【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ

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8歳の旅回り。

エフェルト公爵領への旅。

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「リョウ様、荷はすでに積み終わっております。いつでも出発可能でございます」

 朝靄の中、執事ストークの声が響いた。

「ふむ、六泊七日か……長いようで短いな」

 お父さんが馬車の前でぼそりとつぶやく。スサン商会の第二支店がエフェルト公爵領に完成し、視察と式典のための旅が始まろうとしていた。

「お父さん、ほんとに僕も行っていいの?」
「当然だ。お前の目で見て感じることに意味がある。エフェルト公爵はお前の友人でもあるしな」

 僕はにこっと笑ってうなずいた。旅の同行者は、お父さんと僕、ストーク、ミザーリ、イゼルさん、青の技ブルーアーツの六人、火の民サラマンダーの護衛二人、水竜人ドラコニアンの護衛、獣人ビーストマンの御者だった。

 馬車はゆっくりとルステインの門を出て、しばらく走るといつもの街道とは違う方向に入る。広がるのはうねる森と、時折姿を見せる農村。僕は、イゼルの隣に座り、窓から景色を見ていた。

「坊ちゃま、旅というのは、目的地よりも道中にこそ学びがございますよ」
「イゼルさんは、昔は旅たくさんしてたの?」
「…はい。サウロン商会にいたころは、ほとんどの地方を回っておりました。ええ、私が一人で…」

 その口調にどこか悔しさがにじむ。

「でも、今はロイックさんのお側で働けて幸せでございます」
「良かった」
「坊ちゃま、差し出がましいようですが…公爵領の牛肉料理は絶品でございます。特に『熾火焼き』と申しますか、じわじわと焼く技法がまた…」
「イゼル、お腹空く話やめて!」

 馬車の中に笑いが広がる。僕は、お父さんの真剣な横顔をちらりと見た。きっとこの旅は、楽しいだけじゃ済まない。

 そして、その予感は的中することになる――

 四日目の昼下がり、馬車の車輪が急に軋んだ。前を走っていたアインスが手を上げて停止の合図を出す。

「……おかしいでやすね。地面が掘り返されていやす」

 アインスが指さした先には、わずかに不自然な盛り上がり。罠だ。

「配置につけ」

 アインスの命令で、青の技ブルーアーツの護衛たちが一斉に展開する。火の民サラマンダーが馬車の周囲を守り、水竜人ドラコニアンは荷車の防御を固める。

「坊ちゃま、こちらにお下がりくださいませ。くれぐれも身を乗り出されぬように」

 イゼルがすっと僕の前に立った。

「敵影、左前方三十歩。六人…もっと奥にもいるな」

 目を細めたミザーリが矢をつがえるやいなや、林の中から黒装束の盗賊が飛び出してきた。
 イゼルさんが一歩前に出て、呪文を唱える。

「退けぬ者には容赦なく。『風の刃』。裂け」

 ぱしゅん、と空気が裂けるような音。イゼルの手から放たれた不可視の刃が、後衛の敵を一撃で吹き飛ばした。

「ひ、ひぃいいっ!」

 残った盗賊たちは、あっけなく逃げ出していった。

「イゼル、今の、風の魔法?」
「はい、私の唯一の特技です」

 そう言って丁寧にお辞儀をするイゼル。その姿は、どこか誇らしげだった。

「…まあ、君があれほど動けるとはな」

 お父さんが珍しく目を丸くしている。

「お父さん、イゼルって、すごい…」
「いえ、大してすごくありません」

 少し照れくさそうに笑うイゼル。

 そして、翌日立ち寄った村――

「なんだ、あんたら……人間以外も混ざってるのか……」
 
 村人の目は冷たく、火の民と水竜人をじろじろと睨む。

「ここでは水も貸せねぇな」
「…なるほど。これが、偏見というやつか」

 お父さんが低くつぶやいた。僕も思わず、火の民サラマンダーの護衛の肩に手を置く。

「ねぇ、別に誰かに迷惑かけてるわけじゃないのに、なんであんな風に…」
「そういう場所もございます、坊ちゃま。でも、だからこそルステインが変えてきたのです」

 イゼルが、膝をついて僕の目を見つめた。

「我らが見てきた世界を、どうか忘れないでいてください」
「…うん。忘れない」

 そんな村での休憩を終えた後、ようやく、エフェルト公爵領の門が見えてきた。

「ようこそ!」

 出迎えてくれたのは、ロイック兄さんだった。

「リョウ、よく来てくれたな」
「うん、いろいろ大変だったけど、来てよかった」

 ロイック兄さんに出迎えられた僕たちは、エフェルト公爵領の街並みを抜けて、商会第二支店の建物へと向かった。

「この街…空気が違う気がする」
「ええ、坊ちゃま。エフェルト公爵領は、貴族による開発と庶民の生活の調和が見事に取れております。…領主殿が、ルステインを深く敬愛しておられると聞いております」

 イゼルの言葉通り、街にはさまざまな種族が行き交い、露店では風精エルフが布を売り、地精ドワーフが工具を修理していた。ヒトヒューマンの子供が火の民サラマンダーの少女と一緒に木製のけん玉で遊んでいる光景を見て、僕は思わず目を細めた。

「なんか……ルステインみたい」
「ふふ、坊ちゃまにそう言っていただければ、公爵様も本望かと存じます」

支店の前には、すでに多くの人々が集まり、旗が風になびいていた。

「リョウエスト君」

 笑みを浮かべて立っていたのは、エフェルト公爵その人だった。僕よりずっと年上だけど、いつも気さくに話してくれる、ちょっと変わった歳の離れた友達。

「いやぁ、無事に来てくれて嬉しいよ。ロイックエン君がしきりに心配していたからね」
「途中で盗賊に襲われたり、ちょっと差別のある村にも行ったけど…なんとかなったよ」
「それは…心苦しい限りだが、君たちの旅が無駄じゃなかったことは確かだ」

 公爵様は真剣な顔になり、僕の肩に手を置いた。

「この街も、ルステインのように種族の垣根を越えて栄えさせたい。君たちがそれを証明してくれている。だからこそ、スサン商会の力を借りたいのだ」
「うん」

 開店式では、公爵様が直々にテープカットをしてくれた。集まった人々から歓声が上がり、祝福の音楽が広場に響いた。
 
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