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第一章 新しい世界
神殿と神様
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大きな城門を前に、蓮は少し顔をこわばらせた。城門の左右には、見上げるほどに大きな岩の人形、いわゆるゴーレムが鎮座していたからだ。これまでで一番異世界っぽい感じがする城門に、蓮は若干引いた。城門にゴーレム、必要?
「ああ、初めての方は驚かれますよね」
オーリが蓮の反応をほほえましげに見て、うなずく。驚くというか圧がありすぎるというか。いや、本当になんで城門にゴーレム?
「この2体のゴーレムは、初代教皇様がお作りになったそうです」
めっちゃ笑顔で告げられたが、それ以上なにも言ってくれない。別にだれが造ってもいいけど・・・なんで教皇?ゴーレム作る必要あるの?
まさか、初代教皇が趣味でゴーレム作って城門に配置したのだろうか。まさかね、とそれでも気になってつい聞いたら、さりげなく目をそらされた。・・・まさかの趣味なんだね。しかも作ったゴーレムを城門に配置するなんて、それって絶対他人にみせびらかしたかったんだよね。納得はできないが、理解はした蓮だった。
ちなみに、異世界物にありがちな審査や検問などに時間がかかるのかと思いきや、城門はあっさりと通れた。
彼女には身分を証明するものなど何もないが、オーリが門番に2、3言話すと門番が頭を下げて恐縮しながら馬車を通してくれたのだ。オーリには、彼女が思っている以上の権力や地位があるのかもしれない。
王都の中は、彼女が考えていたよりもずっと活気があった。王都の住民は約20万人程度とのことだったが、広い大通りにはかなりの人出があり、露店も数多くある。ちらっと馬車の中から見ただけだが、売っている商品の種類も豊富に見えた。これはぜひ、食べ歩きをしなくてはならないだろう。
王都は大まかに4つの区画に分かれている。中央に王城と神殿があり、東側には商館や露店などの商売人が住んでいる商業区。武器を取り扱う鍛冶工房なども東側にある。北側には騎士団や衛兵などの詰め所がある防衛区。冒険者ギルドなどもこちら側にあるためか、宿屋なども多くたっている区画らしい。
西側には住民たちが住む住宅区。北と西の境目あたりに歓楽街もある。南側には貴族の館が多く立ち並ぶ貴族区。とはいえ、あくまでも大まかな区切りであり、貴族区以外は普通に行き来ができるし、境目といってもはっきりしたものがあるわけではない。
ちなみに、貴族区には一般市民は入れない。城門は各区画に1つずつ、全部で4つあり、蓮が入ってきたのは商業区にある東門だ。いくら王都とはいえどゴーレムがいるのは東門だけである。まあ、あんなものがすべての門に鎮座していたら、嫌だろう。少なくとも、出入りしづらいには違いない。商業区を縦断する大通りは、馬車が2台すれ違えるほどの広さがあり、多くの人が歩いている。いかにも異世界の都市っぽくて、蓮は興奮しながら馬車から外を眺めていた。
馬車は特に何事もなく大通りを進み、問題なく大神殿に到着した。異世界転生あるあるなトラブルも、何もない。神殿はかなり大きく、白を基調として建てられていて、荘厳な雰囲気があった。芸術的センスに乏しく、家は住めればいい、といった程度の蓮でも、美しいと感じられる建物だ。
「ではレン様、神殿長様にあいさつをされたらお部屋を用意させますのでしばらくお休みになってください」
唐突にいわれて、蓮は首をかしげる。
「まだ日も高いよ」
休むにはかなり早い時間だ。挨拶とはいえ、そこまで長時間に及ぶわけではなく、簡単に滞在の許可を取るだけ。それにしたって、既にオーリの方から話がいっているという。しかし、オーリは優しく微笑んで首を振った。
「まだ日中ではありますが、レン様はお疲れのご様子です」
確かにそうかもしれない。もともと引きこもりのレンは、社会人になってからここまで長く外にいたことがない。そのせいか、異世界にきたせいか、いわれてみれば確かにずいぶん疲れているのだろう。
「あ~、たしかに疲れているかも。じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらおうかな」
蓮の言葉に、オーリは優しくうなずいたのだった。
