのですね」
「精霊……」
そういえば、ステータスにそういった記述が増えていた気がする。よくわからなかったのでスルーしたのは失敗だっただろうか。
「でも精霊って何か契約とか必要ないの?」
たいていの物語では、精霊の力を講師するには契約とか魔術的ななにかとか、召喚とか何かしら必要になったような気がする。ちょっとつぶやいただけで願いをかなえてくれる、むしろ何も考えなくても蓮に不快感を与えた人物を勝手に制裁するなど、そんなのありなのか。
「そうですね。精霊の力を行使するためには、精霊との親和力が必要で、契約もしなければなりません」
「親和力……」
そんなもの、あるのだろうか。少なくともステータスには表示されていなかった。それに、契約もした覚えがない。
「ふふ、レン様は精霊様によほど愛されているのでしょう。レン様の周囲に常にいる精霊様が多すぎて、私にはレン様のお姿がよく見えませんよ」
「ええ、ナニそれ!」
精霊なんて見えない蓮は、そんなことをいわれてもよくわからない。が、オーリはうそを言っているようには見えなかった。
「ただ、そのお力は強力すぎるので、制御できなければ今後困ったことになるかもしれませんね」
ちらりと、床にはいつくばっている騎士を見てオーリが困ったように言う。うん、こんな状況にした蓮が言うことでもないが、助けてあげようよ。
「困ったこと……制御ってどうすればいいの?」
少なくとも、今の蓮ではあの騎士を開放することもできそうにない。確かに、このままではいずれ大きなトラブルを呼び込みそうである。
「まずは、精霊様を視られるようにするのがよろしいかと。そのうえで、なるべく力の強い精霊様と契約するのが良いでしょう」
「なんで?」
「力の強い精霊様と契約することで、力の強い精霊様に小さな下級の精霊様を制限して頂くことができます」
「へえ、じゃあ何とか頑張ってみる。でも力の強い精霊がきてくれるかな‥‥…」
「ええ、それは全く問題ないかと。おそらく上級精霊様であれば問題なく契約できると思いますよ」
にこやかにそういって、オーリは精霊を視る方法を教えてくれる。
「すでに精霊様のご加護をお持ちのようですから、精霊が見たい、と念じるだけで見られるようになるでしょう」
「え~、めっちゃ適当じゃない。本当に大丈夫なの?」
驚くほど簡単な方法に、思わず疑いの目を向けてしまう。だがしかし、オーリはにこにこと笑っているだけで、うそをついているようには見えなかった。
「うーん、まあ物は試しだよね」
精霊が見たい、精霊が見たいと念仏のように唱えてみること数分、目の前に小さな何かがいるのが見えた。それはショッキングピンクの豚だったり、出目金だったりとさまざまな形をしていた。
「おお~、なんかバラエティ豊かでめっちゃカラフルだけど、これが精霊?」
『そうである!』
蓮の疑問に答えたのは、オーリではなく謎の生き物だった。それは美しい虹色の羽根を持っていた。一見すると妖精っぽいのだが、なぜか黒いタキシードを着て、シルクハットをかぶっている。顔にはモノクルをつけ、立派な口ひげをいじっている。右手にはステッキを持っている、ダンディなおじさんだ。とてもダンディだし、別にいけないわけではないが背中の虹色に輝く美しい羽根が壊滅的に似合っていない。もちろん、連の持っていた妖精像はガラガラと崩れてしまったのは言うまでもない。まあ、妖精像が崩れたのは別にこのおじさん妖精のせいだけではなく、カラフルな豚や出目金のせいでもあるのだが。うん、まあ、妖精ではなく精霊だった。どちらにしても、なんか納得できない蓮であったが。
「あ、あそう」
何とも返事をしづらく、とりあえずうなずく。
『なぜそんなに微妙な顔をしているのかね?吾輩は中級精霊である。この高貴な姿を見て何とも思わないのかね?』
なんとも……いや、イメージめっちゃ崩れているけどね。なんとも思わないわけないけどね。
『わかったのなら吾輩と契約するのである』
「どうされました?」
精霊の言葉にかぶるように、オーリが蓮に問いかけてきたので、1体の中級精霊が契約したがっていることを告げると、首を振られてしまった。
「できれば上級以上の精霊様が望ましいです」
「どうして?」
「レン様に集まっている精霊様の数が多すぎて、中級の精霊様では対処しきれいないでしょうから」
特に同格の精霊が来た場合には、どうしようもないのだという。基本的に一人が契約できる精霊は1体だけといわれているため、なるべく力が強い精霊を召喚してから契約するのが良いだろうとのこと。目の前の中級精霊は非常に不満そうではあるが、同格の精霊が来た場合どうしようもないだろうというオーリの予想には、渋い顔をしただけで何も言わなかった。
「うーん、なるほど?」
とりあえず、オーリに召喚の仕方を教えてもらうことにした。
「精霊様を召喚するには、この精霊の粉を使います」
懐から小さな袋を取り出して、蓮に渡してくれる。袋の中には、キラキラ輝く粉が詰められていた。
「この粉を周囲に振りまき、精霊様に来ていただくようお祈りしてください」
「……それだけ?」
「それだけです」
めちゃめちゃ簡単だった。後から聞いたところによると、精霊の粉はとても効果らしく、だれでも召喚ができるというわけではないようだ。そのうえ、いくら精霊の粉を使って呼び掛けても、精霊に好かれる体質でないと精霊は召喚できないらしい。
「ふーん、まあ頑張ってみるよ」
精霊が見られるようになったのはいいけれど、さまざまな形・色の精霊がさっきから常に視界をうろうろしていて、正直めまいがしそうだ。後、あれこれ言ってきてめっちゃうるさい。これを何とか出来るなら、といった彼女の切実な思いが届いたのか、精霊はすぐに召喚された。しかも2体も。
『ちょっとう、召喚に先に応じたのワタシよう』
青く、長い髪の美しい女性がそういうと、もう一人の燃えるような赤い髪を持つ男性が嫌そうに顔をしかめる。
『うるせえな、大して変わんねえじゃねえか』
『いやよう、変わるわよう。この子はワタシのものよう』
『ああ?ふざけんじゃねえ!こいつは俺のものだ!!』
いや、どっちのものでもないからね。
「こまったな、もう一回試した方がいいのかな?」
喧嘩ばかりされても、連にも選べない。というわけでオーリに問いかけたのだが、彼はぽかんと口を開けて二人の精霊を視ている。
「せ、精霊王様?!」
「ん?」
今なんか不穏な言葉が聞こえた気がした。王様とか、いらないんですよ?
よくよく見れば、うっとうしいほどに群がっていた小さな精霊たちもいなくなっている。残っているのは先ほどのおじさんな精霊くらいのものである。なんとなく、とても嫌な予感がするのは、蓮の気のせいではないだろう。……見なかったことにして別の精霊を召喚してはだめだろうか。
とはいえ、問題の先送りは良くないだろう。胃が痛い。蓮はため息をついて、いまだに喧嘩をしている2体の精霊について詳しい話を、唯一残ったおじさんの精霊に聞くことにしたのであった。
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