僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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旅立つ者。

料理番の工房、着工。

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 スサン商会は商会員の仕事は多い。隊商、接客対応、会計、経理、事務、仕入れ、プロジェクト担当、スサンの天使担当、商品管理……などなど以前は本当にこの人数でやっていけたのが奇跡だった。
 それが今変わり始めている。移住組の仕事のモチベーションが高く仕事を覚えようと必死なのだ。それによって各部署に余裕が出来始め、停滞していたプロジェクトが動き始めた。
 まずは『スサンの天使』開店法、いわゆるフランチャイズ方式であるが六店舗増やす事になった。王都、公爵領二領、侯爵領三領である。その為の料理人受け入れや土地収用、宣伝方法の打ち合わせが書類上では進みあとは現地での打ち合わせと契約のみとなる場所が出てきた。
 次に『スサン商会』開店法、のれん分けであるが王都支店開店ののちに三店舗目をエフェルト公爵領で開店予定となった。
 スサンの天使開店とスサン商会開店の為、ロイック兄さんは近々旅立つと言っている。予定では2ヶ月間かかるらしい。ついでにお見合いもしてくるそうだ。ストラ兄さんも長期休みに王都とパトロンである公爵、侯爵の所を周る為、兄弟が離れ離れになる期間ができそうだ。
 みんなが帰ってきた頃にミシェ姉さんの婚礼がある。僕はそれまでに作りたい料理があるので、それに目指して頑張っていきたいと思う。
 

 そんな中僕の工房アトリエが着工になった。ヴェリー達が土地を均し基礎を作っている。前にここには建物があったのだが、かなりの速さで解体された。ヴェリーになんで?と聞いたらかなりの金額の酒代を振る舞われたので地精ドワーフを集めて人海戦術で解体しちゃったらしい。ほんと酒が絡むと地精ドワーフはすごい。
 地精ドワーフ達は歌を歌いながら土地をハンマーで叩いている。古くから歌われている槌打ち歌だそうだ。道行く人々はその勇壮な歌を聴き、その一糸乱れぬ動作に魅入られていた。
 それが終わると大地の神であるグンヴォルさんに酒を捧げ祈りを捧げる。そしてまた歌を歌う。これも古くから歌われている地鎮の歌だ。地精ドワーフ達はそれに合わせて舞をする。神聖な気持ちも相まって一挙手一投足が美しい。まるで相撲の型を見ているようだ。夕闇が近づいている。地鎮の歌が街中に響いた。

 それが終わったら酒盛りだ。いつもの酒盛りとは違うと言う。

「いつも、酒呑む。何が違う?」
「これもグンヴォル様を讃える儀式なのさ」
「そうそう。グンヴォル様に安全を誓うんだ」
「誓った同士で酒を酌み交わしお互いの無事を祈り合う。そんな酒盛りだ」

 地精ドワーフ達は色々と教えてくれた。

「天使様よ、美味しい酒は用意してくれたかい?」
「とびきりの、酒を、用意したよ。まずはワイン、で乾杯して」
「ワインだとー?そんな水みたいなもんは呑めんぞ」
「あれ、地精ドワーフなのに、新しい、ワイン、知らないの?」
「お、おい。まさか、それは」
「最近、作り始めたっていうあれか?」
「その、まさかだよ」
「うおー。みんな、喜べ。この施主さんは最高の施主さんだ!」
「ワインで何言ってんだか」
「じゃあお前は呑むな。お前の分は俺が呑む」
「そこまで言うなら呑むけどな」
「ジェン、このワインを、みんなに」
「……はい」
「一人一杯ずつか?」
「仕事を、ちゃんと、やってくれたら、また差し入れ、するよ」
「とりあえず配るぞ。おい水竜人ドラコニアンのねーちゃん。あとはオイラに任せな」
「おい、まだ呑むなよ」
「そんじゃあリョウエストさん、よろしく」
「はい。ヴェリーさん。工事の、成功と、皆さんの、安全を、祈願して、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」

 みんなが至福の表情で味わっている。

「「「「うぉーー!!!」」」」

 いきなり雄叫びをあげる地精ドワーフ達。周りの人、ごめんね。

「うめーっ」
「誰だこのワイン水みたいって言ったやつは」
「お前だろ」
「最高だぜこれ」
「酒精結構あるぜこれ」
「早く作られないかな。毎日呑みたい」
「みんなー、次はこれ」

 収納からエールの大樽一つを取り出す。

「お、おい。これ結構お高いやつだぞ」
「一杯どころか大樽一つって」
「おい。夢じゃないだろな」
「ヴェリー。こんな素敵な現場に誘ってくれてありがとよ」
「損はさせないって言ったろ」
「天使様よ、お前の心意気が気に入った。精一杯やるぜ。一杯飲んでな」
「下手な洒落だな。天使様、ホントあんたは地精ドワーフ心がわかってるねえ」

 ふっふっふ。まだ僕のターンは終わっていないよ。

「みんなー。まだだよ。最高の酒には、最高のつまみだろ?」
「そうだそうだ!」
「待ってました!」
「あんたはすげえ」
「お願いーー」

 僕が叫ぶと商会員かぞくが次々と籠を持って入ってくる。中身はスサンオウトールとスサンチキン一杯だ!

「なんだこの薄っぺらいの……うめーっ」
「酒飲みかよ、あんた。最高のつまみじゃねえか」
「鶏肉うめえなこれ」
「かーっ酒が進むぜ」
「おい。ホントいい現場だぜここは」
「ああ。酒と仕事と気持ちいい施主。最高だな」

 ふっふっふ。まだ僕のターンだ。

「みんなー。このお酒、気に入ったー?」
「おう。気に入った」
「最高だぜ」
「今日は楽しい酒が呑めるぜ」
「あんた最高だぜ」
「さすがリョウエストさんだ」

 さあ、恐れおののけ。

「なんとー。毎日ー。中樽一本、あげるー」
「「「「うぉーー」」」」
「なんだ…と」
「夢か、これ」
「良く聞こえなかった、中樽一本て聞こえたのは幻聴か」
「いや、俺も聞いたぜ」
「まじか。うひょー」
「普通は小樽一個をちびちびやるだけなのに」
「こんな美味い酒を毎日呑ませてくれるなら、俺らもその心意気に応えないとならんな」
「そうだな」
「その通りだ」
「本当に地精ドワーフ心がわかる施主さんで良かったよ」









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