90 / 595
神の修行。
イサリナさんの講義。
しおりを挟む
「今日はよろしくお願い致します」
「よろしくお願いします」
「さて、今回は私の一面である精神についてお話しさせていただきたく思います。さて、リョウ様は精神についてどういうものだとお考えになっていらっしゃいますか?」
「うーん。肉体に対して精神ですか?」
「左様でございます。それが一番精神を表していると言っても過言ではありません。もう一つ意味があるのですがそれは認識、思考、反省を行う心的能力です。反省はごめんなさい、許してくださいというものではなく、それでいいのかと考える事です。さて、この精神を能力と言いましたが精神は鍛えられると思いますか?」
「はい、思います」
「その通りでございます。精神は鍛えられるのです。今後、リョウ様には逆境に対する抵抗力をつけてもらい、その後相手の心理を読み、自分が優位に立てるように立ち回る方法をお教えしたいと思います」
「抵抗力をつけるってどういう訓練になりますか?」
「何十個かのシチュエーションを見て実際に行動して頂きます。最初は恐怖にすくんだり、悲しみに押しつぶされる事となるかと思いますがそれを乗り越える事で抵抗力を上げていって頂きます」
「怖いですけどやってみます」
「まず、お願いしたいことがあります。よろしいでしょうか?」
「はい」
「リョウ様は人の本質は善だとお考えでしょうか?」
「いいえ」
「まずはそう考えて頂きたく思います。自分が善であると、相手からの善意に期待致します。いわゆる『甘え』でございますね。例えば、長い付き合いだからちょっとぐらい良いか、と甘えるのと長い付き合いだから逆に親切さ、謙虚さを忘れないでは大いに違うとお思いになりますよね?」
「はい」
「こうした『甘え』は思考、認識に影響致します。自分に対しても甘くなるのです。まあいいや、となるのでございますね。精神は常に良い意味での緊張感があった方が失敗することが少なくなります。ですから自分と他人の精神は善と考えることをやめて頂きたく思います」
「わかりました」
「さて、お茶に致しましょうか」
「ありがとうございます」
イサリナさんはお茶を用意してくれる。綺麗な所作だ。お茶が美味しい。
「美味しいです」
「はい。ありがとうございます」
「質問があるのですが」
「なんでしょう?」
「精神が強い人とはどんな人ですか?」
「そうですね…まずは逆境に強いというのが一つ。もう一つは人たらしであることでしょうか」
「人たらし…ですか?」
「そうでございます。あまり良い印象はございませんでしょう?」
「そうですね。あんまりないです」
「ですがこれ以外の言葉が見つからないのでございます。相手を洞察力をもって観察し、人の心理を自分の良いようにもっていくという感じなのでございますが、どうしたら相手に喜怒哀楽を与えるのか考えられる人は知性がおありになりますね?」
「はい。そう思います」
「それが私の言う人たらしでございます。
「なるほど」
「例えば私とリョウ様がお話ししていると仮定致します。リョウ様が面白い話をしたとして、私が笑わなかったらどうお思いになりますか」
「面白くなかったとか、怒らせたとかですかね」
「逆に私が笑顔だったらどうでしょうか」
「ウケたなとか…あ、でもつくり笑顔かもしれないとか考えるかなあ」
「私が声を出して笑ったらどう思われますか?」
「本当にウケたな、と思いますね」
「これが人たらしの基本でございます。今私は表情だけでリョウ様の気持ちを動かしました。こういうことを意図的に考えて行える人になって頂きたく思います」
「わかりました」
「リョウ様にはあと秘密を共有できる友人や伴侶、家族が必要になってきます。秘密というのは抱えれば抱えるほど精神的に動けなくなるものです。伴侶はリーリシア様がいますからなんとも言えませんが友人や家族は確実に作って頂きたく思います」
「早めに作ります」
「そうして下さいませ。さて、本日の仕上げとして一つのシチュエーションを攻略していただきたいと思います。今回のテーマは表情で動かす。声を出せません。身体は動きます。表情とジェスチャーで相手を動かしてみてください」
気づくと僕は路上にたっていた。格好は冒険者風の鎧を着ていて剣を腰に差している。
路上を歩いていると群衆がいる。群衆は僕に投石をしている。慌てて避けたが剣を持った男たちが現れて投石と剣でやられ倒れた。
ふと気づくとまた路上を歩いていた。目の前には群衆がいる。これを表情とジェスチャーで動かそうと言うのか!?また倒れるんじゃないかとビクッとするが、怒りの表情を浮かべて剣を抜いてみる…今度は群衆がビビって投石はやめたが、剣を持った男達が何人もやってきてやられて倒れた。
次は悲しいしぐさで行ってみたがやはりダメだった。
もう笑うしかないかと思い笑顔を作って剣を構えて歩いていった。明らかに先程と違い群衆も、男達も近寄り難くしている。その笑顔で男達や群衆を追っかけてみた。われ先にと逃げている。途中からパニックになって逃げ出したのでその場から離れる。
目が覚めた。どうやらイサリナさんに眠らされて夢を見ていたようだ。
「リョウ様、今のでほぼ正解でございます。相手から見るとこちらが余裕があるように見えるので、相手から見ると脅威に見えるのでございます」
「そうですね。そんな風に反応してました。『ほぼ』って事は正解はなんですか?」
「もっと獰猛な感じに笑うんです」
「あー。もっと怖そう」
「そういう人物を演じる事も大事なのでおいおいそういった役割を演じるも勉強致しましょうか」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「さて、今回は私の一面である精神についてお話しさせていただきたく思います。さて、リョウ様は精神についてどういうものだとお考えになっていらっしゃいますか?」
「うーん。肉体に対して精神ですか?」
