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第十一話
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「ほう」
再び老人の顔に戻った魔神は、値踏みするように黒天狐を眺める。突然、凶悪な風の刃が黒天狐に襲いかかった。地面は引き裂かれて土煙をあげ、森の枝が切り飛ばされ突然の嵐に翻弄される。
百の猛獣が襲いかかったような暴風に晒されたにもかかわらず、黒天狐は平然と佇んでいた。詩人が霊感を受け思索にふけっているかのように、静けさを纏っている。
「なるほどの」
蛙の頭に変わった魔神は、少し感心したように呟く。
「その狐のマントには、魔法無効化の力があるようだ。しかしな」
獣の頭となった魔神は、牙を剥き出しにした獰猛な笑みを浮かべ長剣を振り上げる。
「この剣は、飾りではないぞ」
立ち尽くす黒天狐めがけて、豪風を纏った凶悪な剣が鋼の雷となり襲いかかる。だが、黒天狐は静かにそれをみつめるばかりであった。
夜に赤い花が咲くように、魔神の血が飛沫をあげる。斬り落とされたのは魔神の腕であり、剣を手にしたままの腕が夜に横たわった。
「ふむ」
老人の顔となった魔神は、残った腕であたりを探りつつひとり呟く。
「糸だな。魔操糸術、ではないか。そなたに、魔力はない」
老人は、そっと目を細める。
「なるほど、気功というのか。夏の王国にいた仙術師が、使っておったぞ」
魔神は、黒天狐のこころを読むようだ。黒天狐は、口の中で咽喉マイクに届くように呟く。
「ヒース、APHE弾をくらわしてやれ」
ヒースの応えが骨伝導イヤホンに届く。
「おれの加護では、嫌がらせにしかならんぞ」
ふっと黒天狐は、笑う。
「十分だ。五秒、気をそらせればいい」
蛙の口から、魔神は不快気な声をだす。
「そなたのこころは、ノイズが多い。思考を、隠したね。だが、無意味だ。余の身体は、硬気功を纏った程度の糸では裂けんぞ」
魔神は八本の足を蠢かし、黒天狐に迫ろうとする。そのとき、夜を切り裂く轟音が響き蛙の頭が破砕された。
深紅の花が月明かりの下大きく咲き誇るかのように、血が魔神の身体の上で撒き散らされ紅蓮の炎がサラマンダの舌なめずりをみせる。魔神の動きは、一瞬とまった。
黒天狐は、少しため息をつく。
「できればこの技は、使いたくなかったが」
八尾が黒い翼となって夜に翻り、黒天狐の身体は月明かりを浴びながら夜空に浮き上がる。硬気功で強化された糸が、黒天狐の身体を宙に浮かび上がらせていた。
黒天狐は、左手を空に向かって伸ばす。月明かりを浴び、冬の星が宿す冷めた輝きを纏った短剣が黒天狐の左腕から出現する。微かな反りを持つ短剣は、死をもたらす武器に似つかわしくない繊細な美しさを持っていた。
黒天狐は魔神に向かって短剣をかざしながら、叫ぶ。
「吠えろ、鳴狐」
再び老人の顔に戻った魔神は、値踏みするように黒天狐を眺める。突然、凶悪な風の刃が黒天狐に襲いかかった。地面は引き裂かれて土煙をあげ、森の枝が切り飛ばされ突然の嵐に翻弄される。
百の猛獣が襲いかかったような暴風に晒されたにもかかわらず、黒天狐は平然と佇んでいた。詩人が霊感を受け思索にふけっているかのように、静けさを纏っている。
「なるほどの」
蛙の頭に変わった魔神は、少し感心したように呟く。
「その狐のマントには、魔法無効化の力があるようだ。しかしな」
獣の頭となった魔神は、牙を剥き出しにした獰猛な笑みを浮かべ長剣を振り上げる。
「この剣は、飾りではないぞ」
立ち尽くす黒天狐めがけて、豪風を纏った凶悪な剣が鋼の雷となり襲いかかる。だが、黒天狐は静かにそれをみつめるばかりであった。
夜に赤い花が咲くように、魔神の血が飛沫をあげる。斬り落とされたのは魔神の腕であり、剣を手にしたままの腕が夜に横たわった。
「ふむ」
老人の顔となった魔神は、残った腕であたりを探りつつひとり呟く。
「糸だな。魔操糸術、ではないか。そなたに、魔力はない」
老人は、そっと目を細める。
「なるほど、気功というのか。夏の王国にいた仙術師が、使っておったぞ」
魔神は、黒天狐のこころを読むようだ。黒天狐は、口の中で咽喉マイクに届くように呟く。
「ヒース、APHE弾をくらわしてやれ」
ヒースの応えが骨伝導イヤホンに届く。
「おれの加護では、嫌がらせにしかならんぞ」
ふっと黒天狐は、笑う。
「十分だ。五秒、気をそらせればいい」
蛙の口から、魔神は不快気な声をだす。
「そなたのこころは、ノイズが多い。思考を、隠したね。だが、無意味だ。余の身体は、硬気功を纏った程度の糸では裂けんぞ」
魔神は八本の足を蠢かし、黒天狐に迫ろうとする。そのとき、夜を切り裂く轟音が響き蛙の頭が破砕された。
深紅の花が月明かりの下大きく咲き誇るかのように、血が魔神の身体の上で撒き散らされ紅蓮の炎がサラマンダの舌なめずりをみせる。魔神の動きは、一瞬とまった。
黒天狐は、少しため息をつく。
「できればこの技は、使いたくなかったが」
八尾が黒い翼となって夜に翻り、黒天狐の身体は月明かりを浴びながら夜空に浮き上がる。硬気功で強化された糸が、黒天狐の身体を宙に浮かび上がらせていた。
黒天狐は、左手を空に向かって伸ばす。月明かりを浴び、冬の星が宿す冷めた輝きを纏った短剣が黒天狐の左腕から出現する。微かな反りを持つ短剣は、死をもたらす武器に似つかわしくない繊細な美しさを持っていた。
黒天狐は魔神に向かって短剣をかざしながら、叫ぶ。
「吠えろ、鳴狐」
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