※※※
「オーリよ、あのものが神託の巫女か」
蓮が去った謁見の間で、神殿長であるユリウスがオーリに問いかける。
「はい、ご本人は自覚しておられないようですが、間違いないかと」
蓮の周囲を漂う精霊も、ありえないくらい多い。しかも、そのほとんどが蓮に好意的であり、周囲から蓮を守るようにしていた。そもそもが、精霊にとって人間など取るに足りない存在だ。稀に精霊に好かれる体質のものが契約を結び、精霊の力を行使する精霊士もいるが、それにしたってせいぜい1~2体だ。あれほど、数えるのも難しいほどの精霊がそばにいる存在など、見たことも聞いたこともない。
精霊に最も愛されたといわれる、200年前に存在した精霊姫といえど、契約した精霊は4体だったと伝えられている。しかし、オーリの直感ではあるがおそらく、蓮は周囲を漂っている精霊全てと契約が可能なのではないだろうか。とはいえ、彼女の意に添わぬことをすれば、国ごと滅ぼされそうである。そのため、神殿側としては出来る限り彼女を自由にさせつつ、その望みを最大限叶えるようにするしかない。彼女は、存在そのものが爆弾なのである。
「ふむ、であればできる限り便宜を図るように。それとともに巫女様には精霊を視られるようになっていただかねばな」
「はい、神殿長様」
「それと、各国へ通達をしておこう。黒髪黒目の巫女様に危害を加えることのないようにと」
ヘタをすれば、彼女が何をしなくても精霊が勝手に彼女の意をくんで大きな事故に発展しかねない。そのようなことにならないためにも、彼女には精霊を視る目を養ってもらい、周囲の精霊が暴走しないように抑えてもらう必要がある。また、いざというときのために、なるべく力のある精霊と契約してもらう必要もあるだろう。ユリウスとオーリは、目を合わせてうなずきあう。
「それがよろしいかと」
少なくとも、蓮は勝手気ままに力を使って暴れるタイプではなさそうだ。温厚そうな性格は、ユリウスやオーリにとって好ましいといえる。あとはただ、警告を聞いた各国がヘタに手を出さないことを祈るのみである。
ここは神が身近にいる世界。神殿の勢力も大きく、各国に教会もある。神殿の発表を頭から無視するようなことはないだろうが、人間の欲には限りがない。ユリウスもオーリもそのことはよくわかっているため、これからのことを思うと、ついため息が漏れてしまうのだった。
「ああ、初めての方は驚かれますよね」
オーリが蓮の反応をほほえましげに見て、うなずく。驚くというか圧がありすぎるというか。いや、本当になんで城門にゴーレム?
「この2体のゴーレムは、初代教皇様がお作りになったそうです」
めっちゃ笑顔で告げられたが、それ以上なにも言ってくれない。別にだれが造ってもいいけど・・・なんで教皇?ゴーレム作る必要あるの?
まさか、初代教皇が趣味でゴーレム作って城門に配置したのだろうか。まさかね、とそれでも気になってつい聞いたら、さりげなく目をそらされた。・・・まさかの趣味なんだね。しかも作ったゴーレムを城門に配置するなんて、それって絶対他人にみせびらかしたかったんだよね。納得はできないが、理解はした蓮だった。
ちなみに、異世界物にありがちな審査や検問などに時間がかかるのかと思いきや、城門はあっさりと通れた。
彼女には身分を証明するものなど何もないが、オーリが門番に2、3言話すと門番が頭を下げて恐縮しながら馬車を通してくれたのだ。オーリには、彼女が思っている以上の権力や地位があるのかもしれない。
王都の中は、彼女が考えていたよりもずっと活気があった。王都の住民は約20万人程度とのことだったが、広い大通りにはかなりの人出があり、露店も数多くある。ちらっと馬車の中から見ただけだが、売っている商品の種類も豊富に見えた。これはぜひ、食べ歩きをしなくてはならないだろう。
王都は大まかに4つの区画に分かれている。中央に王城と神殿があり、東側には商館や露店などの商売人が住んでいる商業区。武器を取り扱う鍛冶工房なども東側にある。北側には騎士団や衛兵などの詰め所がある防衛区。冒険者ギルドなどもこちら側にあるためか、宿屋なども多くたっている区画らしい。
西側には住民たちが住む住宅区。北と西の境目あたりに歓楽街もある。南側には貴族の館が多く立ち並ぶ貴族区。とはいえ、あくまでも大まかな区切りであり、貴族区以外は普通に行き来ができるし、境目といってもはっきりしたものがあるわけではない。
