【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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14歳の助走。

グラドとの会談。

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 昼の鐘が一つ落ちた頃、鍛冶場脇の会議室に移った。分厚い鉄の扉、壁には古い槌と新しい治具が並んでいる。卓を挟んでグラドと僕、脇にローランとストーク。少し離れてカレル、アール、トーマス。リディアは窓辺で頬杖をつき、炉の煙の流れを眺めている。

「議題は二つ……いや三つだな」とグラドが指を三本立てた。「一つ、異種族がここに居つくにはどうすれば良いか。二つ、手仕事と機械仕事の両立。三つ、明日からやれる手当てだ」

「順番に行きましょう」と僕。ローランが書板を起こす。

「まず一つ目」とグラド。「仕事はある。だが、居つくとなると別の壁に当たる。住まい、食い物、作法、子の学び。揉めた時の止めどころ。どれも火の前だけじゃ片付かん」

「入口をはっきり作るのが先です」と僕。「働き口の入口、暮らしの入口、相談の入口。三つを街の地図に刻みましょう」

 僕は卓上に簡単な見取り図を描いた。炉と工房の帯、住まいの区画、市場、小さな広場。

「まず『連携小屋』を境に置く。日番は三人、種を替える。相談、借り物帳、揉め事の一次対応はここ。調停役は二人、任命は君、推薦は各集落。紙は二枚書いて、一枚は記録庫へ」

「うむ、紙は残せ」とグラドが頷く。

「住まいは三つの高さで整える。小人用、標準、火の民用。寝具は火の民が熱を持っても安全な素材で。風呂は種別に温度を分ける日を設けて、混浴の日も一つ置く。食堂は共同にするけれど、禁忌の皿だけは仕切りを立てて『触るな札』を立てる」

「禁忌が混じると喧嘩になるからな」とストーク。

「揉め事は『耳箱』を置いて匿名で吸い上げ、週に一度、調停役と親方と巡回の官吏で回収して分類。すぐ直す、知らせる、時間をもらう……分類ごとに返事を貼り出す。返事のない紙が増えなければ、居つく」

 ここでカレルが控えめに挙手する。「受け入れ基金を作りましょう。志と護持の間の小さな箱です。初期の寝具や靴、道具の貸し出しに使えば、最初の一歩が軽くなります」

「金はわしが最初に入れる」とグラド。「名は要らんが、帳面は残せ」

「教育はどうします?」とアール。

「学房は炉の裏手に小屋を一つ増やす。字と数、道具の名前、危ない場所の印……八日ごとに講習を。講師は持ち回り、異種族を混ぜる。朝の歌と体操は一緒にやる。これは森でやって上手くいった」

 リディアが横目で笑った。「歌は良い。酒と同じで、心を早く溶かす」

「最後に『里親工房』を作る」と僕。「よそから来た者に一つの工房と一家をつける。飯の場所、風呂の時間、道の抜け道……最初の二十六日を一緒に過ごす。書くより早い」

「それだ」とグラドが大きく手を打った。「わしの所に二組引き受ける」

 一区切り。ローランが要点をまとめ、次の紙をめくる。

「二つ目。手仕事と機械仕事の両立」とグラド。「機械は嘘をつかん。だが、手が嘘をつかぬ品もある。どちらの値打ちも落としたくない」

「道を分けて、橋をかけましょう」と僕は答えた。「作り分けは三つ。『匠の間』『規格工房』『試作室』」

「聞こう」

「匠の間は名工の手の場。日々の注文は少なく、高い。ここで作る物には『名札』と『保証書』をつける。名は職人のもの。紙は街のもの。修理は優先、値は上がる。弟子は少数精鋭」

「名を欲しがる若いのが燃える場所だな」

「規格工房は、街を回す場。底印とロット、検査の二重化はそのまま。ここで生まれる精度が、匠の間を支える。等級と賃金は透明に。段位札を作って七段まで。年に二度の試験、委員は混成」

