僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

幼少時代。

お父さん、ドルト、カダスの戦い。

　私は生まれ変わった。魔術師ウィザードであるＱと名乗る女のおかげで。私の折れ曲がった腕は新たなものになり、私の足は早くなるよう『術法』をかけられて強化された。そして私は全身にはびこる痛みを取り払われて来る日も来る日も戦闘訓練に明け暮れた。
　その日、私は戦闘訓練を終え、Ｑに与えられた部屋で束の間の休息をとっていた。そこにＱが現れた。本日が決行日だと言う。私はＱに与えられた装備を身にまといローブを身につける。
そしてやつを始末する為の禍々しい短剣を腰に帯びる。
　今日こそあの邪悪なる者を滅するのだ。あの者を葬れば私の地位も元通りになるとＱは言う。私にはＱの秘密道具が与えられた。まずはあの小・僧・にこれをぶち当てろと言う。
　私は了承し隠れ家から出た。そこで私はＱに与えられた影歩きシャドーウォークの魔術を使い影に潜み、獲物の到着を待った。
　馬車が敵の本拠地に到着し、あの小・僧・が現れる…私は私の最大限のスピードで近づき、アレを投げた。






　それは僕とストラ兄さんが城に行った帰りの事だった。チリチリと首の後ろが反応している。別段悪いところはないし、僕は『健康』を願っているからこんな事は滅多に起こらない。これは何かあるはずだ。

「ストラ兄さん、ミザーリ、気をつけて、何か、変だ」

　ストラ兄さんも何か思い当たるようで馬車の座席を倒して剣を取り出す。
　ミザーリも槍の鞘を抜いた。馬車は改装中のスサン商会に着く。時間的にもう店は閉めてるはずだ。ミザーリ、ストラ兄さん、僕の順で降りる。僕が降りた瞬間、何ものかが駆け寄ってきて、禍々しい色をした弾を投げた。

「ミザーリ！」
「承知！」

　ミザーリは弾を撃ち返す。弾は女に当たる……あの女は前商業ギルド長キシアム・べロードだ。キシアムは苦悶の表情を浮かべている。

「こ、こんなはずでは……」

　と言って倒れた。店から剣を持ったお父さん、ロイック兄さん、ドルトが出て来る。

「リョウを中に！」

　というお父さんの声。ミザーリは僕を抱えて店の中から家に走った。





　キシアム・べロードはしばらく動かなかったが、体を海老反りながら起きて正面を向いた。ローブと下に着ていたであろう革鎧はびりびりに破け、傷だらけの肌が露出している。


『………ごんなにえをよごずなんであのおんなごろじでやる。ぢょうどいい。ごごにいるにんげんもぐらっでやろう』

　キシアムが息を吐くと二つの黒い影が飛び出す。それはまっすぐにハッセルとロイックに向かう。


　カン！ドン！と鈍い音がする。カダスが斧槍ハルバードの斧の部分で攻撃を止めている。
　反対側ではペランスがその拳で攻撃を止めていた。

　
　その黒い影は鎧を着て、両手に武器を持った黒い影の戦士だった。

　影の戦士の一人は赤い鎧を着て黒い剣を両手に持っている。影の戦士はハッセル、ドルト、カダスに襲いかかる。ハッセルが剣をパリィすると反対側の剣でドルトを狙う。ドルトは避けて突きをする。当たったが威力が低くほとんどダメージを与えられないようだ。
　ハッセルがパリィしていた方の腕を勢いよく押し込み、ハッセルが店のドアにまで吹き飛ばされる。そしてその腕でカダスを狙おうとするがカダスはそれを斧槍ハルバードの柄で防いだ。反対側の腕でカダスを狙い、あわやと言うところで影の戦士の腕に大工道具のノミが突き刺さった。柄にはヴェリーの文字が。
　奮起したカダスは影の戦士に連続攻撃を与える。ダメージを与えているはずだが怯む気配がない。カダスはそのまま吹っ飛ばされて店の雨戸をぶち抜き転がった。
　ハッセルが復帰し、ドルトと共闘する。二人は兄弟弟子だ。ハッセルはハノン、ドルトはハノンの家のメイドのアニナを得る為、ナフェル騎士爵の地獄の特訓を受けた。ハッセルはドルトがいたから、ドルトはハッセルがいたから本当に辛い特訓を乗り越えてきた。
　流れるような二人のコンビネーションで攻撃をパリィし、受け流し、反撃に移る。敵もさる者でその攻撃をパリィし、反撃してくる。ハッセルもドルトも必死でその攻撃を避けた。

「助けにきたぞ！」
「もう少し耐えろ！」

　と言う声が聞こえ、その後に

『めんどうなやづらがぎた。ごれでにえをぐうじがんがぜぎをじよう』

　と言う声が聞こえてなにか大量のものが飛び出してきたのがわかった。

「にえばごっぢが」

　と後ろにいたキシアム・べロードが飛び上がるのが見えた。家の方向だ。だが手を離したらやられる。ハッセルは焦りながらも落ち着いて攻撃を捌く。後ろから声が聞こえる。

『土の槍』

　カダスの魔法だ。カダスの魔法は寸分違わず影の戦士の頭を貫いた。戦士はこれはまともに食らったらしく、ひざまずく。ハッセルとドルトがコンビネーションで首と胴を狙い攻撃する。
　がしかし戦士はそれを両手の剣で受け止めながら立ち上がる。

「まだか」
「くそっ」

　また一から戦い直しかと思った瞬間、後ろから斧槍ハルバードが鎧を断ち切りながら胴を薙ぎ払うのが見えた。カダスがいつの間にか後ろに回って渾身の一撃を喰らわせたのだ。
　カダスは全身血だらけだった。

　ハッセルは影の戦士の首を刎ねる。
影の戦士の動きは完全に止まった。

　周りを見渡す。ナフェル率いる領主軍の兵士とテミス司祭率いる神殿の兵士が共闘してゴブリンやオーク、オーガーと戦っている。

　横を見るとロイック、ストラ、ペランス、そしてもう一人の見たことがない女戦士がちょうどもう一人の影の戦士を倒したところだった。

　それを確認するとハッセルはドルトにカダスを任せて家に急ぐ。可愛いハノン、ミシェ、リョウを守らなければならない。