ちなみに、貴族区には一般市民は入れない。城門は各区画に1つずつ、全部で4つあり、蓮が入ってきたのは商業区にある東門だ。いくら王都とはいえどゴーレムがいるのは東門だけである。まあ、あんなものがすべての門に鎮座していたら、嫌だろう。少なくとも、出入りしづらいには違いない。商業区を縦断する大通りは、馬車が2台すれ違えるほどの広さがあり、多くの人が歩いている。いかにも異世界の都市っぽくて、蓮は興奮しながら馬車から外を眺めていた。
馬車は特に何事もなく大通りを進み、問題なく大神殿に到着した。異世界転生あるあるなトラブルも、何もない。神殿はかなり大きく、白を基調として建てられていて、荘厳な雰囲気があった。芸術的センスに乏しく、家は住めればいい、といった程度の蓮でも、美しいと感じられる建物だ。
「ではレン様、神殿長様にあいさつをされたらお部屋を用意させますのでしばらくお休みになってください」
唐突にいわれて、蓮は首をかしげる。
「まだ日も高いよ」
休むにはかなり早い時間だ。挨拶とはいえ、そこまで長時間に及ぶわけではなく、簡単に滞在の許可を取るだけ。それにしたって、既にオーリの方から話がいっているという。しかし、オーリは優しく微笑んで首を振った。
「まだ日中ではありますが、レン様はお疲れのご様子です」
確かにそうかもしれない。もともと引きこもりのレンは、社会人になってからここまで長く外にいたことがない。そのせいか、異世界にきたせいか、いわれてみれば確かにずいぶん疲れているのだろう。
「あ~、たしかに疲れているかも。じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらおうかな」
蓮の言葉に、オーリは優しくうなずいたのだった。
※※※
「オーリよ、あのものが神託の巫女か」
蓮が去った謁見の間で、神殿長であるユリウスがオーリに問いかける。
「はい、ご本人は自覚しておられないようですが、間違いないかと」
蓮の周囲を漂う精霊も、ありえないくらい多い。しかも、そのほとんどが蓮に好意的であり、周囲から蓮を守るようにしていた。そもそもが、精霊にとって人間など取るに足りない存在だ。稀に精霊に好かれる体質のものが契約を結び、精霊の力を行使する精霊士もいるが、それにしたってせいぜい1~2体だ。あれほど、数えるのも難しいほどの精霊がそばにいる存在など、見たことも聞いたこともない。
精霊に最も愛されたといわれる、200年前に存在した精霊姫といえど、契約した精霊は4体だったと伝えられている。しかし、オーリの直感ではあるがおそらく、蓮は周囲を漂っている精霊全てと契約が可能なのではないだろうか。とはいえ、彼女の意に添わぬことをすれば、国ごと滅ぼされそうである。そのため、神殿側としては出来る限り彼女を自由にさせつつ、その望みを最大限叶えるようにするしかない。彼女は、存在そのものが爆弾なのである。
「ふむ、であればできる限り便宜を図るように。それとともに巫女様には精霊を視られるようになっていただかねばな」
「はい、神殿長様」
「それと、各国へ通達をしておこう。黒髪黒目の巫女様に危害を加えることのないようにと」
ヘタをすれば、彼女が何をしなくても精霊が勝手に彼女の意をくんで大きな事故に発展しかねない。そのようなことにならないためにも、彼女には精霊を視る目を養ってもらい、周囲の精霊が暴走しないように抑えてもらう必要がある。また、いざというときのために、なるべく力のある精霊と契約してもらう必要もあるだろう。ユリウスとオーリは、目を合わせてうなずきあう。
「それがよろしいかと」
少なくとも、蓮は勝手気ままに力を使って暴れるタイプではなさそうだ。温厚そうな性格は、ユリウスやオーリにとって好ましいといえる。あとはただ、警告を聞いた各国がヘタに手を出さないことを祈るのみである。
ここは神が身近にいる世界。神殿の勢力も大きく、各国に教会もある。神殿の発表を頭から無視するようなことはないだろうが、人間の欲には限りがない。ユリウスもオーリもそのことはよくわかっているため、これからのことを思うと、ついため息が漏れてしまうのだった。
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