「ふむ……段位は面白い」とグラド。「喧嘩の火種にもなる。だが、火は管理できる」

「試作室は橋。匠と規格が交わる場所。治具を作り、治具を捨てる場でもある。新しい刃文、新しい瓶口、新しい火の当て方……ここで試し、紙に残す。失敗帳は晒す。晒して、笑って、次に行く」

「失敗帳を晒すのは良い」とストーク。「笑うには礼が要る」

「礼はわしが叩き込む」とグラドは笑った。

「もう一つ、手仕事の値札を目に見えるものにします」と僕。「『手の値』と『機械の値』を分けて掲示する。手の値には『誰が』『いつ』『何を工夫したか』の三行を付ける。機械の値には『規格』『検査』『保証』の三行」

 ローランが感心したように眉を上げる。「買い手が迷わない。作り手も誇りを説明できる」

「動線はどうだ」とドワーフの親方が低く問う。「機械の帯、匠の帯、試作の帯……人の行き来は交わるのか」

「交わるが、ぶつけない」と僕。「帯と帯の間に広い『腰掛け場』を置く。そこで品も人も休む。同じ椅子に異種族と異職種が腰掛けることで、橋は太くなる」

 グラドが大きく頷いた。「……よし。紙にして明日から貼ろう」

「まだあります」と僕。「機械導入で余る手を余らせない。再訓練の枠を常に十に。旋盤学校を炉の裏に併設、八日講座で合格すれば段位に換算。移籍は名誉に」

「移籍を名誉に……良い言葉だ」とグラド。「離れるのは逃げではないと示せる」

 ここでカレルが再び手を挙げる。「工傷の手当を共済にしましょう。月々小さく集め、怪我の時は早く出す。規格工房の売り上げの端を少し足す。段位が上がると掛け金が下がる設計に」

「金の話はお前の目に任せる」とグラド。「ただし帳面は大きく書け」

「大きく書きます」とカレルは微笑んだ。

「最後、明日からできる手当て」とグラド。「現場が喜ぶやつを頼む」

「明日から三つ」と僕は指を立てた。「一つ、『里親工房』の募集と初回の顔合わせ。選ぶのは親方と若い衆。飯を一緒に食べるところから始める。二つ、『耳箱』の設置と返事板の場所決め。返事は僕が初回を書きます。三つ、『腰掛け場』の椅子を置く。高さ違いを三種、端に水入れ、真ん中に掲示の板。昼の歌はそこで一節だけ」

 リディアが唇の端を上げる。「歌いながら飯を食えば、喧嘩は減る」

「もう一つ、お祭りの小さな芽も」とアール。「鉄に感謝する日を作りませんか。月に一度、各種族の一皿を出す。名は料理に、作り方は紙に。匂いと言葉が混ざれば、居つきます」

「言ったな、渉外」とグラドが笑う。「お前が初回の司会だ」

 アールの耳が少し赤くなる。ローランは満足げに頷き、書板の下部に短く予定を書いた。ストークは椅子から立ち上がり、扉の外へ出て近くの親方に指示を飛ばす。トーマスは地図を持って歩幅で距離を計り、椅子の置き場を頭で決め始める。カレルは共済の初期資金と箱の木札の発注数を弾いた。全員の動きが、いつものリズムに入っていく。

「覚書は今夜仕上げます」とローラン。「見出しは三つ、紙は二通。明朝、印を」

「印は炉の火で温めて押そう」とグラド。「熱い印は、目にも残る」

 会談は自然に立ち上がりの形になった。席を離れる前、グラドがふと真顔で僕を見る。

「バァン。異種族が居つくのは、うちの得か」
「得だよ」と僕は即答した。「火は息をもらうほど強くなる。違う息が混ざるほど、長く燃える」
「……良い。わしは火を信じる。お前は紙を信じろ。酒はリディアを信じる」
「任せよ」と窓辺からリディアが笑った。「わらわは喧嘩と酒の配分が得意じゃ」

 笑いが落ち着く。扉の向こうから、槌の音がまた一つ、深く響いた。会談の紙は薄い。けれど、火の前で交わした約束は厚い。
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