「左様でございます。それが一番精神を表していると言っても過言ではありません。もう一つ意味があるのですがそれは認識、思考、反省を行う心的能力です。反省はごめんなさい、許してくださいというものではなく、それでいいのかと考える事です。さて、この精神を能力と言いましたが精神は鍛えられると思いますか?」
「はい、思います」
「その通りでございます。精神は鍛えられるのです。今後、リョウ様には逆境に対する抵抗力をつけてもらい、その後相手の心理を読み、自分が優位に立てるように立ち回る方法をお教えしたいと思います」
「抵抗力をつけるってどういう訓練になりますか?」
「何十個かのシチュエーションを見て実際に行動して頂きます。最初は恐怖にすくんだり、悲しみに押しつぶされる事となるかと思いますがそれを乗り越える事で抵抗力を上げていって頂きます」
「怖いですけどやってみます」
「まず、お願いしたいことがあります。よろしいでしょうか?」
「はい」
「リョウ様は人の本質は善だとお考えでしょうか?」
「いいえ」
「まずはそう考えて頂きたく思います。自分が善であると、相手からの善意に期待致します。いわゆる『甘え』でございますね。例えば、長い付き合いだからちょっとぐらい良いか、と甘えるのと長い付き合いだから逆に親切さ、謙虚さを忘れないでは大いに違うとお思いになりますよね?」
「はい」
「こうした『甘え』は思考、認識に影響致します。自分に対しても甘くなるのです。まあいいや、となるのでございますね。精神は常に良い意味での緊張感があった方が失敗することが少なくなります。ですから自分と他人の精神は善と考えることをやめて頂きたく思います」
「わかりました」
「さて、お茶に致しましょうか」
「ありがとうございます」
イサリナさんはお茶を用意してくれる。綺麗な所作だ。お茶が美味しい。
「美味しいです」
「はい。ありがとうございます」
「質問があるのですが」
「なんでしょう?」
「精神が強い人とはどんな人ですか?」
「そうですね…まずは逆境に強いというのが一つ。もう一つは人たらしであることでしょうか」
「人たらし…ですか?」
「そうでございます。あまり良い印象はございませんでしょう?」
「そうですね。あんまりないです」
「ですがこれ以外の言葉が見つからないのでございます。相手を洞察力をもって観察し、人の心理を自分の良いようにもっていくという感じなのでございますが、どうしたら相手に喜怒哀楽を与えるのか考えられる人は知性がおありになりますね?」
「はい。そう思います」
「それが私の言う人たらしでございます。
「なるほど」
「例えば私とリョウ様がお話ししていると仮定致します。リョウ様が面白い話をしたとして、私が笑わなかったらどうお思いになりますか」
「面白くなかったとか、怒らせたとかですかね」
「逆に私が笑顔だったらどうでしょうか」
「ウケたなとか…あ、でもつくり笑顔かもしれないとか考えるかなあ」
「私が声を出して笑ったらどう思われますか?」
「本当にウケたな、と思いますね」
「これが人たらしの基本でございます。今私は表情だけでリョウ様の気持ちを動かしました。こういうことを意図的に考えて行える人になって頂きたく思います」
「わかりました」
「リョウ様にはあと秘密を共有できる友人や伴侶、家族が必要になってきます。秘密というのは抱えれば抱えるほど精神的に動けなくなるものです。伴侶はリーリシア様がいますからなんとも言えませんが友人や家族は確実に作って頂きたく思います」
「早めに作ります」
「そうして下さいませ。さて、本日の仕上げとして一つのシチュエーションを攻略していただきたいと思います。今回のテーマは表情で動かす。声を出せません。身体は動きます。表情とジェスチャーで相手を動かしてみてください」
気づくと僕は路上にたっていた。格好は冒険者風の鎧を着ていて剣を腰に差している。
路上を歩いていると群衆がいる。群衆は僕に投石をしている。慌てて避けたが剣を持った男たちが現れて投石と剣でやられ倒れた。
ふと気づくとまた路上を歩いていた。目の前には群衆がいる。これを表情とジェスチャーで動かそうと言うのか!?また倒れるんじゃないかとビクッとするが、怒りの表情を浮かべて剣を抜いてみる…今度は群衆がビビって投石はやめたが、剣を持った男達が何人もやってきてやられて倒れた。
次は悲しいしぐさで行ってみたがやはりダメだった。
もう笑うしかないかと思い笑顔を作って剣を構えて歩いていった。明らかに先程と違い群衆も、男達も近寄り難くしている。その笑顔で男達や群衆を追っかけてみた。われ先にと逃げている。途中からパニックになって逃げ出したのでその場から離れる。
目が覚めた。どうやらイサリナさんに眠らされて夢を見ていたようだ。
「リョウ様、今のでほぼ正解でございます。相手から見るとこちらが余裕があるように見えるので、相手から見ると脅威に見えるのでございます」
「そうですね。そんな風に反応してました。『ほぼ』って事は正解はなんですか?」
「もっと獰猛な感じに笑うんです」
「あー。もっと怖そう」
「そういう人物を演じる事も大事なのでおいおいそういった役割を演じるも勉強致しましょうか」
「よろしくお願いします」
182
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜
2nd kanta
ファンタジー
愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。
人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。
そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。
しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~
仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる